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二章
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あら、ソルシエレ・レベナン男爵令嬢じゃなくて?」
「いえいえ、男爵から子爵におなりになられたのですわよね」
「どうして子爵になられたのか。秘訣を教えて下さらないかしら?」
「………はぁ」
突然声を掛けてきた令嬢三人。
本来なら名を呼ぶ前に自分の自己紹介をしなきゃダメなのに。多分私を格下として話しかけたきたのだろう。
デビュタントは、白い色のドレスが基本だ。初々しいく若々しさの象徴としてシンプルなのが好まれる。だがこの3人、レースに飾りにプリーツにリボン。派手に飾られたドレスは逆に幼さを感じられなんともチグハグな感じが否めない。
自己主張の激しいドレスは中身も同じなのかと思いながら眺めた。
先程の声かけもある意味喧嘩に近い。
私にマウント取りに来ているんだろうけど、まだまだ甘いな。
「これはこれは。何処のどなたか存じませんが。どのようなお話しでしょうか?名乗りあげない無作法が礼儀だとは。社交会の最新の礼儀を心得ず申し訳ありません」
「「「 !! 」」」
喧嘩を買いつつ表向き謝罪しておく。
貧乏男爵時代に培った田舎根性なめんなよー。小娘の小言なんて可愛いもんよ。
それに怖いアチラの方々に比べればなんてことないのだ。
顔を赤くしてキッと睨む辺り、暇つぶしに来て返り討ちされて逆上ってところかな。キリキリと眉を釣り上げて睨むと可愛くないよー。
この三人の背後に立つアチラの方々もあまり雰囲気がヨロシクない。
尊大で人を見下すタイプは歴代から続いているのがよく分かる図だ。
「このロナータ侯爵令嬢様に向かって失礼よ!」
「そうですわ!ロナータ侯爵令嬢様がせっかく声をかけてくだされているのに」
「申し訳ありません。顔も知らず名も知らぬ方。謝罪致します」
ロナータ侯爵令嬢とは言うが、家名すら正式に聞いてないからね。知らないよ。
きっと話しかけて、『あ、ロナータ侯爵令嬢様!お話し出来て光栄です!』とでも期待してたのかな?本当に知らないんだけど。アナタなんて。
「……わたくしはロナータ・ファンファ。侯爵の娘よ」
「私は、レベナン子爵が娘、ソルシエレ・レベナンと申します」
やっとちゃんと挨拶した。
目を細め憮然とした表情で私を見る目は完全に敵視している。
「デビュタントを迎えて交流がないのも今後お困りになるでしょ。懇意にしてあげてもよくってよ」
「………」
「侯爵の私がつけば、デビュタントした貴方には徳でしょ?」
どうやらウチの爵位が上がったし、周りに付き合いがない家だから、自分に引き込みたいようだ。
私が社交会に交流がないのは知られているようで。周りに人が居ないうちに唾つけとけば優位になるとでも思ったようだ。
派閥の力関係の底上げも大変な事ねぇ。
このちょっとしたゴタゴタで注目されてしまい人垣が出来ていた。無名な貧乏元男爵には慣れない状況に汗が流れた。
帰りたい。逃げたい。面倒臭い。
返事をしない私にロナータ侯爵令嬢は憮然としている。
こんな令嬢とは関わり合いになりたくない。ウンザリして返事を悩んでいるところに、周りにいた人混みが割れて静かになり道ができた。
その道の先に居たのはーー
「やあ、君がソルシエレ・レベナン子爵令嬢かい?父上から面白い話しを聞いたんだ。私にも聞かせてくれないか?」
煌びやかな王子様が立っていました。
王子が手を差し伸べる横で、ロナータ令嬢が眉を釣り上げ眉間に皺が寄った恐ろしい顔をしているのは怖!
『じじさま。帰りたい』
〈無理じゃのう……〉
二人して怯えながら目の前の御仁を見つめた。
紫の瞳は王の血筋。
ゆるいウェーブの金髪にすっと通った鼻筋。薄い唇が柔らかく弧を描く。微笑の美丈夫だ。
向けられる視線は優麗でありながら、どこか鋭さを含む。
綺麗な紫の瞳に射竦められて逃げれるわけもなく。
恐る恐る手を取ると王子は満足げにエスコートしていく。
歩くたびに背中に視線と言う矢が何本も刺さるのが分かる。
ああ、帰りたいー!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご読了ありがとうございます。
ブクマ、しおりをしてくださって感謝しております。
近況ボードにも書きましたが、二章からは書き溜め分があるので、12時過ぎと、18時過ぎの2回投稿いたします。
次話もよろしくお願いします。
「いえいえ、男爵から子爵におなりになられたのですわよね」
「どうして子爵になられたのか。秘訣を教えて下さらないかしら?」
「………はぁ」
突然声を掛けてきた令嬢三人。
本来なら名を呼ぶ前に自分の自己紹介をしなきゃダメなのに。多分私を格下として話しかけたきたのだろう。
デビュタントは、白い色のドレスが基本だ。初々しいく若々しさの象徴としてシンプルなのが好まれる。だがこの3人、レースに飾りにプリーツにリボン。派手に飾られたドレスは逆に幼さを感じられなんともチグハグな感じが否めない。
自己主張の激しいドレスは中身も同じなのかと思いながら眺めた。
先程の声かけもある意味喧嘩に近い。
私にマウント取りに来ているんだろうけど、まだまだ甘いな。
「これはこれは。何処のどなたか存じませんが。どのようなお話しでしょうか?名乗りあげない無作法が礼儀だとは。社交会の最新の礼儀を心得ず申し訳ありません」
「「「 !! 」」」
喧嘩を買いつつ表向き謝罪しておく。
貧乏男爵時代に培った田舎根性なめんなよー。小娘の小言なんて可愛いもんよ。
それに怖いアチラの方々に比べればなんてことないのだ。
顔を赤くしてキッと睨む辺り、暇つぶしに来て返り討ちされて逆上ってところかな。キリキリと眉を釣り上げて睨むと可愛くないよー。
この三人の背後に立つアチラの方々もあまり雰囲気がヨロシクない。
尊大で人を見下すタイプは歴代から続いているのがよく分かる図だ。
「このロナータ侯爵令嬢様に向かって失礼よ!」
「そうですわ!ロナータ侯爵令嬢様がせっかく声をかけてくだされているのに」
「申し訳ありません。顔も知らず名も知らぬ方。謝罪致します」
ロナータ侯爵令嬢とは言うが、家名すら正式に聞いてないからね。知らないよ。
きっと話しかけて、『あ、ロナータ侯爵令嬢様!お話し出来て光栄です!』とでも期待してたのかな?本当に知らないんだけど。アナタなんて。
「……わたくしはロナータ・ファンファ。侯爵の娘よ」
「私は、レベナン子爵が娘、ソルシエレ・レベナンと申します」
やっとちゃんと挨拶した。
目を細め憮然とした表情で私を見る目は完全に敵視している。
「デビュタントを迎えて交流がないのも今後お困りになるでしょ。懇意にしてあげてもよくってよ」
「………」
「侯爵の私がつけば、デビュタントした貴方には徳でしょ?」
どうやらウチの爵位が上がったし、周りに付き合いがない家だから、自分に引き込みたいようだ。
私が社交会に交流がないのは知られているようで。周りに人が居ないうちに唾つけとけば優位になるとでも思ったようだ。
派閥の力関係の底上げも大変な事ねぇ。
このちょっとしたゴタゴタで注目されてしまい人垣が出来ていた。無名な貧乏元男爵には慣れない状況に汗が流れた。
帰りたい。逃げたい。面倒臭い。
返事をしない私にロナータ侯爵令嬢は憮然としている。
こんな令嬢とは関わり合いになりたくない。ウンザリして返事を悩んでいるところに、周りにいた人混みが割れて静かになり道ができた。
その道の先に居たのはーー
「やあ、君がソルシエレ・レベナン子爵令嬢かい?父上から面白い話しを聞いたんだ。私にも聞かせてくれないか?」
煌びやかな王子様が立っていました。
王子が手を差し伸べる横で、ロナータ令嬢が眉を釣り上げ眉間に皺が寄った恐ろしい顔をしているのは怖!
『じじさま。帰りたい』
〈無理じゃのう……〉
二人して怯えながら目の前の御仁を見つめた。
紫の瞳は王の血筋。
ゆるいウェーブの金髪にすっと通った鼻筋。薄い唇が柔らかく弧を描く。微笑の美丈夫だ。
向けられる視線は優麗でありながら、どこか鋭さを含む。
綺麗な紫の瞳に射竦められて逃げれるわけもなく。
恐る恐る手を取ると王子は満足げにエスコートしていく。
歩くたびに背中に視線と言う矢が何本も刺さるのが分かる。
ああ、帰りたいー!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご読了ありがとうございます。
ブクマ、しおりをしてくださって感謝しております。
近況ボードにも書きましたが、二章からは書き溜め分があるので、12時過ぎと、18時過ぎの2回投稿いたします。
次話もよろしくお願いします。
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