霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

文字の大きさ
13 / 55
二章

2

しおりを挟む
あら、ソルシエレ・レベナン男爵令嬢じゃなくて?」
「いえいえ、男爵から子爵におなりになられたのですわよね」
「どうして子爵になられたのか。秘訣を教えて下さらないかしら?」
「………はぁ」

突然声を掛けてきた令嬢三人。

本来なら名を呼ぶ前に自分の自己紹介をしなきゃダメなのに。多分私を格下として話しかけたきたのだろう。
デビュタントは、白い色のドレスが基本だ。初々しいく若々しさの象徴としてシンプルなのが好まれる。だがこの3人、レースに飾りにプリーツにリボン。派手に飾られたドレスは逆に幼さを感じられなんともチグハグな感じが否めない。
自己主張の激しいドレスは中身も同じなのかと思いながら眺めた。
先程の声かけもある意味喧嘩に近い。
私にマウント取りに来ているんだろうけど、まだまだ甘いな。

「これはこれは。何処のどなたか存じませんが。どのようなお話しでしょうか?名乗りあげない無作法が礼儀だとは。社交会の最新の礼儀を心得ず申し訳ありません」
「「「 !! 」」」

喧嘩を買いつつ表向き謝罪しておく。
貧乏男爵時代に培った田舎根性なめんなよー。小娘の小言なんて可愛いもんよ。
それに怖いアチラの方々に比べればなんてことないのだ。

顔を赤くしてキッと睨む辺り、暇つぶしに来て返り討ちされて逆上ってところかな。キリキリと眉を釣り上げて睨むと可愛くないよー。

この三人の背後に立つアチラの方々もあまり雰囲気がヨロシクない。
尊大で人を見下すタイプは歴代から続いているのがよく分かる図だ。

「このロナータ侯爵令嬢様に向かって失礼よ!」
「そうですわ!ロナータ侯爵令嬢様がせっかく声をかけてくだされているのに」
「申し訳ありません。顔も知らず名も知らぬ方。謝罪致します」

ロナータ侯爵令嬢とは言うが、家名すら正式に聞いてないからね。知らないよ。
きっと話しかけて、『あ、ロナータ侯爵令嬢様!お話し出来て光栄です!』とでも期待してたのかな?本当に知らないんだけど。アナタなんて。

「……わたくしはロナータ・ファンファ。侯爵の娘よ」
「私は、レベナン子爵が娘、ソルシエレ・レベナンと申します」

やっとちゃんと挨拶した。
目を細め憮然とした表情で私を見る目は完全に敵視している。

「デビュタントを迎えて交流がないのも今後お困りになるでしょ。懇意にしてあげてもよくってよ」
「………」
「侯爵の私がつけば、デビュタントした貴方には徳でしょ?」

どうやらウチの爵位が上がったし、周りに付き合いがない家だから、自分に引き込みたいようだ。
私が社交会に交流がないのは知られているようで。周りに人が居ないうちに唾つけとけば優位になるとでも思ったようだ。
派閥の力関係の底上げも大変な事ねぇ。

このちょっとしたゴタゴタで注目されてしまい人垣が出来ていた。無名な貧乏元男爵には慣れない状況に汗が流れた。

帰りたい。逃げたい。面倒臭い。

返事をしない私にロナータ侯爵令嬢は憮然としている。
こんな令嬢とは関わり合いになりたくない。ウンザリして返事を悩んでいるところに、周りにいた人混みが割れて静かになり道ができた。

その道の先に居たのはーー


「やあ、君がソルシエレ・レベナン子爵令嬢かい?父上から面白い話しを聞いたんだ。私にも聞かせてくれないか?」

煌びやかな王子様が立っていました。

王子が手を差し伸べる横で、ロナータ令嬢が眉を釣り上げ眉間に皺が寄った恐ろしい顔をしているのは怖!

『じじさま。帰りたい』
〈無理じゃのう……〉

二人して怯えながら目の前の御仁を見つめた。



紫の瞳は王の血筋。
ゆるいウェーブの金髪にすっと通った鼻筋。薄い唇が柔らかく弧を描く。微笑の美丈夫だ。
向けられる視線は優麗でありながら、どこか鋭さを含む。

綺麗な紫の瞳に射竦められて逃げれるわけもなく。
恐る恐る手を取ると王子は満足げにエスコートしていく。

歩くたびに背中に視線と言う矢が何本も刺さるのが分かる。



ああ、帰りたいー!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ご読了ありがとうございます。
ブクマ、しおりをしてくださって感謝しております。
近況ボードにも書きましたが、二章からは書き溜め分があるので、12時過ぎと、18時過ぎの2回投稿いたします。

次話もよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの
恋愛
我が国の王子殿下は十五歳になると婚約者を選定される。 伯爵以上の爵位を持つ年頃の子供を持つ親は娘が選ばれる可能性がある限り、婚約者を作ることが出来ない… 令嬢に婚約者がいないという事は年頃の令息も然り… 早く誰でも良いから選んでくれ… よく食べる子は嫌い ウェーブヘアーが嫌い 王子殿下がポツリと言う。 良い事を聞きましたっ ゆるーい設定です

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...