転生したら主人公を裏切ってパーティを離脱する味方ヅラ悪役貴族だった~破滅回避のために強くなりすぎた結果、シナリオが完全崩壊しました~

おさない

文字の大きさ
40 / 43

第40話 深夜の攻防

しおりを挟む
【???side】

 皆が寝静まった深夜、ホロウズ邸の付近の森に身を隠す者がいた。

一人ひとり……」

 それは掠れた男の声で呟く。

二人ふたり……」

 闇に紛れる黒いローブからのぞく、病的なまでに白い肌。その顔はひどく痩せこけていて、常に目の焦点が合っていなかった。

三人みたり……」

 細身でありながらも背丈はかなり高く、ふらふらとしながら森の中に佇む姿はまるで亡霊のようである。

四人よたり……」

 彼に与えられている名はルナティック。

 魔石に適合する生贄の候補であるレスター・ホロウズとドロシア・ホロウズを手に入れるため、影の教団から遣わされた刺客だ。

「おかしい……あの子らを視ているのは私だけのはずなのだが……先客がいるようだな……?」

 ルナティックが首をかしげながら呟いた瞬間、彼の首筋を目掛けて一本の短剣が飛んでくる。

「おっと……」

 しかしルナティックは顔を一切動かすことなく指先だけで短剣を受け止めた。

「貴様……何者だッ!」

 ――それからすぐ、彼の背後の茂みから複数人の夜盗が姿を現す。

「これはこれは……奇遇ですね。ちょうど、私も同じことをアナタ方に伺おうとしていたところでした」

 ルナティックはゆっくりと背後へ振り返り、夜盗たちではなく虚空を見つめながら問いかける。

「こんな夜更けにコソコソと……一体何をしているのです?」

 対する夜盗たちは互いに目配せをし、一斉に得物を構えてルナティックへと襲い掛かった。

「死ねぇッ!」
 
 刹那、一番最初に短剣で斬りかかった夜盗の首がじ切れる。

一人ひとり……」
「ひっ!? うぐっ、がああああっ……!」

 続いて、首がとんだ仲間の返り血を間近で浴びた夜盗が苦しみ始め、口から血の塊を吐き出して息絶えた。

二人ふたり……」
「な、なにを……ッ?!」

 残された二人の夜盗は、状況が呑み込めず後ずさる。

三人みたり……」
「がッ、ごぼォッ!」

 三人目は胸の辺りに大きな穴が空き、血を吐き出して死んだ。

「ひっ、ひいいいいいいいいっ?! 来るなッ! 来るなあああッ!」

 立て続けに仲間の死を目撃し、錯乱して腰を抜かす最後の一人。

四人よたり……」

 彼がそう呟いた瞬間、生き残りの夜盗は全身がバラバラに千切れて絶命し、辺りは一面血の海と化した。

「つまらない悲鳴だ……」

 ルナティックは悲しそうに言うと、フラフラとした足取りでホロウズ邸へ歩いていくのだった。

 *

 しばらくして、ホロウズ邸の客室の窓がゆっくりと開き、外の風が吹き込んでくる。

「うーん……おにい……さま……?」

 その部屋で眠っていたのはプリシラだった。

「きのせい……?」

 彼女は一度起き上がって寝ぼけた目で窓の方を見つめた後、再び眠りについてしまう。

 そしてすやすやと寝息を立て始めるのだった。

 それから程なくして、部屋の隅に立っていた黒い影がゆっくりと動き始め、プリシラの眠るベッドに近づいていく。

「美しい声だ……!」

 その影はプリシラの顔を覗き込みながら呟いた。

 ローブの袖から骨張った両手を突き出し、震える指先をプリシラの首元へと近づけていく。

「ああ、この子の悲鳴を聞いてみたい……顔を歪めて泣き叫び、もがき苦しむ姿が見たい……!」

 死人のようだったその顔に不気味な笑みを浮かべ、今まさにいたいけな少女を絞め殺さんとするルナティック。

 ――しかしその時、突如として部屋の扉が開いた。

「…………!」
「うふふ、プリシラはちゃんと眠れているでしょうか?」

 小さな声で呟きながら中へと入って来たのは、聖女サリアである。

 サリアはそっとプリシラの眠るベッドに歩み寄り、穏やかな寝息に耳を澄ませてこう言った。

「小さな胸にいっぱい空気を吸い込んでいて、とても可愛らしいですね……! あなたに吸われる空気がとても羨ましいです」

 その言葉をはっきりと聞いてしまったルナティックが感じたのは、得体の知れない気味悪さである。

(いきなり部屋に入ってきて何を言っているんだこの女……?!)

 ――この女にだけは見つかってはならない。

 暗い部屋の隅に身を潜めながら、彼は直感でそう思った。

「さてと……」

 サリアは笑顔で一通りプリシラの寝顔を眺め回した後、満足したようにベッドから離れる。

「場所を変えましょうか。ここではプリシラが起きてしまいます。……あなただって、屋敷の中で騒ぎを大きくしたくはないでしょう?」

 入り口の扉の前に立った彼女が言ったのは、明確にルナティックへと向けた言葉だった。

「アランがずっと何かを気にしているみたいだったのでおかしいとは思っていたのですが……あなたの気配を感じ取っていたのですね。身の毛もよだつくらいおぞましい邪気に満ち溢れています」

 ゆっくりと振り返りながら、ルナティックの隠れている部屋の隅のただ一点を見つめるサリア。

「……なるほど、これはこれは失礼いたしました。やはり、の目を欺くのは難しい」
「違います。一緒にしないでください」
「おや、違うのですか?」
「違います」

 不審者同士の血で血を洗う闘いが始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います

リヒト
ファンタジー
 不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?   「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」  ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。    何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。  生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。  果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!? 「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」  そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?    自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!

処理中です...