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第20話 ギルバートの苦悩
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【ギルバートside】
父は言った。人は生まれながらに平等ではないと。
当然のことだ。
レーヴァン家の名を背負う以上、雑魚相手に負けることは許されない。
将来的には無知蒙昧で無力な愚民どもを正しく支配してやることが貴族として生まれたこの俺の使命であり、それを成すためには圧倒的な力が必要だからだ。
――従って、準決勝でこんなふざけた相手に負けるわけにはいかない。
「氷槍っ」
「雷光斬ッ!」
レスター・ホロウズの放った氷魔法を、雷を纏わせた斬撃で真っ二つに両断する。
「とどめだッ!」
そのまま一気に距離を詰め、ヤツに一撃を入れようとしたその時。
「ひゃっ!」
「――――――ッ!」
レスターのふざけた悲鳴を聞かされて精神を乱された俺は、持っていた木剣を派手に空振りした。
「ふざけた声を出すなッ! 気が散るんだよッ!」
俺は一度ヤツから距離を取り、次の攻撃を警戒しながら叫ぶ。
「そんなこと言われても……」
「貴様のどこが男なんだッ!」
「ひ、ひどい……」
何故、それが風習だからという理由だけで女の格好をすることを受け入れる? そもそも風習って何だ?! まるで意味が分からない!
(ねえねえ、レスターちゃんのことカワイイと思わない?)
動揺する俺の心に、先ほどアランが言ってきた言葉が突き刺さる。
まさかあいつ……知っていたのか? 分かったうえで俺を侮辱する為にあんな質問を?
「ふ、ふざけているのか貴様はああああっ!」
俺は叫んだ。
「確かに……ボクはふざけていたのかもしれません。大会に出る時にもう逃げないって決めたはずなのに、戦う前から絶対に勝てないって諦めて……」
「あ?」
コイツは一体何を言っている?
「でも、やるって決めた以上は絶対に勝つつもりでやらないとダメだって……さっきアランくんが教えてくれたんです」
「は?」
「――だから、勝ち目がどうとかは考えません! ボ、ボクはギルバートさんに勝ちますっ!」
なにか良いことを言っているような気もするが、今はそんな話をしているのではない!
「雪嵐っ!」
「ぐわあああああああああああッ!」
動揺していたところに強力な氷魔法を撃ち込まれ、吹き飛ばされる俺。
「ぐっ、がはぁッ!」
指先の熱を奪われ、木剣すらまともに握っていられなくなる。
「凍結ッ!」
そこへ更に氷魔法を打ち込んでくるレスター。
闘技場の地面が凍りついていき、俺の周囲に巨大な氷塊が生み出される。
「くッ…………!」
どうやら、身動きを封じられてしまったようだ。このまま冷気で俺の体力を奪って勝つつもりなのだろう。
「はぁ、はぁ……」
だが向こうも大技を連発したせいで魔力と体力をかなり消耗している。
おまけに俺だって何度かヤツに攻撃を食らわせているので、もう立っているだけでもやっとのはずだ。
「んっ……」
だからやめろ。変な声を出すな。
「ボクが……勝ちます……っ!」
レスターはうわごとのようにそう呟くと、ふらふらとした足取りでこちらへ近づいてきた。
「ふざけ……るなぁっ……!」
この俺が、こんなヤツに負けるのか!? ありえない! あってはならない!
俺は氷塊から抜け出そうと必死にもがくが、かえって手足が凍り付いていく。
「くそっ! くそがあああああっ!」
――その時、レスターの指先が俺の心臓の辺りに触れた。
「氷……」
「や、やめろ……ッ!」
寒さのせいか、全身が凍り付いていくような感覚がする。
「ラン……ス……」
だが、とどめの魔法が放たれることはなかった。最後の最後でヤツの魔力が切れたのだ。
「う……うぅ……っ」
うめき声を上げながらよろめき、俺に覆いかぶさって来るようにして倒れ込むレスター。
「んん……っ……」
「はぁ……? ど、どけよ……っ!」
何故かいい匂いがして、おまけに耳元で妙な声を聞かされたせいで、先程までの寒さが吹き飛ぶ。
「お、おいっ! 俺の勝ちだぞ……っ! だからどけっ!」
「だ……めぇ……っ」
レスターはそう言ってギュッとしがみ付いて来た。
「おいっ! 俺にそんな趣味はないぞっ!」
少し骨ばっているが、何故か柔らかい。魔術ばかりにかまけて体を鍛えていないのだろう。とことんまで軟弱な奴め……!
「はぁ、はぁ……」
「吐息を耳に吹きかけるなっ!」
ドロシアといい、コイツといい、ホロウズ家の奴らは何なんだ?! この大会を侮辱しているのか?! おかしなことばかりしやがって!
「こうさん……してください……っ!」
「変な意味に聞こえるだろっ!」
「へぇ……?」
もう駄目だ。頭がクラクラしてきた。
俺が……こんなヤツに……っ!
薄れゆく意識の中、「両者引き分け!」という誰かの声が聞こえてきた。
父は言った。人は生まれながらに平等ではないと。
当然のことだ。
レーヴァン家の名を背負う以上、雑魚相手に負けることは許されない。
将来的には無知蒙昧で無力な愚民どもを正しく支配してやることが貴族として生まれたこの俺の使命であり、それを成すためには圧倒的な力が必要だからだ。
――従って、準決勝でこんなふざけた相手に負けるわけにはいかない。
「氷槍っ」
「雷光斬ッ!」
レスター・ホロウズの放った氷魔法を、雷を纏わせた斬撃で真っ二つに両断する。
「とどめだッ!」
そのまま一気に距離を詰め、ヤツに一撃を入れようとしたその時。
「ひゃっ!」
「――――――ッ!」
レスターのふざけた悲鳴を聞かされて精神を乱された俺は、持っていた木剣を派手に空振りした。
「ふざけた声を出すなッ! 気が散るんだよッ!」
俺は一度ヤツから距離を取り、次の攻撃を警戒しながら叫ぶ。
「そんなこと言われても……」
「貴様のどこが男なんだッ!」
「ひ、ひどい……」
何故、それが風習だからという理由だけで女の格好をすることを受け入れる? そもそも風習って何だ?! まるで意味が分からない!
(ねえねえ、レスターちゃんのことカワイイと思わない?)
動揺する俺の心に、先ほどアランが言ってきた言葉が突き刺さる。
まさかあいつ……知っていたのか? 分かったうえで俺を侮辱する為にあんな質問を?
「ふ、ふざけているのか貴様はああああっ!」
俺は叫んだ。
「確かに……ボクはふざけていたのかもしれません。大会に出る時にもう逃げないって決めたはずなのに、戦う前から絶対に勝てないって諦めて……」
「あ?」
コイツは一体何を言っている?
「でも、やるって決めた以上は絶対に勝つつもりでやらないとダメだって……さっきアランくんが教えてくれたんです」
「は?」
「――だから、勝ち目がどうとかは考えません! ボ、ボクはギルバートさんに勝ちますっ!」
なにか良いことを言っているような気もするが、今はそんな話をしているのではない!
「雪嵐っ!」
「ぐわあああああああああああッ!」
動揺していたところに強力な氷魔法を撃ち込まれ、吹き飛ばされる俺。
「ぐっ、がはぁッ!」
指先の熱を奪われ、木剣すらまともに握っていられなくなる。
「凍結ッ!」
そこへ更に氷魔法を打ち込んでくるレスター。
闘技場の地面が凍りついていき、俺の周囲に巨大な氷塊が生み出される。
「くッ…………!」
どうやら、身動きを封じられてしまったようだ。このまま冷気で俺の体力を奪って勝つつもりなのだろう。
「はぁ、はぁ……」
だが向こうも大技を連発したせいで魔力と体力をかなり消耗している。
おまけに俺だって何度かヤツに攻撃を食らわせているので、もう立っているだけでもやっとのはずだ。
「んっ……」
だからやめろ。変な声を出すな。
「ボクが……勝ちます……っ!」
レスターはうわごとのようにそう呟くと、ふらふらとした足取りでこちらへ近づいてきた。
「ふざけ……るなぁっ……!」
この俺が、こんなヤツに負けるのか!? ありえない! あってはならない!
俺は氷塊から抜け出そうと必死にもがくが、かえって手足が凍り付いていく。
「くそっ! くそがあああああっ!」
――その時、レスターの指先が俺の心臓の辺りに触れた。
「氷……」
「や、やめろ……ッ!」
寒さのせいか、全身が凍り付いていくような感覚がする。
「ラン……ス……」
だが、とどめの魔法が放たれることはなかった。最後の最後でヤツの魔力が切れたのだ。
「う……うぅ……っ」
うめき声を上げながらよろめき、俺に覆いかぶさって来るようにして倒れ込むレスター。
「んん……っ……」
「はぁ……? ど、どけよ……っ!」
何故かいい匂いがして、おまけに耳元で妙な声を聞かされたせいで、先程までの寒さが吹き飛ぶ。
「お、おいっ! 俺の勝ちだぞ……っ! だからどけっ!」
「だ……めぇ……っ」
レスターはそう言ってギュッとしがみ付いて来た。
「おいっ! 俺にそんな趣味はないぞっ!」
少し骨ばっているが、何故か柔らかい。魔術ばかりにかまけて体を鍛えていないのだろう。とことんまで軟弱な奴め……!
「はぁ、はぁ……」
「吐息を耳に吹きかけるなっ!」
ドロシアといい、コイツといい、ホロウズ家の奴らは何なんだ?! この大会を侮辱しているのか?! おかしなことばかりしやがって!
「こうさん……してください……っ!」
「変な意味に聞こえるだろっ!」
「へぇ……?」
もう駄目だ。頭がクラクラしてきた。
俺が……こんなヤツに……っ!
薄れゆく意識の中、「両者引き分け!」という誰かの声が聞こえてきた。
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