固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ

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第29話 急展開

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 昨日と同じようにボロロッカの食事処で待っていたら、血相を変えたリアナがパタパタとやってきた。
 どうも彼女の様子がおかしい。何かあったんだろうか。
 彼女を追うように他の三人も顔を見せる。
 
「誰か風邪でも引いたのかな?」

 リアナに問いかけるも静かに首を左右に振りギュッと唇を結ぶ。
 全員が来ているわけだし、風邪でぶっ倒れているってことはないわな。我ながら的外れ過ぎて恥ずかしい。

「リアナ様、まず探索者センターに行ってもらった方が良いんじゃないかの」
「そうですね、見て頂いた方が」

 ヘクトールとリアナが何やら囁き合っていたが、探索者センターに行けば青い顔をしている彼女の理由が分かるってことか。
 
 そんなわけでやって参りました探索者センターです。
 ザ・ワンの探索を始める前と帰還した後に必ず訪れる場所である。ソロの時は帰還時のみの訪問となるがね。
 パーティ登録とか必要ないもの。
 ん、何やら大きな紙が張り出してある。
 
『「解呪の書」を求む。報酬は弾む。クライン公爵』

 それに何だか探索者センターが騒然としているな。
 俺たちもちょうど出る時間だったので他の探索者たちもそろそろ出るか、という時間かぶりはもちろんある。
 朝の探索者センターはパーティ登録する探索者たちでごった返す。とはいえ、スタッフ側も探索者側も慣れたものでパーティ登録は流れ作業で進み、特に混乱は起きない。
 だがしかし、何だか今日は並びがなかなか進んで行かないような。
 原因は「新規登録者」が多数いたことだった。
 立派なマントと白銀の鎧に身を包んだ戦士……いや騎士かな? 騎士が多数新規登録しているようで列がなかなか進まない様子。
 張り出されている紙が原因だよなこれ。
 
「あの鎧姿の集団は騎士であってる?」
「いかにも。太陽に鷲の紋章は王国騎士、月にローズの紋章は公爵の騎士じゃな」
「そこに張り出している依頼関係で騎士たちも出張ってきたのかな」
「そうじゃな。高ランクの探索者には公爵の使者から直接依頼もきていると聞いておるの」

 ふうむ。公爵って王様の次に位の高い貴族だっけ。資金力も人脈もある公爵が「解呪の書」を求めるお触れを出した、と。
 騎士団の実力は分からないけど、解呪の書が手に入るという120階まで進むとなると結構な時間がかかるぞ。
 俄かに始まった「解呪の書」争奪戦。公爵自らとなると報酬も破格だろうから、120階以上に挑戦する探索者も続々と出てきそうだ。
 現状100階越えしている探索者はごくわずからしいけどね。

「移動したところで申し訳ありません。ここでは周囲の目もありますので、お部屋でお話しさせていただけませんか?」
「もちろん」

 リアナの誘いに即答し、再度ボロロッカの彼女らが借りている部屋へと向かう。
 
 部屋に入り、ギリアンから飲み物をもらった後、リアナが静かに語り始める。

「解呪の対象者は第一王女ロアーナ様です。これまで呪いのことは隠していたのですが、いつまでも隠しきれるものではなく、公爵の耳にまで届いたのでしょう」
「それで公爵が姫のために一肌脱いだんだな」
「……申し訳ありません。正直に申し上げます。呪いのことは貴族の間では既に知られていました。ですが、ロアーナ様が『私に』と周囲をお止めくださっていたのです」
「解呪の書が手に入るなら王女も元気になってバンザイなんじゃ? まさか公爵が解呪の書を手に入れても渡さない、ってことはないだろうし」
「嬉々としてロアーナ様へ渡すじゃろうな」

 言葉を詰まらせるリアナにかわりヘクトールが言葉を返す。
 「すいません」と前置きしてからお茶を飲んだリアナが続きを語る。
 体調がずっと回復しない第一王女ロアーナは不治の病「グリアルシア」に罹患していることが分かった。王宮魔術師、典医が治療を試みたが不治の病「グリアルシア」を治療することはできなかったのだという。衰弱していく姫に回復魔法をかける日々が続き、過去の文献を読み漁ったある王宮魔術師が「グリアルシア」は呪いの一種だと突き止める。そしてあらゆる呪いを解除できるという「解呪の書」を求めるに至った。
 いつまで第一王女の命がもつかも分からぬ状況だったため、王国の官吏たちは国内のあらゆる市場で「解呪の書」がないか調査する。
 しかし、「解呪の書」はザ・ワンの中だけにあるアイテムであり、過去の文献を調べる限り120階より深い階層で取得されたことがあるという情報だけが判明した。120階がどれほどのものか、は管理たちも理解していて王に相談を持ち掛ける。
 第一王女の命を最優先した王は「解呪の書」を持ってきた者にはどのような褒美をも取らそうと提示するも、第一王女本人が待ったをかけたのだ。
 わたくしの病なのです。「解呪の書」は必ずやわたくしの手の者が取って参ります、と。
 
「それでリアナたちが出向いたわけだ」
「はい、それなのに僅かな時間でこうなるとは。先日姉さまのところへ訪問したばかりですのに」
「姉さま……?」
「隠していてすいません。ロアーナ様は私の姉さまです。きっと私がとお約束し出立したのですが」

 本人の意思に反して動きがあったということは、彼女の意識が混濁しているか王が押し切ったかのどちらかか。
 いずれにしろ、急展開するような事情があったに違いない。
 急を要する事情であれば、誰でもいいから解呪の書を持っていくべきだよな。
 
「お触れが来たということはじゃな、その裏側も我らの耳に入ったのじゃよ」
「というのは?」

 リアナと交代しヘクトールが事情を説明してくれた。
 何がマズイのかこれだけじゃあ分かんないぞ。
 首を傾げる俺に向け今度はリアナが口を開く。

「公爵は野心家です。しかし国内で王に告ぐ権威と情報網、そして兵を抱えています」
「王も動いているだろうけど、公爵の方が手が早いのか。そうまでして王女を救いたいとなれば……」
「公爵が求めるのはロアーナ様との結婚です。そして、第一王女と結婚することは次代の王となること」
「王女が女王になる、わけじゃあないのね」

 貴族社会はよくわからん。しかし、公爵が王になると非常に困る事態になるようだった。
 なにより第一王女自身が公爵の人柄を信用しておらず、国にとってよろしくないと王も同じ考えを抱いている様子。
 だったら公爵にお願いなんぞしなきゃいいのに、とならないのが貴族社会の複雑なところか。
 彼らに先んじて「解呪の書」を取れればいいんだが……。 
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