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第3話:葵の過去と秘密のお話

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<前回までのあらすじ>
主人公白石圭太は、美人保険医赤崎沙由美が顧問の「服飾文化研究会」に強引に入れられて、
女装コスプレ姿で沙由美と部員である生徒会長、一条葵にオモチャにされコスプレHにふけるのであった・・・
しかしその翌朝、葵の姿を見かけて声をかけるも、その態度は冷たく・・・(あらすじここまで。)

圭太は昼休みの保健室相談に来ていた。
「んで、昨日はお楽しみだった?」
「うぐっ・・・!」
のっけからニヤニヤしながら言う沙由美。
「あーんなことやこーんなことしちゃったわけだ~?くぅ~うらやまけしからん!このこのぉ!」
「やめて下さいよ・・・」・・・事実なので言い返せない圭太。
恥ずかしそうに下を向くも、話題を変えようとする。
「大体この前は途中からどこへ行ってたんです?!準備室からもいつの間にかいなくなってたし・・・」
「ああ、あれね。ちょっと職員室で用事があってさぁ。ごめんねぇ~☆」
(絶対嘘だ・・・)と思いつつも、それ以上追及しても無駄だとわかっているので
もう何も言わないことにして、本題を切り出す。
「あの・・・葵さんの事なんですけど・・・」と圭太はあの朝の出来事を話し始める
「えっとですね・・・実は・・・―――」
圭太の話を聞き終えると、沙由美は腕組みして考え込んだ。
そして少ししてから口を開いた。
「葵ちゃんねぇ・・・あの子の家族かなり事情が厄介なのよね。」
「ええ?良家のお嬢様って聞いてますけど。」
確か父親は有名な資産家だとかなんとか聞いたような気がする。
それに葵自身も成績優秀で容姿端麗ときているのだから、
そんな家庭環境ならむしろ自慢したくなるものだと思うのだが・・・。
しかし沙由美の顔を見るとどうも違うようだ。
「うーん・・・話すべきかしらね。しかもどこから説明したらいいのかわからないし・・・
それでも聞きたい?」
「はい・・・お願いします。」
沙由美はしばらく黙り込んでいたがやがて意を決すると話し始めた。

***
資産家の令嬢として生まれた彼女は。孤独であった。
なぜなら親の期待は跡取りである兄にすべて向けられていたからである。

幼い頃から英才教育を受けさせられ、 学校では優秀な成績を収め、
常にトップクラスの成績をキープしていた兄。それが当たり前であり、将来も約束されている。
そんな兄を尊敬し、自分もそうなろうと、彼女は頑張った。
だが、家族は彼女に期待などしていなかった。彼女の求めるものはすべて兄のものだったのだ。
彼女がいくら努力しようと、結果を出そうと褒められたことなどなかった。
彼女にとって家族とはいつも自分の上にいる存在。自分を見下ろしている存在。
自分は必要のない人間。いてもいなくても同じ。そんな風に感じていた。
そんな彼女に課せられた「使命」は、家に恥じぬ優秀な教養を身に着け、
良妻賢母として他家に嫁ぐことだった。しかしそこに彼女に意思は存在しない。
それは自分が好きな人と結婚するという自由すら与えられないということだった。

そして優秀であることは当たり前。学校で優秀な役職に就くのも当たり前。
それこそが彼女の存在意義。それ以外の生き方を許されていない。
見た目だってそうだ。世のふしだらな女のような派手な服装や髪型は禁止。
ずっと地味に、目立たないものを強要された。
そんな窮屈な人生を送ることに嫌気を感じ始めていたある日のこと・・・

***

「・・・で私が声かけちゃったわけ。
思えばそれが彼女が最初にした親への反抗だったのかもね。」
「・・・・・・」
圭太はその話を聞いて言葉が出てこなかった。
まさか葵さんにこんな過去があったなんて。
でもなんとなく想像できたかもしれない。
確かに葵さんの言動には、どこかそういうところがあるような気がしていたからだ。
「私としては葵ちゃんにはもっとオシャレしてキレイになってほしかったのよね。
だって、入学したての頃とか、ずっと苦虫を嚙み潰したような顔してたし」
「・・・」
「でもまだ親御さんの監視も厳しいし、
部室の中でしかあんな風にふるまえないけどね」
「・・・」
そう言って笑う沙由美だったが圭太は笑えなかった。
が、それと同時にある疑問がわいた。

「そんなご家庭なら、当然異性とのお付き合いも・・・
その、なかったわけですよね?」
「まあね~。親に知られれば大変なことになるだろうし。
でもそれがどうかした?」
「いえ、その割にはこの前すんなりと入・・・!!」
ここまで言いかけて圭太はハッとして口を押える。
「え?何?何かあったの?詳しく聞かせなさいよ!」
沙由美が目を輝かせながら詰め寄ってくる。
しまった。
思わず口走ってしまった。
圭太は後悔したがもう遅い。
観念して話すことにした。
「・・・えっとですね、その・・・葵さんと・・・したときにデスネ・・・」
気まずいのか語尾の発音がおかしくなる。
「うんうん!それで!?どんな感じだった?」
沙由美は興味津々といった様子で身を乗り出してくる。
「いやその、初めてにしては意外にスムーズに入っちゃって・・・ 」
圭太が赤くなりながら答える。
「あらぁ、そうなのぉ。へぇ~」
沙由美がニヤリとしながら圭太の顔を見る。
「だから、葵さんに経験があったんじゃないかと思って・・・ 」
恥ずかしいからか、圭太の声が小さくなっていく。
「うーん・・・これ話しちゃってもいいのかなぁ?聞きたい?」
「ここまで聞いちゃったんで・・・教えてください。お願いします」
圭太は深々と頭を下げる。
「わかったわ。じゃあ特別に教えるけど、実はね・・・」
ゴクリと圭太の喉が鳴る。
「葵ちゃんここに来るのが初めての親への反抗といったでしょ?」
「はい。」
「・・・その次もあったの。」
「え・・・」
「葵ちゃん・・・自分ですることを覚えたの」
「はぁ?!」
「本人としては小さな反抗だったみたいだけど・・・親が理想とする『純潔な娘』を
自分で辱めていくのが・・・快感になっていたらしいわ」
沙由美が困ったように言う。
「そ、そんなことって・・・」
圭太は驚きを隠せなかった。
あの真面目でしっかり者の葵さんがそんなことをしていたなんて。
「葵ちゃんは親の敷いたレールの上を歩くのが嫌で嫌でしょうがなかったの。
でも、それから逃れるために・・・内容もどんどんエスカレートして・・・」
「・・・」
あまりの事に圭太の頭は真っ白になる。
「1年生の時・・・ネット通販で・・・所謂『大人のおもちゃ』を手に入れて・・・」
「お、大人・・・ですか?」
「そう。葵ちゃんはね、親への反発心もあって、そういうものを試すことに興味津々だったみたい。
もちろん最初は抵抗あったみたいだけど、結局好奇心に負けちゃったみたいで・・・」
「・・・」
(なんて言ったらいいのかわからない・・・)
圭太は言葉が出てこなかった。
自分の知らないところで葵さんにそんな過去があるとは思わなかったからだ。
しかし同時に、どこか納得できる部分もあるような気がした。
葵さんのどこか危なげな雰囲気。
どこか寂しげに見える表情。
そして、時折見せる憂いを帯びた瞳。

葵に対して色々と複雑な思いが巡る中、圭太はとんでもない結論にたどり着く。
「ちょっと待ってください・・・その話からすると・・・葵さんの初めての相手は」
「ええ、圭太君よ。葵ちゃんの処女を捧げた相手が圭太君」
「・・・・・・・」
衝撃の事実に圭太の思考が完全に停止する。
「あ、ちなみに私は圭太君の初めてを貰った女でもあるから。ふふん♪」
沙由美が勝ち誇った顔で言う。沙由美は胸を張りながら自慢げにしている。
(何を誇らしげにしてるんだこの人は・・・)
「葵さんにそんなことがあったなんて・・・知りませんでした」
「そりゃそうよね~普通は誰にも言わないもん。圭太君は特別に教えたげるけど」
「・・・」
「圭太君はどう思った?葵ちゃんのこと。軽蔑した?」
「いえ・・・正直に言えばショックですけど・・・」
「うん?」
沙由美は首を傾げた。
「なんというか・・・俺なんかでよかったのかなと」
「あらあら、随分と謙虚ねぇ。わたしは別にいいと思うけど」
沙由美は優しく微笑む。
その笑みには人を安心させる何かがあった。
それが意図的なものであるかどうかは分からないが。
圭太はホッとした様子で肩を落とす。
沙由美は圭太の頭をポンと撫でると、話を続ける。
「でなきゃ君をけしかけたりしないもの」
「そ、それはどういう意味ですか?」
「んー?まぁ、そのうちわかるわ」
沙由美は妖艶に笑う。
「うーん・・・じゃあこ今朝葵さんが冷たかったのは・・・」
疑問は残る。
「不器用なところもあるからねぇ・・・あの子は。
君に対してどう接したらいいのか分からなかったんじゃないかしら」
「そうですか・・・」
「でも、これからも葵ちゃんのことをよろしくね。圭太君」
沙由美は真剣な眼差しで圭太を見つめる。
「はい、わかりました」
圭太は力強く返事をした。

「だって葵ちゃん!」
沙由美が圭太の背後に向かって声をかける。
「え?!」

「え!?」
圭太は驚いて振り向くと、そこには顔を真っ赤にした葵の姿があった。
「き、聞いてたんです・・・か」
圭太の顔がみるみると赤くなっていく。
「ごめんなさい・・・」
葵は怒りの表情で「人のことをよくも根掘り葉掘り・・・」
とかなんとかぶつくさ言っている。
沙由美は笑いながら謝っている。
圭太は恥ずかしさのあまり、穴があったら入りたい気分だ。
しばらく気まずい空気が流れる。
沈黙を破ったのは沙由美だった。
沙由美はニヤリと笑って言う。
「またこの子を好きにしていいから」

「えっ」
葵が驚いたように沙由美を見る。
「ちょ、ちょっと何言ってるんですか!先生!!」
圭太は焦って抗議する。
葵は「そう」といって、更に「放課後覚えてなさい」と低い声で言って
メガネを光らせて去った。

「ふふふ・・・楽しみが増えたわ」
沙由美は楽しそうに笑っていた。
圭太は沙由美のおもちゃにされたような気がして、少しだけ憂鬱になった。
葵さんは一体何をするのだろうか。
不安しかない。
「大丈夫よ。葵ちゃんはああ見えても意外と優しい子だから」
沙由美はクスッと笑って言った。
「はい・・・」
圭太は苦笑しながら答えた。

放課後、葵からはかなりねっちり責められる羽目にった。

おわり
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