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閑話 冒険者ギルドの受付さん
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笑顔を張り付けたまま、冒険者ギルドのカウンターに座っているとついついあくびが出てきてしまう。
ふあああ。
ムイの奴、「こんなんだから彼氏もできないのよ」とか言うけど、私は私、気ままにやっていこうと思っているの。
彼氏ができたからといって何か変わるわけでもないしねえ。
私は何のかんのでこの仕事が気に入っている。
冒険者さん達が強くなっていく様子を見たり、夢一杯の新人さんに内心「がんばれー」と言ったり、結構楽しいんだから。
そりゃ、時には大怪我を負った冒険者さんに顔が青ざめたりするけど。
でも、いろいろひっくるめて私はこの仕事が好きなんだなあと思う。
面白いことも多々あるしね。
この前だって、回復術師だか荷物持ちだかの可愛らしい感じの女の子が、パーティを抜けて独りぼっちになっていた。
もう冒険者を止めちゃうのかなあなんて勝手にハラハラしていたんだけど、ビックリしたことが起こったの。
鼻が大きい灰色のモフモフした変な生物を連れて、あの子はやって来た。
変な生物は喋る。
正直、ちょっとなあと思いつつもテイム登録を行ったの。
でもその後、ビックリしたわよ! だって、あの変な生物さんたら、ベノムウルフの牙を大量に持っていたんだもの!
あの変な生物、とっても変だけど、実は強テイム生物なのかもしれないわ。
でも、強テイム生物は強いテイマーじゃないとテイムできないはずなんだけど、不思議なこともあるものよね。
これだから受付はやめらないってものよ。
あの変な生物さんにちょっと素っ気ない態度をとっちゃったから、次はもうちょっと愛想よくしないと……反省反省。
いくら変だといっても、一応お客様だからね。あれ? テイム生物ってお客様扱いだっけ? 今度、ギルドマスターに聞いておかないと。
「お、おい」
「な、何もんだ……」
あれ?
入口の方が騒がしいわね。ひょっとして、Sランクの冒険者パーティでも来たのかな?
昼下がりの人が少ない時間帯なのに、ざわめく声が大きくなってくる。
これは、相当な大物が来たのね。
襟首を正し、いつ受付に来てもいいように待ち構える。
すると、いつか見たピンクがかった灰色の髪をした可愛らしい女の子の姿が目に入ったの。
彼女の傍にいるあの生物……あれか、あれなのね。冒険者たちが騒いでいた理由は。
実力のない私でも一目見て分かるわ。
あれは……強い。
白と黒のモフモフした体躯はおよそ二メートルといったところでそれほど大きくはない。
だけど、威風堂々とした足取りにらんらんと光る黒い瞳……何より強者のオーラがあの生物から漂っている。
あれほどの生物は、憧れのトリアノン様のテイム生物――オルトロス以来だわ。
トリアノン様、ああ。凛としてお美しい。普段は鎧姿なのだけど、食事の際には兜を取るの。その時見える彼女の横顔のなんと麗しいことか。
できるなら、また冒険者ギルドにお食事を召し上がりに来ていたただきたいわ。
「おーい」
若い男性の声にハッとなり、声のした方へ目をやる。
もちろん、完璧な笑顔を作って。
「あら、可愛くない生き物さん。いたんですか?」
「さっきからずっと呼びかけているんだがな……」
白黒のモフモフ生物の上に乗っかっていたのは変な生物さんだった。
なあんだ。顔を作って損した。
「それで、何用でしょうか?」
「二つある」
「二つもですか……仕方ないですね。一つにできませんか?」
「……二つだ」
「冗談ですよ冗談。一つは分かってます。あなたを首にして、そちらのテイム生物さんに乗り換えるんですよね?」
「違うわ! 俺はそのままにパンダも登録してくれ」
変な生物さんはなかなかノリがいいのね。
「パンダ? その白黒の?」
「そうだ。もちろんマスターはコレット。二体以上でも登録できるんだよな?」
「はい。テイム可能でしたら何体でもいけますよ」
「おっし。コレット。あとは頼む。だああああ。パンダ! またエネルギー切れかよ」
変な生物さんは、ひらりとパンダから飛び降り懐から緑の葉っぱを出した。
どこから出したんでしょう? そんなことより、あの強い生物があの葉っぱを食べているのに驚きました。
あれって笹ですよね。一番のゴミだと言われる……でも、残念度はユーカリがトップと聞きます。
◇◇◇
「……はい。終わりました」
どおおんとお金の入った袋を積み上げたわ。
こんなお金、なかなかお目にかかれないわよ。
あ、女の子――コレットがよろけて倒れそう。
「ありがとう」
「可愛くない生物さん」
「なんだ?」
「パンダを勝手にあの辺に寝かせないでくださいね」
「お、悪い悪い」
そうなのよ。
パンダがでろーんと中央で寝っ転がっているものだから、冒険者たちが怖がって食事も摂ってくれないのよ。
変な生物さんはコレットのお尻をいやらしくさわさわして、立たせるとパンダに乗せて冒険者ギルドから去って行った。
パンダがいなくなった途端に残された冒険者たちは、パンダについて語り始める。
また、いつもの日常風景が戻ってきたわ。
さあ、まだまだお仕事が残っているわよ。頑張らなきゃ、ね!
ふあああ。
ムイの奴、「こんなんだから彼氏もできないのよ」とか言うけど、私は私、気ままにやっていこうと思っているの。
彼氏ができたからといって何か変わるわけでもないしねえ。
私は何のかんのでこの仕事が気に入っている。
冒険者さん達が強くなっていく様子を見たり、夢一杯の新人さんに内心「がんばれー」と言ったり、結構楽しいんだから。
そりゃ、時には大怪我を負った冒険者さんに顔が青ざめたりするけど。
でも、いろいろひっくるめて私はこの仕事が好きなんだなあと思う。
面白いことも多々あるしね。
この前だって、回復術師だか荷物持ちだかの可愛らしい感じの女の子が、パーティを抜けて独りぼっちになっていた。
もう冒険者を止めちゃうのかなあなんて勝手にハラハラしていたんだけど、ビックリしたことが起こったの。
鼻が大きい灰色のモフモフした変な生物を連れて、あの子はやって来た。
変な生物は喋る。
正直、ちょっとなあと思いつつもテイム登録を行ったの。
でもその後、ビックリしたわよ! だって、あの変な生物さんたら、ベノムウルフの牙を大量に持っていたんだもの!
あの変な生物、とっても変だけど、実は強テイム生物なのかもしれないわ。
でも、強テイム生物は強いテイマーじゃないとテイムできないはずなんだけど、不思議なこともあるものよね。
これだから受付はやめらないってものよ。
あの変な生物さんにちょっと素っ気ない態度をとっちゃったから、次はもうちょっと愛想よくしないと……反省反省。
いくら変だといっても、一応お客様だからね。あれ? テイム生物ってお客様扱いだっけ? 今度、ギルドマスターに聞いておかないと。
「お、おい」
「な、何もんだ……」
あれ?
入口の方が騒がしいわね。ひょっとして、Sランクの冒険者パーティでも来たのかな?
昼下がりの人が少ない時間帯なのに、ざわめく声が大きくなってくる。
これは、相当な大物が来たのね。
襟首を正し、いつ受付に来てもいいように待ち構える。
すると、いつか見たピンクがかった灰色の髪をした可愛らしい女の子の姿が目に入ったの。
彼女の傍にいるあの生物……あれか、あれなのね。冒険者たちが騒いでいた理由は。
実力のない私でも一目見て分かるわ。
あれは……強い。
白と黒のモフモフした体躯はおよそ二メートルといったところでそれほど大きくはない。
だけど、威風堂々とした足取りにらんらんと光る黒い瞳……何より強者のオーラがあの生物から漂っている。
あれほどの生物は、憧れのトリアノン様のテイム生物――オルトロス以来だわ。
トリアノン様、ああ。凛としてお美しい。普段は鎧姿なのだけど、食事の際には兜を取るの。その時見える彼女の横顔のなんと麗しいことか。
できるなら、また冒険者ギルドにお食事を召し上がりに来ていたただきたいわ。
「おーい」
若い男性の声にハッとなり、声のした方へ目をやる。
もちろん、完璧な笑顔を作って。
「あら、可愛くない生き物さん。いたんですか?」
「さっきからずっと呼びかけているんだがな……」
白黒のモフモフ生物の上に乗っかっていたのは変な生物さんだった。
なあんだ。顔を作って損した。
「それで、何用でしょうか?」
「二つある」
「二つもですか……仕方ないですね。一つにできませんか?」
「……二つだ」
「冗談ですよ冗談。一つは分かってます。あなたを首にして、そちらのテイム生物さんに乗り換えるんですよね?」
「違うわ! 俺はそのままにパンダも登録してくれ」
変な生物さんはなかなかノリがいいのね。
「パンダ? その白黒の?」
「そうだ。もちろんマスターはコレット。二体以上でも登録できるんだよな?」
「はい。テイム可能でしたら何体でもいけますよ」
「おっし。コレット。あとは頼む。だああああ。パンダ! またエネルギー切れかよ」
変な生物さんは、ひらりとパンダから飛び降り懐から緑の葉っぱを出した。
どこから出したんでしょう? そんなことより、あの強い生物があの葉っぱを食べているのに驚きました。
あれって笹ですよね。一番のゴミだと言われる……でも、残念度はユーカリがトップと聞きます。
◇◇◇
「……はい。終わりました」
どおおんとお金の入った袋を積み上げたわ。
こんなお金、なかなかお目にかかれないわよ。
あ、女の子――コレットがよろけて倒れそう。
「ありがとう」
「可愛くない生物さん」
「なんだ?」
「パンダを勝手にあの辺に寝かせないでくださいね」
「お、悪い悪い」
そうなのよ。
パンダがでろーんと中央で寝っ転がっているものだから、冒険者たちが怖がって食事も摂ってくれないのよ。
変な生物さんはコレットのお尻をいやらしくさわさわして、立たせるとパンダに乗せて冒険者ギルドから去って行った。
パンダがいなくなった途端に残された冒険者たちは、パンダについて語り始める。
また、いつもの日常風景が戻ってきたわ。
さあ、まだまだお仕事が残っているわよ。頑張らなきゃ、ね!
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