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聞いて、これが私の声
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ステージへの階段をのぼる。
まだどよめきが広がっている様子だ。前代未聞の不祥事ともいえる出来事なのだ。観客たちも衝撃を受けている。
この混乱をおさめないと。
そのためには何が大事なのか。
私はステージの上へゆっくりと立つ。魔法のスポットライトがあてられて、熱を感じた。
迷いはない。
姿勢を整えて、リラックスして、息を吸う。
私は、私の声で。
放ったのは、ハイトーンボイス。
そう。
シルニアが挑んだ曲と同じ、最高難易度の曲。
ざわめきが止まり、伴奏が始まった。
淀みなく、止まりなく、そして、愛を持って。
取り戻した私の声。
でも今は泣いていられない。
示すんだ。ここで、聖女である証を!
伴奏が盛り上がり、いよいよサビへ入っていく。この超ハイトーンボイスは、歌い方を変えないといけない。私はすべての力を振り絞って超ハイトーンボイスを繰り出す。
この曲のすごいところは、この超ハイトーンボイス領域でもメロディアスに奏でないといけないところだ。
大丈夫。でも、大丈夫。私なら、歌いきれる!
私は全身に力を宿らせ、巡らせ声に変換する。
それに、喉が軽い。
負荷から解放されたからか、私は今までにないくらい声が出せそうだった。
その予感は的中する。
奇跡としか言えないような声が炸裂し、周囲をとどろかせる。
観客たちが一斉に息を呑んだ。
ただ歌声だけが響いていく。
「―—私が、志のままに」
最後の繊細な歌声を披露して、私は歌を終える。
最初は沈黙。
そして。
拍手の雨がやってきた。
次々と称賛の声が飛んでくる。
とたん、感動が押し寄せてきた。
そうだ。やりきったんだ、私、やりきれたんだ。歌えたんだ!
ぽろぽろと涙が出てくる。
けど、ここで泣き崩れるわけにもいかない。
私はぐっとこらえて前を向いてから、頭を下げた。
鳴りやまない拍手の中、ステージを降りるとベス様が出迎えてくれた。
「良くやったわ、ミル」
「ありがとうございます。ベス様のおかげです」
「そんなことないわ。私はただちょっと調整しただけよ。でもすごい度胸ね。あの状況で最高難易度の曲を選んで、しかも歌いきるなんて」
「ずっと練習してた曲でもありますから……」
「いや、本当にすごいわ。ミル。あなたこそ聖女よ」
ベル様は優しく微笑みながら、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
なんだろう。
今、全部が報われた気がする。
冷酷令嬢だなんて言われて育ってきた幼少時代。貴族の友達なんていなくて、一般市民とばかり遊んでいて、でも彼らも離れていって。
聖女としての才能が芽生えて、努力して。
やっと試験に出られると思ったら、声を奪われて。
びっくりするくらい絶望した。
でも、助けられた。
私はチャンスを与えられたんだ。
そして私は、そのチャンスをしっかり掴めたんだ。やりきったと思う。全力を、本当に全力を出し切れたと思う。
そう思うと嬉しくて、私は泣いてしまった。
一頻り泣いた後、ベス様が優しく声を書けてくれた。
「さぁ、もう一度ステージに。もうすぐ投票結果が分かるわ」
「……はいっ」
涙をしっかり拭いて、私はもう一度ステージに立つ。もちろん他の聖女候補生たちも。みんなに対して温かい拍手が送られた。
──シルニアはいないけれど。
すぐに喉の治療へ向かったんだろう。
すぐに司会の人の進行がはじまり、改めて一人ひとり紹介されて挨拶する。
歌の総合評価がその後に流れ、いよいよと聖女が決まる。
楽隊のドラムロールが鳴り、魔法の光が一時的に消される。どき、と胸が高鳴った。
一番の緊張の瞬間だ。
「それでは、今期の聖女は……──」
どくん、どくん、どくん、どくん。
「ミル・ウィンヒルバルドさんですっ!」
──わぁぁぁっ、と、歓声が沸いた。
まだどよめきが広がっている様子だ。前代未聞の不祥事ともいえる出来事なのだ。観客たちも衝撃を受けている。
この混乱をおさめないと。
そのためには何が大事なのか。
私はステージの上へゆっくりと立つ。魔法のスポットライトがあてられて、熱を感じた。
迷いはない。
姿勢を整えて、リラックスして、息を吸う。
私は、私の声で。
放ったのは、ハイトーンボイス。
そう。
シルニアが挑んだ曲と同じ、最高難易度の曲。
ざわめきが止まり、伴奏が始まった。
淀みなく、止まりなく、そして、愛を持って。
取り戻した私の声。
でも今は泣いていられない。
示すんだ。ここで、聖女である証を!
伴奏が盛り上がり、いよいよサビへ入っていく。この超ハイトーンボイスは、歌い方を変えないといけない。私はすべての力を振り絞って超ハイトーンボイスを繰り出す。
この曲のすごいところは、この超ハイトーンボイス領域でもメロディアスに奏でないといけないところだ。
大丈夫。でも、大丈夫。私なら、歌いきれる!
私は全身に力を宿らせ、巡らせ声に変換する。
それに、喉が軽い。
負荷から解放されたからか、私は今までにないくらい声が出せそうだった。
その予感は的中する。
奇跡としか言えないような声が炸裂し、周囲をとどろかせる。
観客たちが一斉に息を呑んだ。
ただ歌声だけが響いていく。
「―—私が、志のままに」
最後の繊細な歌声を披露して、私は歌を終える。
最初は沈黙。
そして。
拍手の雨がやってきた。
次々と称賛の声が飛んでくる。
とたん、感動が押し寄せてきた。
そうだ。やりきったんだ、私、やりきれたんだ。歌えたんだ!
ぽろぽろと涙が出てくる。
けど、ここで泣き崩れるわけにもいかない。
私はぐっとこらえて前を向いてから、頭を下げた。
鳴りやまない拍手の中、ステージを降りるとベス様が出迎えてくれた。
「良くやったわ、ミル」
「ありがとうございます。ベス様のおかげです」
「そんなことないわ。私はただちょっと調整しただけよ。でもすごい度胸ね。あの状況で最高難易度の曲を選んで、しかも歌いきるなんて」
「ずっと練習してた曲でもありますから……」
「いや、本当にすごいわ。ミル。あなたこそ聖女よ」
ベル様は優しく微笑みながら、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
なんだろう。
今、全部が報われた気がする。
冷酷令嬢だなんて言われて育ってきた幼少時代。貴族の友達なんていなくて、一般市民とばかり遊んでいて、でも彼らも離れていって。
聖女としての才能が芽生えて、努力して。
やっと試験に出られると思ったら、声を奪われて。
びっくりするくらい絶望した。
でも、助けられた。
私はチャンスを与えられたんだ。
そして私は、そのチャンスをしっかり掴めたんだ。やりきったと思う。全力を、本当に全力を出し切れたと思う。
そう思うと嬉しくて、私は泣いてしまった。
一頻り泣いた後、ベス様が優しく声を書けてくれた。
「さぁ、もう一度ステージに。もうすぐ投票結果が分かるわ」
「……はいっ」
涙をしっかり拭いて、私はもう一度ステージに立つ。もちろん他の聖女候補生たちも。みんなに対して温かい拍手が送られた。
──シルニアはいないけれど。
すぐに喉の治療へ向かったんだろう。
すぐに司会の人の進行がはじまり、改めて一人ひとり紹介されて挨拶する。
歌の総合評価がその後に流れ、いよいよと聖女が決まる。
楽隊のドラムロールが鳴り、魔法の光が一時的に消される。どき、と胸が高鳴った。
一番の緊張の瞬間だ。
「それでは、今期の聖女は……──」
どくん、どくん、どくん、どくん。
「ミル・ウィンヒルバルドさんですっ!」
──わぁぁぁっ、と、歓声が沸いた。
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