47 / 117
第41話 かわいそうなマルス
しおりを挟む「それでは始めましょう! まずは、マルスと花丸が向かい合ってください!」
ルーテは、二人に立ち位置を指示する。
「おう。分かった」
「なあルーテ……町に居る時以外は明丸で良いのだぞ……?」
「花丸ちゃんはじっとしていてください!」
問答無用で向かい合わされるマルスと明丸。
「向かい合ったけど……これでいいのか?」
「……お願いだマルス。その、今の私を……あまりじっと見ないでくれ…………」
その時、明丸が頬を赤く染めながら、伏し目がちに懇願した。
「へ? あ、ごめんっ!」
その完璧な美少女の仕草に、マルスの胸は高鳴る。もはや、明丸のことをまともに直視出来なくなっていた。
「……お次はゾラです! マルスの右肩に右手を置いてください!」
「こう?」
「うひゃっ?!」
突然背後から肩を掴まれ、驚いて悲鳴を上げるマルス。
「何かこのポーズ、間抜けな感じだね!」
「これも花丸の為です。我慢してください」
「いや、ボクは全然平気だけどさー」
ゾラは言いながら、悪戯っぽい笑みを浮かべてマルスの顔を覗き込んだ。
「おやおや、マルス君。随分と顔が赤いみたいだけど……どうしちゃったのかなぁ?」
「う、うるさい……っ!」
「花丸ちゃん可愛いねぇ……? 美少女だと思うよねぇ……? マルス君にはちょっと刺激が強すぎるんじゃないかなぁ……?」
「お、お前も顔を近づけるなっ! 少し離れてくれっ!」
「え? ボク?」
予想と違う反応だったので首を傾げるゾラ。
「話は後です! マルスは花丸の両肩をしっかり押さえて、魔力を送り込む準備をして下さい」
「くっ……! 分かった、これも明丸を元に戻す為だ……!」
「僕とゾラは後ろからサポートします!」
ルーテは簡単に説明しながら、マルスの左肩に左手を添える。
「気張っていきましょうね!」
そう言って、空いている右手でゾラの左手を掴むルーテ。
「わっ?! な、なにっ?!」
「僕は魔力制御を習得していないので、ゾラの力を貸してください」
「……う、うん、いいよ。……いきなり掴まれたから……ちょっとびっくりしたけど……」
「ごめんなさい!」
マルスを中心に、微妙な関係が展開される。
「……なあ。……これ、俺が真ん中じゃないとだめ?」
「はい! マルスは(主人公補正によって)この中で一番魔力が高いので、陣形はこれ以外考えられません!」
「そっかー……じゃあ仕方ないよなー……」
――マルスは苦悩していた。
正面には美少年だった美少女の明丸。右隣には美少年のような美少女のゾラ。左隣には美少女のような美少年のルーテ。
彼の平和で健全だった心を乱す不届き者達が一堂に会し、あろうことか彼を包囲しているからである。
「それでは始めます。マルス! 花丸に全力で魔力を送って下さい!」
しかし、ルーテは特に気にせず作戦開始の合図をした。
「う、うおおおおおおおっ!」
マルスは自棄になり、何も考えずに魔力を送り始める。
「うぐっ……!? な、なんだ……? 身体が……熱いぞ……?」
いきなり魔力を注ぎ込まれた反応で体温が上昇し、耐えきれずに浴衣の胸元をはだけさせる明丸。
「うわあああああああっ?!」
その様を間近で見せられたマルスは、顔を真っ赤にして悲鳴を上げた。
(花丸ちゃんが明丸に戻りつつあることで呪いの効果が弱まっています! やはり僕の考えは間違っていませんでした!)
一方彼の苦悩など知る由も無いルーテは、自分の仮説が正しいことを確信し、歓喜する。
「あともうひと押しです! ゾラ! もっと魔力を送りましょう!」
「で、でも……もう限界だよぉ……っ!」
「僕から全部吸い取って良いので頑張ってくださいっ! ファイト!」
「……はああああああああぁぁぁぁっ!」
ゾラは最後の力を振り絞り、マルスへ一気に魔力を送り込んだ。
「はぁ……はぁ……ボク、これ以上は……我慢できないよ……っ!」
「ぼ、僕も……そろそろ限界みたいです……っ!」
「……私も、もうだめだ……おかしくなってしまうっ!」
全てを出し切った二人と、無理やり注ぎ込まれた一人は、力尽きてマルスに体重を預ける。
マルスの耳元ではルーテとゾラの息遣いが聞こえ、目の前には胸元がはだけた明丸の姿があった。
いたいけな少年に耐えきれる状況ではない。
「うわあああああああっ!」
――――刹那、感情の昂りによって暴走した魔力が爆発し、四人は方々へ吹き飛ばされた。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜
犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。
これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる