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そして……
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王国初の姫将軍の誕生。
これは、世間を大いに賑わせた。事前に殿下が色々と手を回してくれていたようで、私の活躍は伝聞され、さらに殿下を私が救出したエピソードは英雄詩(サーガ)にもなっていて、早くも吟遊詩人たちが広め始めていた。
結果、私は多くの人たちから受け入れられた。
正直、武門の貴族であるウォンティーヌ家であるのも手伝ってると思う。
古くからの貴族で、ずっと貢献してきた家でもあるから。
かくして、私は殿下と再び相まみえ、忙しい日々を送ることになる。
婚約が決まったとはいえ、結婚式を執り行うまでのプロセスが長い。国王への謁見だけじゃない。社交パーティにも何度も足を運ぶことになった。そこに将軍の就任式なんかも重なったから、目が回る忙しさだった。
ようやくひと段落できたのは、発表から三カ月もたった時だ。
「さすがに……疲れた……」
さすが王族が住まう屋敷だけあって、寝具は別格に心地良い。
はしたないと分かっていても、お風呂上りの私はベッドへ倒れこむように寝ころんだ。緊張が弛緩して、ようやくリラックスできる。
このまま眠ろうか、と思ったタイミングで、ノックがやってきた。
「入るよ」
ジェイクだ。
私は慌てて飛び起きる。なんとか彼が入ってくるまでにベッドに腰かけて最低限、だらしないと思われないように髪を整える。
「やぁ、アイシャ」
「こんばんは、ジェイク」
ジェイクに会釈をすると、彼は幸せそうに微笑んでから私の隣に座り込んだ。
「ようやくひと段落ついたね」
ジェイクも相当疲れていたらしく、弱音に近いため息を漏らした。
彼も彼で王族としての公務をこなしつつ、色々と準備しているのだ。下手しなくても私より忙しいかもしれない。
「ええ。やっと将軍の就任式も終わったから。明日からは軍人として、働きますけど」
「そう気張らないでね。まだ慣れてないんだから」
「ありがとう。でも大丈夫。基本は書類処理みたいだし」
ちなみに王国には他にも二人、将軍の役職を持つ貴族がいる。兵器部門と、兵站部門だ。どちらも大事な部門である。ちなみに私は人事担当だ。
つまり、有事の際は前線指揮を執ることになるし、管理もしなければならない。通常時は採用や懲罰関係も含めた人事採決、人員割り振り、諜報部からの情報による情勢の調査、重大な魔物討伐や盗賊退治の派兵可決などが仕事だ。
そこに軍人としての訓練も入ってくるので、絶対に暇じゃない。
けど、任命された以上はやり遂げないと。
せっかくジェイクが推挙してくれたんだから。恥じない様にしないと。
「本当に強いね、君は」
「え?」
「職務を全うしようとするその姿勢。ボクも見習わないと」
「ジェイクも立派にやってると思うけれど」
「まだまだだよ。でも、君といると、頑張れる気がするな」
「ジェイク……」
「と、いうこと、で、さ?」
もじもじしながら、ジェイクは私の手に触れてくる。
「やっとひと段落したわけじゃない?」
「ええ、そう、ね?」
「ボクたち。まだ、身体を重ねられてないじゃない?」
「まぁ、本当に忙しかったし、って……きゃっ」
本当にやさしく、私は押し倒された。目の前には、顔を赤くさせたジェイク。
なるほど、そういうことだったのか。
きっとジェイクはずっとずっと我慢していたんだろう。落ち着けるこの日まで。
「アイシャ。ボクは本当に君を愛している」
「私もよ、ジェイク」
ささやかれ、ささやき返す。
あつい唇を重ねるまで、そう時間はかからなかった。
これにて完結です。
ありがとうございました。
明日より新連載始めます! どうぞ応援よろしくお願いします。
これは、世間を大いに賑わせた。事前に殿下が色々と手を回してくれていたようで、私の活躍は伝聞され、さらに殿下を私が救出したエピソードは英雄詩(サーガ)にもなっていて、早くも吟遊詩人たちが広め始めていた。
結果、私は多くの人たちから受け入れられた。
正直、武門の貴族であるウォンティーヌ家であるのも手伝ってると思う。
古くからの貴族で、ずっと貢献してきた家でもあるから。
かくして、私は殿下と再び相まみえ、忙しい日々を送ることになる。
婚約が決まったとはいえ、結婚式を執り行うまでのプロセスが長い。国王への謁見だけじゃない。社交パーティにも何度も足を運ぶことになった。そこに将軍の就任式なんかも重なったから、目が回る忙しさだった。
ようやくひと段落できたのは、発表から三カ月もたった時だ。
「さすがに……疲れた……」
さすが王族が住まう屋敷だけあって、寝具は別格に心地良い。
はしたないと分かっていても、お風呂上りの私はベッドへ倒れこむように寝ころんだ。緊張が弛緩して、ようやくリラックスできる。
このまま眠ろうか、と思ったタイミングで、ノックがやってきた。
「入るよ」
ジェイクだ。
私は慌てて飛び起きる。なんとか彼が入ってくるまでにベッドに腰かけて最低限、だらしないと思われないように髪を整える。
「やぁ、アイシャ」
「こんばんは、ジェイク」
ジェイクに会釈をすると、彼は幸せそうに微笑んでから私の隣に座り込んだ。
「ようやくひと段落ついたね」
ジェイクも相当疲れていたらしく、弱音に近いため息を漏らした。
彼も彼で王族としての公務をこなしつつ、色々と準備しているのだ。下手しなくても私より忙しいかもしれない。
「ええ。やっと将軍の就任式も終わったから。明日からは軍人として、働きますけど」
「そう気張らないでね。まだ慣れてないんだから」
「ありがとう。でも大丈夫。基本は書類処理みたいだし」
ちなみに王国には他にも二人、将軍の役職を持つ貴族がいる。兵器部門と、兵站部門だ。どちらも大事な部門である。ちなみに私は人事担当だ。
つまり、有事の際は前線指揮を執ることになるし、管理もしなければならない。通常時は採用や懲罰関係も含めた人事採決、人員割り振り、諜報部からの情報による情勢の調査、重大な魔物討伐や盗賊退治の派兵可決などが仕事だ。
そこに軍人としての訓練も入ってくるので、絶対に暇じゃない。
けど、任命された以上はやり遂げないと。
せっかくジェイクが推挙してくれたんだから。恥じない様にしないと。
「本当に強いね、君は」
「え?」
「職務を全うしようとするその姿勢。ボクも見習わないと」
「ジェイクも立派にやってると思うけれど」
「まだまだだよ。でも、君といると、頑張れる気がするな」
「ジェイク……」
「と、いうこと、で、さ?」
もじもじしながら、ジェイクは私の手に触れてくる。
「やっとひと段落したわけじゃない?」
「ええ、そう、ね?」
「ボクたち。まだ、身体を重ねられてないじゃない?」
「まぁ、本当に忙しかったし、って……きゃっ」
本当にやさしく、私は押し倒された。目の前には、顔を赤くさせたジェイク。
なるほど、そういうことだったのか。
きっとジェイクはずっとずっと我慢していたんだろう。落ち着けるこの日まで。
「アイシャ。ボクは本当に君を愛している」
「私もよ、ジェイク」
ささやかれ、ささやき返す。
あつい唇を重ねるまで、そう時間はかからなかった。
これにて完結です。
ありがとうございました。
明日より新連載始めます! どうぞ応援よろしくお願いします。
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