霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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二章

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くるりくるりと蝶が舞うかのように、華やかな衣装を身に包み華麗なステップを踏む娘達。

ここは王宮の大広間。

今日はデビュタントを迎えた娘達の華やかな宴の場。


私、ソルシエレ・レベナン子爵令嬢も本日デビュタントを無事迎えました!


ダンスは上位貴族が王族と踊り、ひと段落したら皆が各々に踊り始める。

王子や王族がデビュタント全員とは踊らないのだ。中位や下位などは大人しく観ているだけ。
王子と踊れないなんて!と回りは騒いでいるが、私は面倒なので御免である。
関わらないのが一番だ。
王子だって、デビュタント全員と踊ってたら体力保たないでしょ。大勢居るんだから1日じゃ終わらなくなる。限られた地位の特権でいいじゃん。


華麗なターンを決めくるりふわりと踊る公爵令嬢と王子様。
目の前で華やかに舞う二人。
王子が麗しのスマイルを撒き散らす。

だが、私は笑いを堪えているため苦々しい顔になる。周りからみれば嫉妬で歪む顔だろうか。

でも。
私の視線の先は王子じゃない。
微妙にズレた背後だ。

もちろん何も無い。
踊る王子の背後など近寄る者はいない。

だが、その宙を見つめ一人苦悶する私を気にかける者は勿論いなかった。




〈ルシェがデビュタントとは〉
『じじさま、今まで色々ありがとうございました』
〈こんな立派な姿を見れるなど〉

感涙に咽び泣くじじさま。
出来たらその涙を拭けたらいいのに。
誰も理解されない孤独を一番側で支えてくれたじじさま。デビュタントの姿を見てもらって今日は本当に良かった。


「ソル。父は仕事の話に向こうへ行って来るから。遠くに行かないように」
「はい。父様」

父様は男性陣が纏まっているところへ向かった。社交会は大事な仕事場だ。顔繋ぎも一苦労で、領地運営を左右しかねない。それにいつまでも親にくっついているのも恥ずかしいので壁際に逃げておく。


ーー私は表向き病弱と言う理由で神殿に預けられていた。

だから周りの令嬢達のような交流はなかった。神殿にいたから出来なかったと言うこともあるが。私の能力が他の人に露呈しないよう、お呼ばれもなかったし、お茶会などもなかったのだ。

そして、親子関係も若干疎遠だ。

幼い頃から視えて虚言を吐いた私に対しての対応から、気まずいのか気後れしてるのか他人行儀になりやすい。
神殿にいた期間も長いから、親子時間が短かったのも要因だろう。

それでもデビュタントの準備をしてくれたり、いじめも虐待もないし、お金をケチったりしないあたり親子の情はあるのだと思う。
ただ、慣れないのだと思う。
そう自分では理解して納得している。


知り合いのいない会場は華やかなほど自分の孤独が際立ち、居た堪れず隅の椅子に座っていた。

〈踊らないのかい?〉
『疲れるからいいの』
〈……あ、そうじゃ。さっきの王子の背後は滑稽じゃったのう!〉

私の気落ちを紛れさせようとオロオロしていたじじさま。
気を利かせて、さっき視た可笑しなことを話題に出してきた。


ーー王子の背後。

『ふふっ。アレは王ソックリでしたね』
〈だのう。流石血筋だのう〉

思い出して二人で笑った。
王子の背後で繰り広げられたこと。

王様ソックリの人が王様と同じく、

〈おおー胸が揺れる!もっと腰を揺らせ!〉

と、王様と同じことを言っていたからだ。

服装は煌びやかな衣装だから王族の身内だろう。顔もよく似てるし同じくスケベな態度を見るに近しい間柄なのかとも思った。

〈まぁのう。男は全てスケベなのじゃよ〉

男代表としてじじさまが代弁していますが知りませんよー。





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