31 / 55
二章
20
しおりを挟む
お読み下さりありがとうございます。
すみません。
お昼の投稿出来ませんでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「では開けますよ」
マアディン卿の声に皆が一斉に身構えるのが分かった。
ザリッ、ゴリゴリ、ゴゴゴゴッ。
石床に埋め込まれた取手を手にすると腰を落とし足を踏ん張るマアディン卿。引っ張られると石と石が擦れ鈍い音と共に扉は開かれた。
ガコンッ!!
「開いた」
「お待ちください」
アエス王子が呟き近づこうとしたのをマアディン卿が手を向けて止めた。
「何があるか分かりません。私が確認するまでは近づいてはなりません」
流石王家近衛騎士。危険かもしれない場所に王子を近づかせる訳がない。
マアディン卿が暗い四角い穴に躊躇なく近づき調べている。穴にしゃがみ込み危険がないかを確認している。
マアディン卿が地下への出入り口を調べている間に、私は皆から数歩下がり周りを見渡した。
『じじさま、あの人……』
〈ああ、分かっておる。じゃが今はこの中が一番大事じゃろ〉
この部屋に最初から居た存在を、視界の端に捕らえながらじじさまと会話する。
ずっと聴こえている、声。
本当なら耳を塞ぎたい。
聞きたくなくても聴こえてくるその声。
悲しげに青いベッドに座り、
人形を抱えている。
青いベッドを視界に入れられない。
聞いてしまったその言葉。
血の気が引いた。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
「では降ります」
ランタンを持ったマアディン卿が梯子を降りていく。ファルシュさんが穴の上でランタン掲げて光を差し入れる。
カンカンと響く梯子の音がザリッと砂利を踏む音に変わり着いたのが分かった。
カツカツと歩き回る足音が鳴り止まると、「大丈夫です。降りてきてください」とマアディン卿の声が響いた。
その声に、ヴィーエさん、ヴェクステル館長、アエス王子、私、ファルシュさんと、続いた。
ヴィーエさんが降りて術で確認して、館長が精霊で警戒、残ったファルシュさんが殿という順番だ。
降りたその先は6人ではちょっと狭い空間だった。
天井は人が通るのにギリギリの高さ。
そこから続く通路も狭く、幅は両腕を広げれば手がつくほど。
マアディン卿は警戒して剣を抜いたままでいる。狭い空間では剣を引き抜くのも難しい。一瞬でももたついたら命取りになる。だから先んじて剣を抜いているのだろう。
ランタンはヴィーエさん、ヴェクステル館長、ファルシュさんが持ち、私が先頭に道案内をした。
『じじさま、コッチ?』
〈ああ。そこを右じゃ〉
緩やかな勾配だったり、階段だったりを繰り返し、地下をさらに下に進んだ。迷路の通路を抜けてたどり着いたのは、大きな扉の前だった。
身長の倍はありそうな扉には、三大神が施されるている。
その扉をマアディン卿が押し開く。
ガゴゴゴゴゴーー
丸い広場だった。
天井が高く、豪華なシャンデリアが吊るされ、天井そのものにも彫刻や装飾が施されていた。
壁には神々の姿が壁画に描かれている。
凝った細工を施され、金箔が貼られていたであろう装飾は埃を被り輝きが失われている。
正面突き当たりには祭壇らしき台座が設けられている。
壁際には女神テルーレ像だ。
皆が無言のまま歩み出て周りを警戒しながら見渡している。
コツコツと皆の靴音が反響して響き渡る。
私は壁に近づき、神々の壁画の下が目が入った。
埃を被り気がつかなかったが、神々の壁画の下にも何か絵が描いある。
コホコホと咳き込みながら手で払いのけていくと、所々が見えてきた。
壁に描かれているのはどうやら、建国時を描いたようだ。
女神テルーレから祝福を授かる初代が辛うじて見れた。
眺めているとアエス王子やファルシュさんの話し声が耳に届いた。
「何も、ないな」
「書物もない」
「何か記実があれば」
私はその言葉に埃を払いのけながら声をかけた。
「あの。建国時の絵がこの壁画にあるのですが」
「何!建国の壁画か。……レベナン嬢、この壁画から読み取るのは難しいか?」
「……ああ!その手がありましたね」
ファルシュさんが壁を調べながら私に尋ねてきた。
ああ。そうかと私も気がつく。
普段あまりやらないことだし、思い出しもしなかったので、なるほどと思いながら壁に付け手の平に意識を集中した。
「ここからーー……女神の祝福ーーー……感謝……エレートの加護ーーー…紫色の瞳を王としーーー三つ子の継承、一子にーーーー、……………あとは読み取れないです。ですが、ここが女神テルーレより祝福を賜われた神殿であることは間違いないみたいですよ」
視えたのは、光りに包まれた獣らしき生き物と冠を載せた王様。霞んでハッキリとは視えないけど、読めた意識はそれくらいだったと説明した。
「これ、猫か?」
ヴィーエさんがケホケホ咳しながら壁画をはたいた。舞った埃が落ち着いてから近づくと、先程視た景色と同じような絵が描かれている。
光りに包まれてよく視えなかった姿。
四足歩行の獣と王の姿。
その姿に既視感を覚えた。
その獣の姿はーー。
すみません。
お昼の投稿出来ませんでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「では開けますよ」
マアディン卿の声に皆が一斉に身構えるのが分かった。
ザリッ、ゴリゴリ、ゴゴゴゴッ。
石床に埋め込まれた取手を手にすると腰を落とし足を踏ん張るマアディン卿。引っ張られると石と石が擦れ鈍い音と共に扉は開かれた。
ガコンッ!!
「開いた」
「お待ちください」
アエス王子が呟き近づこうとしたのをマアディン卿が手を向けて止めた。
「何があるか分かりません。私が確認するまでは近づいてはなりません」
流石王家近衛騎士。危険かもしれない場所に王子を近づかせる訳がない。
マアディン卿が暗い四角い穴に躊躇なく近づき調べている。穴にしゃがみ込み危険がないかを確認している。
マアディン卿が地下への出入り口を調べている間に、私は皆から数歩下がり周りを見渡した。
『じじさま、あの人……』
〈ああ、分かっておる。じゃが今はこの中が一番大事じゃろ〉
この部屋に最初から居た存在を、視界の端に捕らえながらじじさまと会話する。
ずっと聴こえている、声。
本当なら耳を塞ぎたい。
聞きたくなくても聴こえてくるその声。
悲しげに青いベッドに座り、
人形を抱えている。
青いベッドを視界に入れられない。
聞いてしまったその言葉。
血の気が引いた。
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
「では降ります」
ランタンを持ったマアディン卿が梯子を降りていく。ファルシュさんが穴の上でランタン掲げて光を差し入れる。
カンカンと響く梯子の音がザリッと砂利を踏む音に変わり着いたのが分かった。
カツカツと歩き回る足音が鳴り止まると、「大丈夫です。降りてきてください」とマアディン卿の声が響いた。
その声に、ヴィーエさん、ヴェクステル館長、アエス王子、私、ファルシュさんと、続いた。
ヴィーエさんが降りて術で確認して、館長が精霊で警戒、残ったファルシュさんが殿という順番だ。
降りたその先は6人ではちょっと狭い空間だった。
天井は人が通るのにギリギリの高さ。
そこから続く通路も狭く、幅は両腕を広げれば手がつくほど。
マアディン卿は警戒して剣を抜いたままでいる。狭い空間では剣を引き抜くのも難しい。一瞬でももたついたら命取りになる。だから先んじて剣を抜いているのだろう。
ランタンはヴィーエさん、ヴェクステル館長、ファルシュさんが持ち、私が先頭に道案内をした。
『じじさま、コッチ?』
〈ああ。そこを右じゃ〉
緩やかな勾配だったり、階段だったりを繰り返し、地下をさらに下に進んだ。迷路の通路を抜けてたどり着いたのは、大きな扉の前だった。
身長の倍はありそうな扉には、三大神が施されるている。
その扉をマアディン卿が押し開く。
ガゴゴゴゴゴーー
丸い広場だった。
天井が高く、豪華なシャンデリアが吊るされ、天井そのものにも彫刻や装飾が施されていた。
壁には神々の姿が壁画に描かれている。
凝った細工を施され、金箔が貼られていたであろう装飾は埃を被り輝きが失われている。
正面突き当たりには祭壇らしき台座が設けられている。
壁際には女神テルーレ像だ。
皆が無言のまま歩み出て周りを警戒しながら見渡している。
コツコツと皆の靴音が反響して響き渡る。
私は壁に近づき、神々の壁画の下が目が入った。
埃を被り気がつかなかったが、神々の壁画の下にも何か絵が描いある。
コホコホと咳き込みながら手で払いのけていくと、所々が見えてきた。
壁に描かれているのはどうやら、建国時を描いたようだ。
女神テルーレから祝福を授かる初代が辛うじて見れた。
眺めているとアエス王子やファルシュさんの話し声が耳に届いた。
「何も、ないな」
「書物もない」
「何か記実があれば」
私はその言葉に埃を払いのけながら声をかけた。
「あの。建国時の絵がこの壁画にあるのですが」
「何!建国の壁画か。……レベナン嬢、この壁画から読み取るのは難しいか?」
「……ああ!その手がありましたね」
ファルシュさんが壁を調べながら私に尋ねてきた。
ああ。そうかと私も気がつく。
普段あまりやらないことだし、思い出しもしなかったので、なるほどと思いながら壁に付け手の平に意識を集中した。
「ここからーー……女神の祝福ーーー……感謝……エレートの加護ーーー…紫色の瞳を王としーーー三つ子の継承、一子にーーーー、……………あとは読み取れないです。ですが、ここが女神テルーレより祝福を賜われた神殿であることは間違いないみたいですよ」
視えたのは、光りに包まれた獣らしき生き物と冠を載せた王様。霞んでハッキリとは視えないけど、読めた意識はそれくらいだったと説明した。
「これ、猫か?」
ヴィーエさんがケホケホ咳しながら壁画をはたいた。舞った埃が落ち着いてから近づくと、先程視た景色と同じような絵が描かれている。
光りに包まれてよく視えなかった姿。
四足歩行の獣と王の姿。
その姿に既視感を覚えた。
その獣の姿はーー。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
安らかにお眠りください
くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。
※突然残酷な描写が入ります。
※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。
※小説家になろう様へも投稿しています。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる