霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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一章

3

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『どうなるか分かりませんが、やれることはやります。ですが上手くいかなくてもわが家を処罰しないでくださいね!』
〈ああ!勿論だ!解決の折には褒美を授けよう!〉

威風堂々。王様の仁王立ちは銅像より威厳たっぷりだった。


『では、王様。いくつか質問いたしますが、よろしいですか?』
〈何でも質問するがいい!〉
『気がついたらと、申しましたが。ここには来たことはございますか?』
〈いや?銅像除幕式などは王子が行なった。したがって儂はここに来てはおらぬ〉
『そうですか。本来、霊体などになると理性が外れ本能で動きます。そのため気になる場所や未練がある場所、思い出のある場所に引き寄せられることが多いそうです。アチラの方々が言ってましたので』
〈ほう。アチラの方々とは面白い〉
『王様も視えませんか?』
〈ん……。まあ、見えるが〉

今王様もアチラの住人の仲間入りじゃん。
ウチのじじさまと話せてるし他にもアチラの方々はいるんだけど。
相手にしてもらえないようで王様は憮然な表情を浮かべた。
霊になってまで王様を崇め奉るとは普通ならないだろう。それが不満だとフンスと鼻息を荒げてた。なので人々が行き交う中、こちらに目を向けるアチラの方々は居ない。浮遊霊だってわざわざ王様だからって近づかないよ。興味ないし。でも時折りふわりと建物の影からこちらを見る霊がいるが。ちょっと気になるのかな?

霊体の発現場所や発現理由なんて人それぞれだけど。他に移動した理由を思い返した。

『あ、あと、物に未練があるとソレがある場所に移動するとも言ってました。何かこの銅像に気になるものや大切な物を記念に飾りにしたり埋めたりしませんでしたか?』
〈大臣共が儂の栄光を讃え銅像設置を決めたからのう。全く関わっておらぬ〉

知らないみたいだから、物を未練と言う推理も外れた。せっかく思い出したのに。

『今日はもうこの辺で終わらせてもよろしいでしょうか?あまり座り込み続けるのも不審なので』

年頃の娘が一人で長時間座っているのはちょっとまずい。ナンパ待ちで男を待っていると取られるから。

〈致し方ない。また明朝儂の何処へ来るのだぞ〉

明朝って。朝からは無理ですよ。そこまで暇じゃないので。寂しいのは分かりますが。独りになるなんて王様には初体験でしょうし。

不満顔の王様を残し帰路に向かった。
フードを深く被り顔を晒さないように歩く。
貧困男爵で平民と変わらない平凡な町娘な私でも一人での外出は気をつけてるのだ。

街の中を歩き人通りを抜けていく。

その時、視界を横ぎったものーー

 〈……………右足〉

ーーそう言って消えた浮遊霊。

力を使い果たしたと言うより、私に伝えて満足げな表情で消えていった。


ハッと見上げ消えていった方を視たがもう空しか見えなかった。




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