霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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一章

4

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ジャック。静かに」
「お嬢様、難しい注文ですね」
「人目が向かないように」


男女が台座の縁に座り大きな荷物を置いて一休み。そんな普通な風景。

そう見えるはず。

その荷物の影で銅像の右足を調べているのだ。
あの発言を聞き下男の一人、ジャックを連れて来た。

〈右足〉と言って消えた霊。

穏やかに消えて逝った。
未練が晴れたのだと思う。

あの霊が何か関わっているのだと直感した。
銅像の何に関わっているのか。


「お嬢様。右足を触りましたが。靴の踵の一箇所だけザラザラした箇所がございます。あとから弄ったと思われる境目がありました」

ビンゴ!
そこが何か分からないが、原因かもしれない。


『王様!銅像に傷つける許可を頂きたい!』
〈うむ!良きに計らえ!儂が許可する!〉


とは言え。
霊体な王様に許可貰ったところで、実際にやれば憲兵に捕まり牢屋行き確定。


仕方ないか、と街並みの中へと足を進めた。

◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

「頼み事あるんですがー」
「おや、お嬢様。今日はどのようなご用件で?」
「ちょっと探し人?かな」


訪れたのは情報ギルド。

王都滞在中、このギルドに何度か通ってお小遣い稼ぎをした。

霊体からの情報で行方不明者を探し出したりした。後は無くし物探しとか。物のある場所の情報とかこの情報ギルドに提供した。
アチラの方々に聞いたことだから、ほとんど労力なしでの情報活動は楽だった。

そのこともあり、情報ギルドでは受付とは顔見知りだったりする。個室に通され担当者に依頼内容を話す。

「依頼しに来たの。硬いものの中から物を発掘して取り出せる人。人目に気づかれず夜陰に紛れて仕事出来る人。そんな人を紹介して欲しいの。勿論秘密厳守で」
「人目を避け夜陰に紛れて、となると盗賊ギルドが人材多いですがリスクありますので。採掘ギルドの人材にしておきましょう」

もちろん盗賊ギルドなんてお断りだ。
確かに銅像から盗み出す?訳だが。コレは盗み出すに入るのだろうか?微妙なとこだと悩んだ。

「冒険者ギルド所属のシーフ兼発掘をする者がおります。こちらの方がおすすめです」
「守秘義務できる人?」
「はい。ギルマスも目をかけてる人ですよ」

ダンジョンでシーフしながら発掘するのか。ギルマスに目をかけられるなら優秀なんだろう。だがこちらは何より守秘義務が第一優先。王様の銅像に手をかけるリスクは重い。それをどうするかが悩みどころ。

「申し訳ないけど、ギルマスいます?」




担当と代わりギルマスが入室すると空気が一変する。柔和な顔して鋭い眼光を向けられ背中がチリチリとして冷や汗が流れてくる。

「久しぶりだね。いつも面白い情報ありがとう。今日はご利用とのことだけど。なかなか興味深いね」

年齢の分からないこの人。若そうだけどかなりの年齢らしい。ギルマス後ろのアチラの住人さんもかなり胡散臭い。

「ちょっと面倒なことになったので守秘義務優先の人を紹介してもらいました。ただ、内容に問題があるのでギルマスにお伺いを立てさせて頂きました」



「ふむ。銅像の足か。元に戻しておけば大丈夫と?」
「はい。そう思ってはいるのですが。やってくれる人を探すのは難しいので」

一連を話し、銅像と言う国の物に手を出すリスクを伝えた。
そんな仕事を請け負う人がいてくれればいいけど。

「対価は?」
「王様の話し?かなぁ」
「………ほう?」

王様が寝込んで生き霊でフラフラしてるのは一大事だと思うし。まだ死んでないし、フラフラしてるのは言っても無駄だから言わないけどね。

無言のまま出された書類。

「この人物に依頼をしておこう。こちらで呼んでおく」
「わかりました」
「で。情報は?」
「王様が寝込んでます」
「寝込んでいる?」
「ほぼ意識不明状態でしょうね」
「どこ筋の情報かな?」
「秘密です」
「……だな」

いつも情報だけを渡す。
情報元なんて出せないし、言えないし。
言葉少なに、でも目力の圧を感じる会話は小娘な私には荷が重い。
早く帰りたい。
「これでロハね」と席を立った。

依頼の代金なんて払いたくないし。
王様からの仕事とは言えタダ働きなのだから、この情報で差し引き実質0円。
男爵家の財状は厳しいのだ。
デビュタントで王都に来てるが、経費節約は必須。


後は依頼人待ちだと家に帰った。


◇◆◇


次の日には請負人と会うことになった。
ギルマス仕事早!

守秘義務厳守で夜中にこっそりと掘り出すとのこと。マスターからの紹介だから安心出来ると言われた。

ま、後ろの人がサムズアップしてるし。大丈夫だろうと納得はした。どうやら後ろのアチラの方は師匠さんのようで、苦労してここまで育てたとか色々過去話しを聞かされた。
うん。凄いうるさい。
聞いてくれる人がいないから、話せる相手がいて嬉しいのはわかりますがうるさいです。


◇◆◇


仕事を終えたとシーフさんから連絡が来た。

待ち合わせの場所でシーフさんとアチラの住人のお師匠さんと、でかい人が仁王立ちしている。

「やあ」
〈仕事は完璧だぜ!〉
〈うむ。ご苦労!〉

「お疲れ様です」
「首尾よく終わりましたよ」
〈流石我が弟子!〉
〈でかした!褒めて遣わす!〉

『うるさい!』

サラウンドで止めてください。

『王様、うるさいです』
〈ルシェや。王様にそれは……〉

『うるさいんです!』

話しにならないので静かにしてもらいました。

シーフさんと王様が並んでいるのを気付かれない様に眺めて椅子に座った。

「コレが出た物」

渡されたのは小さな木箱。

「開けてないから中は知らないよ」

うんうんと頷く師匠さん。

「面倒な仕事をありがとうございました」


お礼を言って解散となった。無事取引が済み安堵した。シーフさんは報告にギルドへ行きました。報酬はギルドから貰ってください。そう言う契約なので。




テーブルに乗っている木箱。
それを眺めて途方に暮れた。

『さて、コレどうしよう』
〈ルシェや。かなり不穏な物じゃのう〉
〈儂がコレのせいでこんななのか?〉

銅像から動けなかった王様は、今私がいるテーブルの目の前で仁王立ちしている。
王様は木箱に憑いているようで、木箱が移動したこのテーブルに王様はいるのだ。
さっきはアチラの方々がシーフの師匠さん、王様、じじさま。3人もいてうるさかったもんだ。

木箱からモヤモヤとした黒い靄が掛かっていて見るからに怪しい。

『コレのせいみたいですね』
〈どうしたら儂は戻れるのだ?〉
『わかりませんよ。専門家じゃないですし』
〈頼れるのは娘のみなのだ!どうにかならんのか!?〉
『そう言われましても。……うん。かなりヤバそう。どうしよう』
〈神殿に相談してみてはどうじゃ?〉
『じじさま流石!そうしてみる!』

他力本願の王様の圧力に圧迫面談されていた私に救いの手を伸ばしてくれたじじさま。
流石私の祖父様だと感謝した。
感謝されない王様が拗ねてますが知らないよー。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昼に投稿するつもりが遅くなりました。すみませんm(__)m

ご読了ありがとうございます。
また次話をよろしくお願いします。
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