42 / 43
第42話 運命の日
しおりを挟む
気が付いたら朝になっていた。
「あ、あれ……?」
昨日は寝ずの番をするつもりだったのに、ぐっすりと眠ってしまっていたようだ。なんたる不覚。
確か、廊下でサリア先生と遭遇して「夜更かしをしてはいけませんよ」と言われたところまでは覚えているのだが……その後の記憶がまったく無い。
会話をした後すぐに眠ってしまって、サリア先生が部屋まで運んでくれたのだろうか? だとしたら物凄く恥ずかしいぞ……!
「うーん……でも、そんなに眠くなかったはずなんだけどなあ……」
俺が首をかしげていると、部屋の扉がノックされる。
「あ、アランくん……起きてますか……?」
どうやら、レスターが訪ねて来たらしい。……どうやら、昨晩は何事もなかったようだな。ひとまず安心だ。
「入っていいよ!」
俺がそう返事をすると部屋の扉がゆっくりと開き、純白のドレスに身を包んだ儚げな美少女――もとい美少年(?)のレスターが中へ入ってきた。
恐ろしいことに、お淑やかなお姉さんのような主張しすぎない感じのいい匂いがする。サリア先生にも負けていない。
今のレスターを初見で男の子だと見抜ける者は存在しないだろう。ギルバートが見たら、取り返しのつかないところまで性癖を破壊されてしまうかもしれないな。
「……いつにも増して可愛いね、レスターちゃん」
「もうっ! からかうのはやめてください……っ!」
顔を赤らめながら怒るレスター。
普通、こういうやり取りは許嫁のドロシアとするべきだと思うんだけどな。おかしいな。
「でも……こういう格好をするのも今日でお終いです! ボクはやっと……アランくんみたいな格好をして過ごせるようになるんです!」
「えっ……?」
そんなあ。
「そういえば……魔除けのために女の子の格好をするのは十二歳までだったね」
「はい! これからは、ボクも一人前の男です!」
「……おめでとう」
レスターが男の子だと知って、様子がおかしくなる人間を見られなくなるのかと思うと残念だ。
しかし、よく考えたらレスターはどんな格好をしていようと普通に女の子に見えてしまうのではないだろうか。
「これからは、もう女の子だと思われることもありません!」
「う、うん……ソウダネー!」
本人の指摘したらショックを受けてしまいそうなので、気付かなかったことにしよう。
「明日から、かっこいい黒のマントを羽織って過ごそうと思います! 通り名は『凍てつく漆黒の魔導士』です!」
「それはやめておいた方がいいかもー」
「えぇっ?!」
そんなことをしたら、今とは別の恥ずかしさを味わうことになるぞ。後からじわじわと効いてくるタイプのやつ。
人はそれを黒歴史と呼ぶ。……この話はもうやめにしよう。
「……ところでレスター。昨晩は何事もなかった? 僕、いつの間にか寝ちゃってたみたいなんだけど……」
俺はひとまず話題を変えるため、少し強引ではあるがそう聞いてみる。
「実を言うとボクもそうなんです。いつでも侵入者と戦えるように、夜通し起きてるつもりだったんですが……廊下でサリア先生と偶然すれ違って少し話した後、気が付いたらベッドに寝ていて……」
レスター、お前もか。
「そっか……。でも何事もなくて良かったよ」
しかし、二人揃ってここまであっさりと眠ってしまうなんて……催眠系の魔法でも使われたのか?
――もしかすると、既に何者かの攻撃は始まっているのかもしれないな。
「問題は今日……ですよね」
レスターが真剣な表情で言ったので、俺は無言で頷いた。
「た、大変よっ! 起きなさいアランッ!」
その時、部屋の扉が勢いよく開かれて中へドロシアが飛び込んでくる。
「……って、もう起きてるじゃない! レスターもいるし!」
真っ赤なドレスに身を包んだドロシアは、俺達の方を見て言った。
「おはようドロシアちゃん。一体何があったの?」
「サリア先生が怪しいヤツを捕まえたらしいのっ!」
「え……?!」
その言葉に驚愕する俺とレスター。
何ということだ。やはり、昨晩の時点で刺客は送り込まれていたらしい。
「だけど、サリア先生もかなり魔力を消耗してるみたいで……と、とにかく来なさいっ!」
「――わかった、すぐ行くよ」
かくして、俺たちはドロシアの案内でサリア先生の元へ駆けつけるのだった。
「あ、あれ……?」
昨日は寝ずの番をするつもりだったのに、ぐっすりと眠ってしまっていたようだ。なんたる不覚。
確か、廊下でサリア先生と遭遇して「夜更かしをしてはいけませんよ」と言われたところまでは覚えているのだが……その後の記憶がまったく無い。
会話をした後すぐに眠ってしまって、サリア先生が部屋まで運んでくれたのだろうか? だとしたら物凄く恥ずかしいぞ……!
「うーん……でも、そんなに眠くなかったはずなんだけどなあ……」
俺が首をかしげていると、部屋の扉がノックされる。
「あ、アランくん……起きてますか……?」
どうやら、レスターが訪ねて来たらしい。……どうやら、昨晩は何事もなかったようだな。ひとまず安心だ。
「入っていいよ!」
俺がそう返事をすると部屋の扉がゆっくりと開き、純白のドレスに身を包んだ儚げな美少女――もとい美少年(?)のレスターが中へ入ってきた。
恐ろしいことに、お淑やかなお姉さんのような主張しすぎない感じのいい匂いがする。サリア先生にも負けていない。
今のレスターを初見で男の子だと見抜ける者は存在しないだろう。ギルバートが見たら、取り返しのつかないところまで性癖を破壊されてしまうかもしれないな。
「……いつにも増して可愛いね、レスターちゃん」
「もうっ! からかうのはやめてください……っ!」
顔を赤らめながら怒るレスター。
普通、こういうやり取りは許嫁のドロシアとするべきだと思うんだけどな。おかしいな。
「でも……こういう格好をするのも今日でお終いです! ボクはやっと……アランくんみたいな格好をして過ごせるようになるんです!」
「えっ……?」
そんなあ。
「そういえば……魔除けのために女の子の格好をするのは十二歳までだったね」
「はい! これからは、ボクも一人前の男です!」
「……おめでとう」
レスターが男の子だと知って、様子がおかしくなる人間を見られなくなるのかと思うと残念だ。
しかし、よく考えたらレスターはどんな格好をしていようと普通に女の子に見えてしまうのではないだろうか。
「これからは、もう女の子だと思われることもありません!」
「う、うん……ソウダネー!」
本人の指摘したらショックを受けてしまいそうなので、気付かなかったことにしよう。
「明日から、かっこいい黒のマントを羽織って過ごそうと思います! 通り名は『凍てつく漆黒の魔導士』です!」
「それはやめておいた方がいいかもー」
「えぇっ?!」
そんなことをしたら、今とは別の恥ずかしさを味わうことになるぞ。後からじわじわと効いてくるタイプのやつ。
人はそれを黒歴史と呼ぶ。……この話はもうやめにしよう。
「……ところでレスター。昨晩は何事もなかった? 僕、いつの間にか寝ちゃってたみたいなんだけど……」
俺はひとまず話題を変えるため、少し強引ではあるがそう聞いてみる。
「実を言うとボクもそうなんです。いつでも侵入者と戦えるように、夜通し起きてるつもりだったんですが……廊下でサリア先生と偶然すれ違って少し話した後、気が付いたらベッドに寝ていて……」
レスター、お前もか。
「そっか……。でも何事もなくて良かったよ」
しかし、二人揃ってここまであっさりと眠ってしまうなんて……催眠系の魔法でも使われたのか?
――もしかすると、既に何者かの攻撃は始まっているのかもしれないな。
「問題は今日……ですよね」
レスターが真剣な表情で言ったので、俺は無言で頷いた。
「た、大変よっ! 起きなさいアランッ!」
その時、部屋の扉が勢いよく開かれて中へドロシアが飛び込んでくる。
「……って、もう起きてるじゃない! レスターもいるし!」
真っ赤なドレスに身を包んだドロシアは、俺達の方を見て言った。
「おはようドロシアちゃん。一体何があったの?」
「サリア先生が怪しいヤツを捕まえたらしいのっ!」
「え……?!」
その言葉に驚愕する俺とレスター。
何ということだ。やはり、昨晩の時点で刺客は送り込まれていたらしい。
「だけど、サリア先生もかなり魔力を消耗してるみたいで……と、とにかく来なさいっ!」
「――わかった、すぐ行くよ」
かくして、俺たちはドロシアの案内でサリア先生の元へ駆けつけるのだった。
54
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる