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第25話 婚約確定
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【ドロシアside】
「アラン! 次はどこに行きましょうかっ?!」
「……頬っぺたにクリーム付いてるよ」
「へ……?!」
次の瞬間、私は乱暴に壁際へ追い込まれる。
「きゃっ!」
「ドロシア……」
ここは私たち以外は誰もいない路地裏。お祭りの喧騒から離れた場所。
「僕が舐めてあげる」
「ば、ばかぁっ! 何言ってるのよ……っ!」
私は必死に身をよじってアランから逃げ出そうとするが、強い力で押さえ込まれてどうすることも出来ない。
そうこうしている間にアランの思わず息をのんでしまうくらい綺麗な顔が近づいてきて、舌先が私の頬を優しくなでた。
「んっ……!」
そのまま流れるように唇を奪われ、私はなす術なくアランに翻弄されていく。
「……ここも……舐めてあげる」
「い、いやぁ……っ、そこは……だめぇっ……!」
欲張りなアランは私の初めてのキスを奪っただけでは満足出来ないらしく、そのまま更に舌先をあんなところやこんなところへ――「ドロシアー? もう朝だよーっ?」
「…………ふへぇっ!?」
精霊祭二日目、私はレスターの呼ぶ声で目を覚ました。どうやら夢を見ていたらしい。
すごく恥ずかしい夢だった気がするけど、よく思い出せない。汗をかいていたみたいで身体がベタついている。
「あんまり寝てるとお父さまに怒られちゃうよー? 部屋、入るねー!」
「ちょ、ちょっと?!」
それからすぐにガチャリと扉が開き、いつものようにおめかししてドレスを履いたレスターが入ってきた。
こっちは寝巻きのままなのに……!
「もー、まだ髪もとかしてなかったの?」
「私より女の子っぽいこと言わないで」
というか、本人も完全に受け入れてしまっているけど、やはりホロウズ家の風習は少し変なのではないだろうか。女の子の格好をして大会に出てる男の子なんて、他に一人もいなかったんだけど……。
……って、今はそんな話をしている場合じゃない。
「だいたい、勝手に部屋に入って来ないでよっ!」
「ごめんなさい」
「……別に良いけどっ!」
こういう時、素直に謝られると調子が狂う。
「でも本当にそろそろ起きないとまずいよ? 朝ご飯食べてないのドロシアだけだもん」
「うそっ! もうそんな時間!?」
「うん。あと、昨日のことで話があるらしいし」
「…………っ! き、きのうっ!?」
唐突にそんなことを言われて、私はどきりとする。アランとのことはまだ誰にも話していないはずだ。昨日は一人でお祭りを見てまわったことになっている。
「えっと……なんかよく分からないけど『とんでもない相手を射止めたな! 式場とドレスの手配はパパに任せておけ!』って言ってた。……何したの?」
完全にバレてた。昨日はやけにパパもママもニヤニヤしてると思ったら……っ!
「バカッ!」
「えぇ……? ……あと、お母さまから『どこまで済ませたのかこっそり聞き出してちょうだいね、レスター』ってお願いされてるんだけど……」
「キライっ!」
「えっと、どうしてそんなに怒ってるの? ボク、何の話かまだよく分かってなくて……」
「あなたには早いわレスターっ! 戻ってママのミルクでも飲んでなさいっ!」
「同い年なのに……ひどい……」
レスターは目を潤ませながら後ずさる。
「ふ、ふんっ! 私の方が経験豊富なオトナなの! だから……レスターが同じくらいになるまでは話せないわっ!」
「ふーん……って、あれ? 机の上のこの本、なに?」
「人の話を聞きなさいよっ! ……って、それはッ?!」
「えーっと……『私の奪われた初めて』……?」
「いやああああああああああああああああああああああああッ!」
私は魔法で部屋を爆破した。
*
【アランside】
精霊祭二日目の早朝。自室にて。
「おにいさまああああああっ!」
「ど、どうしたのプリシラ……?」
俺はいつも通り元気なプリシラに纏わりつかれていた。
「良かったねぇっ! うっ、うぅぅっ!」
「………………?」
おまけに、今度は泣き始める。
いきなり部屋へ突撃して来たと思ったらこれだ。もしかして俺、また何かやっちゃったのか?
「よく分からないよ。どうしてそんなに泣いてるの?」
「だって、だってお兄さま……結婚するんだよねっ!」
「え…………?」
「女の子と一緒だったからびっくりしたよ! あの子、準決勝でお兄さまと試合した子でしょ?! 美人さんだねえ! どっちから告白したの?!」
いつの間にか泣き止み、今度は質問責めしてくるプリシラ。
どうやらドロシアと一緒に居たところを見られていたらしい。
「あと、ねこみみ、二人とも可愛かったね!」
「ごふッ!?」
不意の一撃を食らった俺は、精神に大きなダメージを受ける。
「い、いや、あれは…………!」
冷静になった後で指摘されるとすごく恥ずかしい。まさか、妹に猫耳をつけてニャンニャンしているところを見られていただなんて……! 兄としての尊厳が!
「今日もあの子と一緒にお祭りまわるの?」
「えっと……どうしよっかな」
「まわってあげないとかわいそうだよ!」
今日はいつもよりさらに押しが強いな。どうやら、ドロシアは随分とプリシラに気に入られているらしい。
破壊神同士、何か通じるものがあるのかもしれない。
「猫耳もちゃんとつけていかないとね! はいこれ!」
「も、もうそれはやめて……!」
引き出しの奥にしまい込んでいたはずの猫耳を手渡され、いよいよ恥ずかしさで爆発してしまいそうになる。
……いや、爆発するのは俺じゃなくてドロシアだが。
「…………ホロウズ家とは話をつけてある。……ケーキ作りは俺に任せろ」
「お、お父さまっ?!」
いつの間にか部屋の扉の前に立っていたお父さまが、腕を組みながらとんでもないことを言い始めた。
「話ってなんですか?!」
「将来、お前があの子と挙げる結婚式の話だ」
「僕は何も聞いてませんよ?!」
「愛情はちゃんと言葉にして伝えるんだ……伝えられるうちにな……」
「お父さまが言うと重いです! というか、まだそんな段階じゃないと思います! 十歳の子供同士ですよ?!」
「精霊祭の式典に出た以上、もう立派な大人だ。……向こうからの婚約の申し込みを受けた以上、それ相応の責任が伴う」
「うっ……!」
なんかそれっぽいこと言われた……! 前世の倫理観じゃ絶対おかしいのに……!
「……あの子を幸せにしてやれ」
この状況で婚約破棄を宣言しようものなら、破滅が確定することになるのは火を見るよりも明らかである。
「………………はい」
軽い気持ちで告白して来た女の子をたぶらかした結果、とんでもないことになりました。
これがクズに対する報いか……!
――この時は呑気にそんなことを思っていたのだが、本当の地獄はここからだった。
「アラン! 次はどこに行きましょうかっ?!」
「……頬っぺたにクリーム付いてるよ」
「へ……?!」
次の瞬間、私は乱暴に壁際へ追い込まれる。
「きゃっ!」
「ドロシア……」
ここは私たち以外は誰もいない路地裏。お祭りの喧騒から離れた場所。
「僕が舐めてあげる」
「ば、ばかぁっ! 何言ってるのよ……っ!」
私は必死に身をよじってアランから逃げ出そうとするが、強い力で押さえ込まれてどうすることも出来ない。
そうこうしている間にアランの思わず息をのんでしまうくらい綺麗な顔が近づいてきて、舌先が私の頬を優しくなでた。
「んっ……!」
そのまま流れるように唇を奪われ、私はなす術なくアランに翻弄されていく。
「……ここも……舐めてあげる」
「い、いやぁ……っ、そこは……だめぇっ……!」
欲張りなアランは私の初めてのキスを奪っただけでは満足出来ないらしく、そのまま更に舌先をあんなところやこんなところへ――「ドロシアー? もう朝だよーっ?」
「…………ふへぇっ!?」
精霊祭二日目、私はレスターの呼ぶ声で目を覚ました。どうやら夢を見ていたらしい。
すごく恥ずかしい夢だった気がするけど、よく思い出せない。汗をかいていたみたいで身体がベタついている。
「あんまり寝てるとお父さまに怒られちゃうよー? 部屋、入るねー!」
「ちょ、ちょっと?!」
それからすぐにガチャリと扉が開き、いつものようにおめかししてドレスを履いたレスターが入ってきた。
こっちは寝巻きのままなのに……!
「もー、まだ髪もとかしてなかったの?」
「私より女の子っぽいこと言わないで」
というか、本人も完全に受け入れてしまっているけど、やはりホロウズ家の風習は少し変なのではないだろうか。女の子の格好をして大会に出てる男の子なんて、他に一人もいなかったんだけど……。
……って、今はそんな話をしている場合じゃない。
「だいたい、勝手に部屋に入って来ないでよっ!」
「ごめんなさい」
「……別に良いけどっ!」
こういう時、素直に謝られると調子が狂う。
「でも本当にそろそろ起きないとまずいよ? 朝ご飯食べてないのドロシアだけだもん」
「うそっ! もうそんな時間!?」
「うん。あと、昨日のことで話があるらしいし」
「…………っ! き、きのうっ!?」
唐突にそんなことを言われて、私はどきりとする。アランとのことはまだ誰にも話していないはずだ。昨日は一人でお祭りを見てまわったことになっている。
「えっと……なんかよく分からないけど『とんでもない相手を射止めたな! 式場とドレスの手配はパパに任せておけ!』って言ってた。……何したの?」
完全にバレてた。昨日はやけにパパもママもニヤニヤしてると思ったら……っ!
「バカッ!」
「えぇ……? ……あと、お母さまから『どこまで済ませたのかこっそり聞き出してちょうだいね、レスター』ってお願いされてるんだけど……」
「キライっ!」
「えっと、どうしてそんなに怒ってるの? ボク、何の話かまだよく分かってなくて……」
「あなたには早いわレスターっ! 戻ってママのミルクでも飲んでなさいっ!」
「同い年なのに……ひどい……」
レスターは目を潤ませながら後ずさる。
「ふ、ふんっ! 私の方が経験豊富なオトナなの! だから……レスターが同じくらいになるまでは話せないわっ!」
「ふーん……って、あれ? 机の上のこの本、なに?」
「人の話を聞きなさいよっ! ……って、それはッ?!」
「えーっと……『私の奪われた初めて』……?」
「いやああああああああああああああああああああああああッ!」
私は魔法で部屋を爆破した。
*
【アランside】
精霊祭二日目の早朝。自室にて。
「おにいさまああああああっ!」
「ど、どうしたのプリシラ……?」
俺はいつも通り元気なプリシラに纏わりつかれていた。
「良かったねぇっ! うっ、うぅぅっ!」
「………………?」
おまけに、今度は泣き始める。
いきなり部屋へ突撃して来たと思ったらこれだ。もしかして俺、また何かやっちゃったのか?
「よく分からないよ。どうしてそんなに泣いてるの?」
「だって、だってお兄さま……結婚するんだよねっ!」
「え…………?」
「女の子と一緒だったからびっくりしたよ! あの子、準決勝でお兄さまと試合した子でしょ?! 美人さんだねえ! どっちから告白したの?!」
いつの間にか泣き止み、今度は質問責めしてくるプリシラ。
どうやらドロシアと一緒に居たところを見られていたらしい。
「あと、ねこみみ、二人とも可愛かったね!」
「ごふッ!?」
不意の一撃を食らった俺は、精神に大きなダメージを受ける。
「い、いや、あれは…………!」
冷静になった後で指摘されるとすごく恥ずかしい。まさか、妹に猫耳をつけてニャンニャンしているところを見られていただなんて……! 兄としての尊厳が!
「今日もあの子と一緒にお祭りまわるの?」
「えっと……どうしよっかな」
「まわってあげないとかわいそうだよ!」
今日はいつもよりさらに押しが強いな。どうやら、ドロシアは随分とプリシラに気に入られているらしい。
破壊神同士、何か通じるものがあるのかもしれない。
「猫耳もちゃんとつけていかないとね! はいこれ!」
「も、もうそれはやめて……!」
引き出しの奥にしまい込んでいたはずの猫耳を手渡され、いよいよ恥ずかしさで爆発してしまいそうになる。
……いや、爆発するのは俺じゃなくてドロシアだが。
「…………ホロウズ家とは話をつけてある。……ケーキ作りは俺に任せろ」
「お、お父さまっ?!」
いつの間にか部屋の扉の前に立っていたお父さまが、腕を組みながらとんでもないことを言い始めた。
「話ってなんですか?!」
「将来、お前があの子と挙げる結婚式の話だ」
「僕は何も聞いてませんよ?!」
「愛情はちゃんと言葉にして伝えるんだ……伝えられるうちにな……」
「お父さまが言うと重いです! というか、まだそんな段階じゃないと思います! 十歳の子供同士ですよ?!」
「精霊祭の式典に出た以上、もう立派な大人だ。……向こうからの婚約の申し込みを受けた以上、それ相応の責任が伴う」
「うっ……!」
なんかそれっぽいこと言われた……! 前世の倫理観じゃ絶対おかしいのに……!
「……あの子を幸せにしてやれ」
この状況で婚約破棄を宣言しようものなら、破滅が確定することになるのは火を見るよりも明らかである。
「………………はい」
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