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第41話 かわいそうなマルス
しおりを挟む「それでは始めましょう! まずは、マルスと花丸が向かい合ってください!」
ルーテは、二人に立ち位置を指示する。
「おう。分かった」
「なあルーテ……町に居る時以外は明丸で良いのだぞ……?」
「花丸ちゃんはじっとしていてください!」
問答無用で向かい合わされるマルスと明丸。
「向かい合ったけど……これでいいのか?」
「……お願いだマルス。その、今の私を……あまりじっと見ないでくれ…………」
その時、明丸が頬を赤く染めながら、伏し目がちに懇願した。
「へ? あ、ごめんっ!」
その完璧な美少女の仕草に、マルスの胸は高鳴る。もはや、明丸のことをまともに直視出来なくなっていた。
「……お次はゾラです! マルスの右肩に右手を置いてください!」
「こう?」
「うひゃっ?!」
突然背後から肩を掴まれ、驚いて悲鳴を上げるマルス。
「何かこのポーズ、間抜けな感じだね!」
「これも花丸の為です。我慢してください」
「いや、ボクは全然平気だけどさー」
ゾラは言いながら、悪戯っぽい笑みを浮かべてマルスの顔を覗き込んだ。
「おやおや、マルス君。随分と顔が赤いみたいだけど……どうしちゃったのかなぁ?」
「う、うるさい……っ!」
「花丸ちゃん可愛いねぇ……? 美少女だと思うよねぇ……? マルス君にはちょっと刺激が強すぎるんじゃないかなぁ……?」
「お、お前も顔を近づけるなっ! 少し離れてくれっ!」
「え? ボク?」
予想と違う反応だったので首を傾げるゾラ。
「話は後です! マルスは花丸の両肩をしっかり押さえて、魔力を送り込む準備をして下さい」
「くっ……! 分かった、これも明丸を元に戻す為だ……!」
「僕とゾラは後ろからサポートします!」
ルーテは簡単に説明しながら、マルスの左肩に左手を添える。
「気張っていきましょうね!」
そう言って、空いている右手でゾラの左手を掴むルーテ。
「わっ?! な、なにっ?!」
「僕は魔力制御を習得していないので、ゾラの力を貸してください」
「……う、うん、いいよ。……いきなり掴まれたから……ちょっとびっくりしたけど……」
「ごめんなさい!」
マルスを中心に、微妙な関係が展開される。
「……なあ。……これ、俺が真ん中じゃないとだめ?」
「はい! マルスは(主人公補正によって)この中で一番魔力が高いので、陣形はこれ以外考えられません!」
「そっかー……じゃあ仕方ないよなー……」
――マルスは苦悩していた。
正面には美少年だった美少女の明丸。右隣には美少年のような美少女のゾラ。左隣には美少女のような美少年のルーテ。
彼の平和で健全だった心を乱す不届き者達が一堂に会し、あろうことか彼を包囲しているからである。
「それでは始めます。マルス! 花丸に全力で魔力を送って下さい!」
しかし、ルーテは特に気にせず作戦開始の合図をした。
「う、うおおおおおおおっ!」
マルスは自棄になり、何も考えずに魔力を送り始める。
「うぐっ……!? な、なんだ……? 身体が……熱いぞ……?」
いきなり魔力を注ぎ込まれた反応で体温が上昇し、耐えきれずに浴衣の胸元をはだけさせる明丸。
「うわあああああああっ?!」
その様を間近で見せられたマルスは、顔を真っ赤にして悲鳴を上げた。
(花丸ちゃんが明丸に戻りつつあることで呪いの効果が弱まっています! やはり僕の考えは間違っていませんでした!)
一方彼の苦悩など知る由も無いルーテは、自分の仮説が正しいことを確信し、歓喜する。
「あともうひと押しです! ゾラ! もっと魔力を送りましょう!」
「で、でも……もう限界だよぉ……っ!」
「僕から全部吸い取って良いので頑張ってくださいっ! ファイト!」
「……はああああああああぁぁぁぁっ!」
ゾラは最後の力を振り絞り、マルスへ一気に魔力を送り込んだ。
「はぁ……はぁ……ボク、これ以上は……我慢できないよ……っ!」
「ぼ、僕も……そろそろ限界みたいです……っ!」
「……私も、もうだめだ……おかしくなってしまうっ!」
全てを出し切った二人と、無理やり注ぎ込まれた一人は、力尽きてマルスに体重を預ける。
マルスの耳元ではルーテとゾラの息遣いが聞こえ、目の前には胸元がはだけた明丸の姿があった。
いたいけな少年に耐えきれる状況ではない。
「うわあああああああっ!」
――――刹那、感情の昂りによって暴走した魔力が爆発し、四人は方々へ吹き飛ばされた。
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