霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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二章

5

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「あ、やっぱりね」

そう王子が言うと、もう一人の王子は優雅にお茶を口にした。


今この部屋には、王子が二人いる。

実際には、第一王子が二人居る。

第一王子と第二王子がいるわけではない。
そっくりそのままの第一王子が二人だ。

今の王室には第一王子から第四王子までいる。王女も第一王女から第三王女までいる。
その中で一際優秀なのが第一王子だ。
歳は25歳の正当な血統の正当な嫡子。
正妃の息子で次期王太子として決まっている、王の正統な継続者な訳だが。

なぜかその第一王子二人が並んでいる。

いや、分かっては、いる。

分かりたくないけど。
視えちゃってるし。

二人の背後に立っているのは。

一人は、豪華な衣装に蓄えた髭は現王と顔も似ているから王族の身内なのが良く分かる。しかも、よく喋る。

〈君が話題の視える娘さんだな!ダンスはもっとエロい子を選べと言ってくれ!〉

はい。あの王様の身内ですね。言うこと同じ。
スケベオヤジです。
相手にしないことに文句を言ってますがスルーします。暇な方の相手はしてられません。



かたや、もう一人は。

………黒い。
全身黒のだ。
マントを被っていて顔もよくわからない。
気配も何もかもが黒くて近寄り難い。
視るからに怪しいのだ。

チラリと黒い方の前に座る王子(?)を見れば妖艶に微笑しているのがとても怖い!どちらも無言のまま視線だけは感じる。
居心地の悪いこと悪いこと。


「ねぇ何が視えるの?」

スケベオヤジ憑き王子がきらきらした笑顔で聞いてきた。身を乗り出し興味津々なのは分かりますが、お隣の黒いの憑き王子(?)が呆れて見てますよ?

「いいだろ?もうバレてるみたいだし。私が本物の第一王子アエス・ゼス・キュイベル。こっちが影武者のファルシュだ」

やっぱりかー!
知りたくなかった!
視たくなかった!
聞きたくなかった!
王家の秘密を聞かされて、巻き込まれた感がひしひしと身に染みていく。

「私相手の時は君、無駄に緊張するよね?私の背後はよっぽどな者が居るのかな?」

黒憑きファルシュさんは相変わらず私を観察するように見据える。無駄に緊張していると言われるように、その通り緊張しますよ。黒いの怖いもん。

「視えるわけだから、違う者が居るのだろ?」

同じ顔の王子2人からの質問の答えは一つしかない。

もう観念とばかりに頷くと再び、「やっぱりね」と笑うアエス王子。
ファルシュさんは相変わらず王子様モードだけど、視線だけが鋭い。


「私の後ろには誰が居るのかな?」

期待に目を輝かせるアエス王子。
戸惑いながら背後にいるアチラの方を話すとアエス王子は脱力したように肩を落とした。
まあ、エロオヤジが背後にいると聞いたらショックよね。

アエス王子はファルシュさんに視線を向け「コッチのは?」と聞いてきた。

「………黒いマントで無口なので。よくわかりません」

「あーそうか」と納得したような顔をするアエス王子。同じ顔のファルシュさんは微動だにしなかった。

「過去の同じ影武者か、仲間内の誰かでしょう。情報を出さないのは生前からですし」

喋る影武者もなんだか面白いと思うが。まあ仕事柄、情報を秘匿する立場の人が喋る訳もなく。


これで王子の秘密が私に暴露された訳だが。


「これを踏まえた上で、仕事を頼みたいんだ」


アエス王子が柔かな笑みを浮かべている、のに。

ファルシュさんのような凄みを感じるのは王族故の威厳か。

断る隙もなく致し方なく居住まいをただした。


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