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三章
6
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「帰り、寄り道しないか?」
神殿からの帰り道。
マアディン卿が寄り道を提案してきた。
「え、どこにですか?また説明なかったら行きませんよ。変なところじゃないでしょうね?」
疑いの眼差しにマアディン卿は自嘲した。苦笑いを浮かべたままぽりぽりと頬を掻く。
「あの時は悪かった。ちゃんと説明する」
両手を肩ほどに上げ手の平を向けて降参のようなポーズをするマアディン卿に、「なら聞いてあげる」と腰に手を当てて向いた。
「露店で買い食いしないか?街に出たことないなら、露店を回るのもいいかと思ってね。美味しいところいっぱいあるぞ?」
「美味しいところ?どんなところ?」
憧れて、でも行けなかった場所。
期待に目を見開きわくわくして詰めよった。
「騎士は食い物にうるさいぞ。美味いところならまかせろ!」
その反応に待ってましたとばかりに、ニイと笑う。
マアディン卿、強面でソレやるとちょっと怖いよ?
「ここの串焼きはタレが絶品。ここの揚げ串は肉団子がおすすめ。こっちはパイの肉詰め。この店が一番美味い。あそこの薄焼巻きは野菜少なめでタレ多めに出来るから、好みにできる」
薄焼巻きは粉の液を焼いて好みのものをトッピングして、焼けたら巻いて紙に包んで渡してくれる。持ち帰りが難しいから話しでは聞いていた物だ。
「海鮮の串焼きは隣りの通りだな。腸詰はギルドの隣りが一番だ。茹でと焼き両方とも美味いな」
「どれも美味しそう!でも全部は食べきれない!どれから食べればいいのか迷うー!!」
口から涎が溢れんばかりな私の食欲は見てて面白いのか、マアディン卿が手に口を当てて笑いを堪えている。
「好きなだけ食べろ。気にするな。残ったら俺が食べる」
何種類かを買い席に座ると、手渡された串はタレの色が濃く照らりと光る。
ごくんと唾を飲み込み一口齧ると、タレの甘辛さと肉の甘みが口の中に広がった。
「んーーまーー!」
煙で燻製のような薫りが付いて香ばしく、タレの甘辛と肉の旨味と甘味が口の中で合わさり、ひたすら口を動かした。
絶妙な焼き加減と肉の柔らかさ。
最高に美味しい。
流石、味に煩い騎士のおすすめだ。
目を瞑り手を頬に当てじっくりと味を噛み締めた。大きな肉を何度か頬張る。大きな串は肉がたっぷりで食べ応えがある。これだけでもお腹が満たされてしまいそうだ。
串を半分食べたころ、マアディン卿が私の手から串をひょいと取った。
「え!!」と思って見上げていたら、今度は揚げ串を持たされた。
「全部食べたら他が食べれないだろ?揚げ串も美味いぞ。熱いから口の中やけどしないようにな。飲み物はここに置いておくぞ」
まだ食べたかったのに。
思わず恨み魔がしい顔で見てしまった。
まあ、確かに。
並べられた料理の数々。
絶対全種類は入らない。
マアディン卿の采配に一応納得して飲み物を口にし「ふはー」と一息ついた。
並べられた料理に飲み物まで至れり尽くせりです。マアディン卿オカンか。
でもマアディン卿が私の残りの串を一口で食べちゃった。それってさ……間接的に、ね。
なんだか頬が熱くなってきてしまう。
視界にマアディン卿をいれないようにして揚げ串を口に入れた。
「熱!」
「ほら、肉汁すごいから気をつけないと」
飲み物を差し出すオカン。じゃなくてマアディン卿。人の先を読むオカンな能力は年の功ってやつか。流石10も年上だと経験値が違うね!
飲み物で口の中を落ち着けてお礼を言う。
さて、気をつけて実食再開!
「あふあふでおひひい」
「食べてる最中しゃべらない」
「おいひいほふはへはふへ」
美味しいを伝えたくて、伝わらない。
マアディン卿がくつくつと笑うのも気にも留めずに食べ続けた。
ここは共通の休憩場所。
頼んだものを座って好きに食べれる場所だ。
普通は買ったものを自分で持ってくるのだが事前に頼み、できたら持って来てもらえるのは騎士の特権か。
いまは受諾してしまおう。座って食べ続けれる幸せは得難い。
肉詰めパイを一切れを食べ、次は薄焼巻きを齧る。包み焼きに、搾りたての果汁を飲み干したら、次はデザートだ!
アイスとワッフル。チョコがかかったフルーツ、シナモンたっぷりのチュロス。
ワッフルの熱さでアイスが溶けたのを絡めて一口。ふわふわ冷たい甘いがいっぺんに口調の中を占領する。
「はー。甘いー。冷たいー。美味しいー」
シナモンたっぷりのチュロスはサクサクで、濃厚チョコがフルーツがジューシーで良く合ってて。どれもこれも手が止まらなかった。
「さ……さすがにお腹いっぱい」
「満足してもらえてよかった」
マアディン卿の満面の笑みに私も笑みを返した。
長年憧れていた露店の買い食い。街の中を散策するだけでも楽しかった。
「マアディン卿、案内してくれてありがとうございました!素敵な体験ができて凄く嬉しかったです!」
「喜んいただけたなら何よりだ。また次は新しいところに連れて行くから」
「ほんと?」
思わず顔面を綻ばせてマアディアン卿に詰め寄ると困り顔を浮かべながら笑っている。ちょっとはしゃぎすぎたかと立ち止まりチラリと見上げる。
マアディアン卿は私をまあまあと落ち着かせるように両手を上下させながらもやっぱり笑っている。
淑女がはしたない態度だったと反省した。
「ああ、次は出店じゃなく美味しいお店を案内するよ」
「すごい楽しみ!でも次は私が払いますよ」
今回、私も払うと言ったが頑として受け取らなかった。誤逮捕のお詫びと言われ渋々諦めたけど。
だから次回はと思ったのだ。
次回こそ払うんだと意志を決めた。
またの楽しみにウキウキとして帰路に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物に記載しましたが、マアディン卿は10才上です。なので、生意気なヒロインも手のひらです。脳筋に見せてるだけです。ツンツン態度も可愛いなぁ、くらいに思ってます。
兄弟妹いるので慣れてます。なので軽口くらいでおこりません。大人だねー。
ご読了ありがとうございました。
次話はマアディン卿視点を挟みます。
よろしくお願いします。
神殿からの帰り道。
マアディン卿が寄り道を提案してきた。
「え、どこにですか?また説明なかったら行きませんよ。変なところじゃないでしょうね?」
疑いの眼差しにマアディン卿は自嘲した。苦笑いを浮かべたままぽりぽりと頬を掻く。
「あの時は悪かった。ちゃんと説明する」
両手を肩ほどに上げ手の平を向けて降参のようなポーズをするマアディン卿に、「なら聞いてあげる」と腰に手を当てて向いた。
「露店で買い食いしないか?街に出たことないなら、露店を回るのもいいかと思ってね。美味しいところいっぱいあるぞ?」
「美味しいところ?どんなところ?」
憧れて、でも行けなかった場所。
期待に目を見開きわくわくして詰めよった。
「騎士は食い物にうるさいぞ。美味いところならまかせろ!」
その反応に待ってましたとばかりに、ニイと笑う。
マアディン卿、強面でソレやるとちょっと怖いよ?
「ここの串焼きはタレが絶品。ここの揚げ串は肉団子がおすすめ。こっちはパイの肉詰め。この店が一番美味い。あそこの薄焼巻きは野菜少なめでタレ多めに出来るから、好みにできる」
薄焼巻きは粉の液を焼いて好みのものをトッピングして、焼けたら巻いて紙に包んで渡してくれる。持ち帰りが難しいから話しでは聞いていた物だ。
「海鮮の串焼きは隣りの通りだな。腸詰はギルドの隣りが一番だ。茹でと焼き両方とも美味いな」
「どれも美味しそう!でも全部は食べきれない!どれから食べればいいのか迷うー!!」
口から涎が溢れんばかりな私の食欲は見てて面白いのか、マアディン卿が手に口を当てて笑いを堪えている。
「好きなだけ食べろ。気にするな。残ったら俺が食べる」
何種類かを買い席に座ると、手渡された串はタレの色が濃く照らりと光る。
ごくんと唾を飲み込み一口齧ると、タレの甘辛さと肉の甘みが口の中に広がった。
「んーーまーー!」
煙で燻製のような薫りが付いて香ばしく、タレの甘辛と肉の旨味と甘味が口の中で合わさり、ひたすら口を動かした。
絶妙な焼き加減と肉の柔らかさ。
最高に美味しい。
流石、味に煩い騎士のおすすめだ。
目を瞑り手を頬に当てじっくりと味を噛み締めた。大きな肉を何度か頬張る。大きな串は肉がたっぷりで食べ応えがある。これだけでもお腹が満たされてしまいそうだ。
串を半分食べたころ、マアディン卿が私の手から串をひょいと取った。
「え!!」と思って見上げていたら、今度は揚げ串を持たされた。
「全部食べたら他が食べれないだろ?揚げ串も美味いぞ。熱いから口の中やけどしないようにな。飲み物はここに置いておくぞ」
まだ食べたかったのに。
思わず恨み魔がしい顔で見てしまった。
まあ、確かに。
並べられた料理の数々。
絶対全種類は入らない。
マアディン卿の采配に一応納得して飲み物を口にし「ふはー」と一息ついた。
並べられた料理に飲み物まで至れり尽くせりです。マアディン卿オカンか。
でもマアディン卿が私の残りの串を一口で食べちゃった。それってさ……間接的に、ね。
なんだか頬が熱くなってきてしまう。
視界にマアディン卿をいれないようにして揚げ串を口に入れた。
「熱!」
「ほら、肉汁すごいから気をつけないと」
飲み物を差し出すオカン。じゃなくてマアディン卿。人の先を読むオカンな能力は年の功ってやつか。流石10も年上だと経験値が違うね!
飲み物で口の中を落ち着けてお礼を言う。
さて、気をつけて実食再開!
「あふあふでおひひい」
「食べてる最中しゃべらない」
「おいひいほふはへはふへ」
美味しいを伝えたくて、伝わらない。
マアディン卿がくつくつと笑うのも気にも留めずに食べ続けた。
ここは共通の休憩場所。
頼んだものを座って好きに食べれる場所だ。
普通は買ったものを自分で持ってくるのだが事前に頼み、できたら持って来てもらえるのは騎士の特権か。
いまは受諾してしまおう。座って食べ続けれる幸せは得難い。
肉詰めパイを一切れを食べ、次は薄焼巻きを齧る。包み焼きに、搾りたての果汁を飲み干したら、次はデザートだ!
アイスとワッフル。チョコがかかったフルーツ、シナモンたっぷりのチュロス。
ワッフルの熱さでアイスが溶けたのを絡めて一口。ふわふわ冷たい甘いがいっぺんに口調の中を占領する。
「はー。甘いー。冷たいー。美味しいー」
シナモンたっぷりのチュロスはサクサクで、濃厚チョコがフルーツがジューシーで良く合ってて。どれもこれも手が止まらなかった。
「さ……さすがにお腹いっぱい」
「満足してもらえてよかった」
マアディン卿の満面の笑みに私も笑みを返した。
長年憧れていた露店の買い食い。街の中を散策するだけでも楽しかった。
「マアディン卿、案内してくれてありがとうございました!素敵な体験ができて凄く嬉しかったです!」
「喜んいただけたなら何よりだ。また次は新しいところに連れて行くから」
「ほんと?」
思わず顔面を綻ばせてマアディアン卿に詰め寄ると困り顔を浮かべながら笑っている。ちょっとはしゃぎすぎたかと立ち止まりチラリと見上げる。
マアディアン卿は私をまあまあと落ち着かせるように両手を上下させながらもやっぱり笑っている。
淑女がはしたない態度だったと反省した。
「ああ、次は出店じゃなく美味しいお店を案内するよ」
「すごい楽しみ!でも次は私が払いますよ」
今回、私も払うと言ったが頑として受け取らなかった。誤逮捕のお詫びと言われ渋々諦めたけど。
だから次回はと思ったのだ。
次回こそ払うんだと意志を決めた。
またの楽しみにウキウキとして帰路に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物に記載しましたが、マアディン卿は10才上です。なので、生意気なヒロインも手のひらです。脳筋に見せてるだけです。ツンツン態度も可愛いなぁ、くらいに思ってます。
兄弟妹いるので慣れてます。なので軽口くらいでおこりません。大人だねー。
ご読了ありがとうございました。
次話はマアディン卿視点を挟みます。
よろしくお願いします。
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