16 / 55
二章
5
しおりを挟む
「あ、やっぱりね」
そう王子が言うと、もう一人の王子は優雅にお茶を口にした。
今この部屋には、王子が二人いる。
実際には、第一王子が二人居る。
第一王子と第二王子がいるわけではない。
そっくりそのままの第一王子が二人だ。
今の王室には第一王子から第四王子までいる。王女も第一王女から第三王女までいる。
その中で一際優秀なのが第一王子だ。
歳は25歳の正当な血統の正当な嫡子。
正妃の息子で次期王太子として決まっている、王の正統な継続者な訳だが。
なぜかその第一王子二人が並んでいる。
いや、分かっては、いる。
分かりたくないけど。
視えちゃってるし。
二人の背後に立っているのは。
一人は、豪華な衣装に蓄えた髭は現王と顔も似ているから王族の身内なのが良く分かる。しかも、よく喋る。
〈君が話題の視える娘さんだな!ダンスはもっとエロい子を選べと言ってくれ!〉
はい。あの王様の身内ですね。言うこと同じ。
スケベオヤジです。
相手にしないことに文句を言ってますがスルーします。暇な方の相手はしてられません。
かたや、もう一人は。
………黒い。
全身黒のだ。
マントを被っていて顔もよくわからない。
気配も何もかもが黒くて近寄り難い。
視るからに怪しいのだ。
チラリと黒い方の前に座る王子(?)を見れば妖艶に微笑しているのがとても怖い!どちらも無言のまま視線だけは感じる。
居心地の悪いこと悪いこと。
「ねぇ何が視えるの?」
スケベオヤジ憑き王子がきらきらした笑顔で聞いてきた。身を乗り出し興味津々なのは分かりますが、お隣の黒いの憑き王子(?)が呆れて見てますよ?
「いいだろ?もうバレてるみたいだし。私が本物の第一王子アエス・ゼス・キュイベル。こっちが影武者のファルシュだ」
やっぱりかー!
知りたくなかった!
視たくなかった!
聞きたくなかった!
王家の秘密を聞かされて、巻き込まれた感がひしひしと身に染みていく。
「私相手の時は君、無駄に緊張するよね?私の背後はよっぽどな者が居るのかな?」
黒憑きファルシュさんは相変わらず私を観察するように見据える。無駄に緊張していると言われるように、その通り緊張しますよ。黒いの怖いもん。
「視えるわけだから、違う者が居るのだろ?」
同じ顔の王子2人からの質問の答えは一つしかない。
もう観念とばかりに頷くと再び、「やっぱりね」と笑うアエス王子。
ファルシュさんは相変わらず王子様モードだけど、視線だけが鋭い。
「私の後ろには誰が居るのかな?」
期待に目を輝かせるアエス王子。
戸惑いながら背後にいるアチラの方を話すとアエス王子は脱力したように肩を落とした。
まあ、エロオヤジが背後にいると聞いたらショックよね。
アエス王子はファルシュさんに視線を向け「コッチのは?」と聞いてきた。
「………黒いマントで無口なので。よくわかりません」
「あーそうか」と納得したような顔をするアエス王子。同じ顔のファルシュさんは微動だにしなかった。
「過去の同じ影武者か、仲間内の誰かでしょう。情報を出さないのは生前からですし」
喋る影武者もなんだか面白いと思うが。まあ仕事柄、情報を秘匿する立場の人が喋る訳もなく。
これで王子の秘密が私に暴露された訳だが。
「これを踏まえた上で、仕事を頼みたいんだ」
アエス王子が柔かな笑みを浮かべている、のに。
ファルシュさんのような凄みを感じるのは王族故の威厳か。
断る隙もなく致し方なく居住まいをただした。
そう王子が言うと、もう一人の王子は優雅にお茶を口にした。
今この部屋には、王子が二人いる。
実際には、第一王子が二人居る。
第一王子と第二王子がいるわけではない。
そっくりそのままの第一王子が二人だ。
今の王室には第一王子から第四王子までいる。王女も第一王女から第三王女までいる。
その中で一際優秀なのが第一王子だ。
歳は25歳の正当な血統の正当な嫡子。
正妃の息子で次期王太子として決まっている、王の正統な継続者な訳だが。
なぜかその第一王子二人が並んでいる。
いや、分かっては、いる。
分かりたくないけど。
視えちゃってるし。
二人の背後に立っているのは。
一人は、豪華な衣装に蓄えた髭は現王と顔も似ているから王族の身内なのが良く分かる。しかも、よく喋る。
〈君が話題の視える娘さんだな!ダンスはもっとエロい子を選べと言ってくれ!〉
はい。あの王様の身内ですね。言うこと同じ。
スケベオヤジです。
相手にしないことに文句を言ってますがスルーします。暇な方の相手はしてられません。
かたや、もう一人は。
………黒い。
全身黒のだ。
マントを被っていて顔もよくわからない。
気配も何もかもが黒くて近寄り難い。
視るからに怪しいのだ。
チラリと黒い方の前に座る王子(?)を見れば妖艶に微笑しているのがとても怖い!どちらも無言のまま視線だけは感じる。
居心地の悪いこと悪いこと。
「ねぇ何が視えるの?」
スケベオヤジ憑き王子がきらきらした笑顔で聞いてきた。身を乗り出し興味津々なのは分かりますが、お隣の黒いの憑き王子(?)が呆れて見てますよ?
「いいだろ?もうバレてるみたいだし。私が本物の第一王子アエス・ゼス・キュイベル。こっちが影武者のファルシュだ」
やっぱりかー!
知りたくなかった!
視たくなかった!
聞きたくなかった!
王家の秘密を聞かされて、巻き込まれた感がひしひしと身に染みていく。
「私相手の時は君、無駄に緊張するよね?私の背後はよっぽどな者が居るのかな?」
黒憑きファルシュさんは相変わらず私を観察するように見据える。無駄に緊張していると言われるように、その通り緊張しますよ。黒いの怖いもん。
「視えるわけだから、違う者が居るのだろ?」
同じ顔の王子2人からの質問の答えは一つしかない。
もう観念とばかりに頷くと再び、「やっぱりね」と笑うアエス王子。
ファルシュさんは相変わらず王子様モードだけど、視線だけが鋭い。
「私の後ろには誰が居るのかな?」
期待に目を輝かせるアエス王子。
戸惑いながら背後にいるアチラの方を話すとアエス王子は脱力したように肩を落とした。
まあ、エロオヤジが背後にいると聞いたらショックよね。
アエス王子はファルシュさんに視線を向け「コッチのは?」と聞いてきた。
「………黒いマントで無口なので。よくわかりません」
「あーそうか」と納得したような顔をするアエス王子。同じ顔のファルシュさんは微動だにしなかった。
「過去の同じ影武者か、仲間内の誰かでしょう。情報を出さないのは生前からですし」
喋る影武者もなんだか面白いと思うが。まあ仕事柄、情報を秘匿する立場の人が喋る訳もなく。
これで王子の秘密が私に暴露された訳だが。
「これを踏まえた上で、仕事を頼みたいんだ」
アエス王子が柔かな笑みを浮かべている、のに。
ファルシュさんのような凄みを感じるのは王族故の威厳か。
断る隙もなく致し方なく居住まいをただした。
0
あなたにおすすめの小説
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子
さこの
恋愛
我が国の王子殿下は十五歳になると婚約者を選定される。
伯爵以上の爵位を持つ年頃の子供を持つ親は娘が選ばれる可能性がある限り、婚約者を作ることが出来ない…
令嬢に婚約者がいないという事は年頃の令息も然り…
早く誰でも良いから選んでくれ…
よく食べる子は嫌い
ウェーブヘアーが嫌い
王子殿下がポツリと言う。
良い事を聞きましたっ
ゆるーい設定です
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる