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三章
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すみません。
遅刻しました。
よろしくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久しぶりの景色に浮かれながら通路を駆けた。
通路の先に見えた水場で洗濯する人影が三人見えた。
未亡人でシスターになったレイナさんと、年上のお姉さんなミナさんと、一つ上のアレアちゃんだ。
「久しぶりー!」
「あ!エレー!」
アレアちゃんが走り寄り抱きついてきた。
「泡だらけの手じゃん!」
「あははごめーん」
抱き合い見合うと懐かしい顔ぶれ。
アレアちゃんは長いまつ毛に垂れ目ちゃんな顔は変わらない。
レイナさんとミナお姉さんが手を拭きながら近づいた。レイナさんとミナお姉さんにハグして挨拶をする。
「元気でしたか?」
「外はどう?」
「元気ですよ!でも外は騒がしいから疲れます」
疲れる理由に顔が顰めると二人は声色を落とした。
「辛いならもどる?外は慣れないでしょ?無理してるんじゃない?」
「一人で頑張りすぎてない?家族に頼れてる?相談なら乗るからね」
肩に手を置かれて心配気に顔を覗かれた。神殿にいる間はほとんど外に出なかった。ここに来た頃に何度か出たけど、それ以来だから神殿を出る時、適応出来るか凄く心配された。
なかなか人に理解される能力じゃないから、家族も疎むのを知っているため打ち解けられるか何度も確認してきた。
「大丈夫!無事にデビュタントもしたし、今は王宮で仕事もしてるの」
「王宮で?大丈夫なの?」
「人もいっぱいいるだろうし、アチラの方々もいるでしょ?」
「平気だよ。だいぶ慣れた。それに王様や王子様からの仕事依頼だからあまり人と接触が少ないから」
内容は話せないけどね。
「だから近衛騎士がついてるんだ!」
「近衛騎士なんて凄いわよ!」
「騎士付きなんて良いよねー」
「騎士に守られてお姫様気分じゃない?」
きゃいきゃいと話に華を咲かせる。
久しぶりの女子の会話に夢中になった。
「陞爵もしたんでしょ!」
「凄いわよ!」
「偶然、お忍びの王様を助けたからね」
「それも凄いわよ!」
子爵になるにあたり、色々言われた。
何をしたのか。
王に何して爵位が上がったか。
実は王の愛人説とかもあったが。病弱で引きこもりで神殿にいたからその噂は消えた。
"王がお忍びで外出し、デビュタントで来てた私が助けた "
これで納得された。
お忍びだから助けた内容とかは王命で内緒だとも伝えて追求回避する。
「今度お祭り行こ?」
「そうだ!神殿出たんだから、買い物も行こ!」
「ランチもしようね」
「またあそびな来てね」
「うん!」
ちょっと王様のこと、恨んだりしたけど。
神殿を出ることなく街を見ることなく生活し、そして王都を去った私。
また皆と会える機会に繋がるなら、よかったのかな?と思った。
ま、ちょっとだけど、ね!
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
「おしゃべりしてきたー!たのしかった!」
お喋りを終えて応接室に戻った。
応接室に入るとなんだが微妙に緊張感を感じた。
「そうかそうか」
「なんかあった?」
「ん?なんもないぞ?」
いつもの鷹揚としたダンおじちゃんの雰囲気に首を傾げながらマアディン卿を見た。
いつもと変わらないのに、なんだか背後のアチラの方々が落ち着きない。
訝しむ私をよそに二人はのんびりとお茶を飲んだ。
どんなやりとりだったかは後ろのアチラの方々のみぞ知る。
それよりもーー。
ダンおじちゃんに相談しに行ったのに女子の井戸端会議のお喋りで終わり、がっくりと項垂れた。
『本来の目的に辿り着かなかった』
〈まあ、また聞きにいきなされな〉
じじさまの慰めに肩を落とした私だった。
遅刻しました。
よろしくお願いします。
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久しぶりの景色に浮かれながら通路を駆けた。
通路の先に見えた水場で洗濯する人影が三人見えた。
未亡人でシスターになったレイナさんと、年上のお姉さんなミナさんと、一つ上のアレアちゃんだ。
「久しぶりー!」
「あ!エレー!」
アレアちゃんが走り寄り抱きついてきた。
「泡だらけの手じゃん!」
「あははごめーん」
抱き合い見合うと懐かしい顔ぶれ。
アレアちゃんは長いまつ毛に垂れ目ちゃんな顔は変わらない。
レイナさんとミナお姉さんが手を拭きながら近づいた。レイナさんとミナお姉さんにハグして挨拶をする。
「元気でしたか?」
「外はどう?」
「元気ですよ!でも外は騒がしいから疲れます」
疲れる理由に顔が顰めると二人は声色を落とした。
「辛いならもどる?外は慣れないでしょ?無理してるんじゃない?」
「一人で頑張りすぎてない?家族に頼れてる?相談なら乗るからね」
肩に手を置かれて心配気に顔を覗かれた。神殿にいる間はほとんど外に出なかった。ここに来た頃に何度か出たけど、それ以来だから神殿を出る時、適応出来るか凄く心配された。
なかなか人に理解される能力じゃないから、家族も疎むのを知っているため打ち解けられるか何度も確認してきた。
「大丈夫!無事にデビュタントもしたし、今は王宮で仕事もしてるの」
「王宮で?大丈夫なの?」
「人もいっぱいいるだろうし、アチラの方々もいるでしょ?」
「平気だよ。だいぶ慣れた。それに王様や王子様からの仕事依頼だからあまり人と接触が少ないから」
内容は話せないけどね。
「だから近衛騎士がついてるんだ!」
「近衛騎士なんて凄いわよ!」
「騎士付きなんて良いよねー」
「騎士に守られてお姫様気分じゃない?」
きゃいきゃいと話に華を咲かせる。
久しぶりの女子の会話に夢中になった。
「陞爵もしたんでしょ!」
「凄いわよ!」
「偶然、お忍びの王様を助けたからね」
「それも凄いわよ!」
子爵になるにあたり、色々言われた。
何をしたのか。
王に何して爵位が上がったか。
実は王の愛人説とかもあったが。病弱で引きこもりで神殿にいたからその噂は消えた。
"王がお忍びで外出し、デビュタントで来てた私が助けた "
これで納得された。
お忍びだから助けた内容とかは王命で内緒だとも伝えて追求回避する。
「今度お祭り行こ?」
「そうだ!神殿出たんだから、買い物も行こ!」
「ランチもしようね」
「またあそびな来てね」
「うん!」
ちょっと王様のこと、恨んだりしたけど。
神殿を出ることなく街を見ることなく生活し、そして王都を去った私。
また皆と会える機会に繋がるなら、よかったのかな?と思った。
ま、ちょっとだけど、ね!
◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇
「おしゃべりしてきたー!たのしかった!」
お喋りを終えて応接室に戻った。
応接室に入るとなんだが微妙に緊張感を感じた。
「そうかそうか」
「なんかあった?」
「ん?なんもないぞ?」
いつもの鷹揚としたダンおじちゃんの雰囲気に首を傾げながらマアディン卿を見た。
いつもと変わらないのに、なんだか背後のアチラの方々が落ち着きない。
訝しむ私をよそに二人はのんびりとお茶を飲んだ。
どんなやりとりだったかは後ろのアチラの方々のみぞ知る。
それよりもーー。
ダンおじちゃんに相談しに行ったのに女子の井戸端会議のお喋りで終わり、がっくりと項垂れた。
『本来の目的に辿り着かなかった』
〈まあ、また聞きにいきなされな〉
じじさまの慰めに肩を落とした私だった。
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