霊感令嬢の視る仕事。〜視るだけの楽なお仕事?視るだけです厄介事はお断りします!〜

たちばな樹

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二章

20

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お読み下さりありがとうございます。
すみません。
お昼の投稿出来ませんでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「では開けますよ」

マアディン卿の声に皆が一斉に身構えるのが分かった。

ザリッ、ゴリゴリ、ゴゴゴゴッ。

石床に埋め込まれた取手を手にすると腰を落とし足を踏ん張るマアディン卿。引っ張られると石と石が擦れ鈍い音と共に扉は開かれた。

ガコンッ!!

「開いた」
「お待ちください」

アエス王子が呟き近づこうとしたのをマアディン卿が手を向けて止めた。

「何があるか分かりません。私が確認するまでは近づいてはなりません」

流石王家近衛騎士。危険かもしれない場所に王子を近づかせる訳がない。
マアディン卿が暗い四角い穴に躊躇なく近づき調べている。穴にしゃがみ込み危険がないかを確認している。



マアディン卿が地下への出入り口を調べている間に、私は皆から数歩下がり周りを見渡した。

『じじさま、あの人……』
〈ああ、分かっておる。じゃが今はこの中が一番大事じゃろ〉

この部屋に最初から居た存在を、視界の端に捕らえながらじじさまと会話する。

ずっと聴こえている、声。

本当なら耳を塞ぎたい。
聞きたくなくても聴こえてくるその声。


悲しげに青いベッドに座り、
人形を抱えている。


青いベッドを視界に入れられない。



聞いてしまったその言葉。




血の気が引いた。




◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇



「では降ります」

ランタンを持ったマアディン卿が梯子を降りていく。ファルシュさんが穴の上でランタン掲げて光を差し入れる。
カンカンと響く梯子の音がザリッと砂利を踏む音に変わり着いたのが分かった。


カツカツと歩き回る足音が鳴り止まると、「大丈夫です。降りてきてください」とマアディン卿の声が響いた。

その声に、ヴィーエさん、ヴェクステル館長、アエス王子、私、ファルシュさんと、続いた。

ヴィーエさんが降りて術で確認して、館長が精霊で警戒、残ったファルシュさんが殿という順番だ。



降りたその先は6人ではちょっと狭い空間だった。
天井は人が通るのにギリギリの高さ。

そこから続く通路も狭く、幅は両腕を広げれば手がつくほど。
マアディン卿は警戒して剣を抜いたままでいる。狭い空間では剣を引き抜くのも難しい。一瞬でももたついたら命取りになる。だから先んじて剣を抜いているのだろう。


ランタンはヴィーエさん、ヴェクステル館長、ファルシュさんが持ち、私が先頭に道案内をした。

『じじさま、コッチ?』
〈ああ。そこを右じゃ〉


緩やかな勾配だったり、階段だったりを繰り返し、地下をさらに下に進んだ。迷路の通路を抜けてたどり着いたのは、大きな扉の前だった。

身長の倍はありそうな扉には、三大神が施されるている。

その扉をマアディン卿が押し開く。

ガゴゴゴゴゴーー



丸い広場だった。

天井が高く、豪華なシャンデリアが吊るされ、天井そのものにも彫刻や装飾が施されていた。
壁には神々の姿が壁画に描かれている。
凝った細工を施され、金箔が貼られていたであろう装飾は埃を被り輝きが失われている。
正面突き当たりには祭壇らしき台座が設けられている。

壁際には女神テルーレ像だ。

皆が無言のまま歩み出て周りを警戒しながら見渡している。
コツコツと皆の靴音が反響して響き渡る。

私は壁に近づき、神々の壁画の下が目が入った。

埃を被り気がつかなかったが、神々の壁画の下にも何か絵が描いある。
コホコホと咳き込みながら手で払いのけていくと、所々が見えてきた。
壁に描かれているのはどうやら、建国時を描いたようだ。
女神テルーレから祝福を授かる初代が辛うじて見れた。
眺めているとアエス王子やファルシュさんの話し声が耳に届いた。

「何も、ないな」
「書物もない」
「何か記実があれば」

私はその言葉に埃を払いのけながら声をかけた。

「あの。建国時の絵がこの壁画にあるのですが」
「何!建国の壁画か。……レベナン嬢、この壁画から読み取るのは難しいか?」
「……ああ!その手がありましたね」

ファルシュさんが壁を調べながら私に尋ねてきた。
ああ。そうかと私も気がつく。
普段あまりやらないことだし、思い出しもしなかったので、なるほどと思いながら壁に付け手の平に意識を集中した。


「ここからーー……女神の祝福ーーー……感謝……エレートの加護ーーー…紫色の瞳を王としーーー三つ子の継承、一子にーーーー、……………あとは読み取れないです。ですが、ここが女神テルーレより祝福を賜われた神殿であることは間違いないみたいですよ」

視えたのは、光りに包まれた獣らしき生き物と冠を載せた王様。霞んでハッキリとは視えないけど、読めた意識はそれくらいだったと説明した。


「これ、猫か?」

ヴィーエさんがケホケホ咳しながら壁画をはたいた。舞った埃が落ち着いてから近づくと、先程視た景色と同じような絵が描かれている。

光りに包まれてよく視えなかった姿。

四足歩行の獣と王の姿。

その姿に既視感を覚えた。



その獣の姿はーー。








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