8 / 12
拳の説得
しおりを挟む
「というわけで宣誓通りの先制怒りの一撃ぃっ!」
「ほぎゃあああああ――――っ!」
私の怒りを感じたか、逃げようと立ち上がったのが運のつき!
一瞬で踏み込んで、私は国王の懐に入ると同時に身体を半回転。拳を肝臓がある脇腹に突き刺す!
ずどん、とイイ音。
国王は身をよじって悲鳴を上げ、その場でへたりこんだ。
「お、お父様――――っ!?」
ベスが悲鳴を上げる。
だがそんなものは無視だ。何より、イイ音はしたけど、ちゃんと手加減はしてある。もがき苦しむくらい痛いはずはない。
現に、国王は驚いて目を白黒させているが、苦痛の様子はそこまでない。
「あのね?」
私はずい、と一歩前に出る。
雰囲気に気おされたか、国王がたじろいだ。
「誰が、下僕だって? あ?」
「な、ななな、なにをっ! 貴様に決まっているであろう! 貴様は、貴様だけは我輩の血を引いていないのだぞ!」
「だから?」
私は平然と言い返す。
「え? 何。ちょっと聞くんだけど、あんたの血は神様の血か何か引いてるの? 世界で一番高潔だと思ってるの? え? 小さい王国でしかないのに?」
「な、貴様っ!」
「それに何より、その論法でいくなら、王妃様はどうなるのよ。王妃様も他人であり、あんたの血は引いてないわよね。だったら王妃様も下僕なワケ? そしてその下僕と作ったのが旦那とあのベスなワケ? それってとっても卑しいことになるんだけど大丈夫?」
矢継ぎ早に言い倒すと、国王は顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせた。
そもそも私に舌戦を挑んでくる方が間違いだ。
まぁ、物理的に戦い挑んでくる方が間違いだけど。
とにかく。
もう遠慮はしない。
「大体にして今回の一連の事件も誰のせいでこうなって誰のせいでここまで追い詰められてその上でどっちが正しいことをしてると思ってのよ、あん?」
「そ、それはっ」
「こっちは正しい手続きを経て方々にお願いしてやっと国家を建て直そうとしてるんだよ。ふきたくもないケツをふいてさ」
「貴様らの仕事であろう、それはっ!」
「おう、せやな」
私は国王の襟首を掴んで持ち上げる。ぐいっと。
「だから改革してるっつってんじゃん。無駄な支出をなくすって言ってるんじゃん。不要なものを処分するって言ってるんじゃん。国家を運営していく上で一時的に金も必要だから工面してるって言ってんじゃん」
「ぐうう」
「っていうかさ、本来それはおのれが指示することでしょ? 国王だからって偉そうにふんぞり返ってればいいってもんじゃないよね? 偉そうにするのが仕事なんだったらサルでもできるわっ!」
びたーんっ!
と私は国王を地面に投げつける。「あひょいっ!」と悲鳴が聞こえた。ここらへんは親子を感じる。なんでだろう。まぁいいか。
「そもそも国家がここまで傾いたのはおのれがアホ娘のワガママを咎めることなくワガママさせ放題何させ放題したのが原因だろうがっ!」
「な、なんてことをっ! 娘を可愛がって何が悪い!」
「可愛がることは悪くないわ。ただワガママさせ放題にしておくのは悪いっ!」
私はずばっと言い切り、人差し指をつきつけた。
「だいたい愛娘だったらひん曲がらないように大事にまっすぐ育てなさいよ! 民のためを思い、王国のために働く! それが全うな王族ってもんでしょうよ! なのに何? 大国でもないし大した力があるわけでもないのに大陸でも有数な王国と同じくらいの贅沢をして! 身を弁えろ身をっ! あんたらは王国と言う国家の規模の中じゃ小さくて貧乏なんだよっ!!」
「き、きさまぁああっ! 人が気にしていることを!」
「うるさいわ人に言われたくないことをずけずけと上から目線でぶちまけるオッサンに言われたくないわっ!」
怒鳴る国王を上回る声量で私は圧倒する。
そして国王の身体にのっかってマウントを取った。そのまま何発かビンタを見舞う。
「っていうか! おのれの躾が失敗した結果で国民にめっちゃ迷惑かけててしかも国家存亡の危機だっつってんのにまだその元凶である娘を庇うワケ!? それって本当に娘のことを可愛がってるっていえる!? 言っとくけどあんたがしてることは可愛いからってその場でよしよししてるだけだからね!? 本格的な面倒も世話もしてないんだからね!? 子育てには教育が必要で、時には叱らないといけないの!」
「ぬうっ!?」
「甘いだけじゃ人間、ちゃんと育たないのよ」
現実論を叩きつけると、国王が唸った。妙に脂汗かいてるのは何でだろう。まぁいいや。今はお説教タイムである。
「己の間違いもただせないんじゃ、国王としては失格の極みね!」
「き、貴様っ、いくらなんでも不敬だぞ!」
国王が泣きそうになりながらがなってくる。
いや威勢も威厳もあったもんじゃねぇ。
「はぁぁあん? 不敬? たったついさっき女子どころか人間としての尊厳を踏みにじる発言したオッサンがいえたこと?」
「お、おっ……!?」
「大体不敬だって言うんなら不敬だって思わせるくらいのことをしなさいよ。ハッキリ言うけど、今のあんたは単なる愚王よ愚王。それも歴史に悪いほうで名を残すくらいに」
「き、貴様ぁあああっ! 我輩をとことん侮辱しおって!」
逆上しまくった国王は吼えると、椅子にたてかけてあった剣を抜いた。単なる儀礼用の装飾過多の剣だが、切れ味はありそうだった。
「成敗してくれるっ!」
「成敗するのはこっちだっつうのっ!」
私はドレスのドレープに隠していた剣を抜き放ち、一瞬で国王の剣をはたき落とした。ぱつん、と音を立てて剣が地面を転がる。
一瞬のできごとに、国王の目が点になった。
そしてその顔面に、私は拳を叩き込んだ。
今度はちょっと本気。鼻っ柱に一撃食らった国王は、鼻血を噴出させながらのけぞった。
「お、お父様――――っ!?」
またもやあがる悲鳴。
「い、いい加減にしなさいよ、あんたっ!」
ベスがたえかねたか、私に吼えてくる。
「お母様に言いつけてやるんだから! あんたもこれでおしまいよ!」
いや他人任せかーい。
私は内心でツッコミを入れたのだった。
「ほぎゃあああああ――――っ!」
私の怒りを感じたか、逃げようと立ち上がったのが運のつき!
一瞬で踏み込んで、私は国王の懐に入ると同時に身体を半回転。拳を肝臓がある脇腹に突き刺す!
ずどん、とイイ音。
国王は身をよじって悲鳴を上げ、その場でへたりこんだ。
「お、お父様――――っ!?」
ベスが悲鳴を上げる。
だがそんなものは無視だ。何より、イイ音はしたけど、ちゃんと手加減はしてある。もがき苦しむくらい痛いはずはない。
現に、国王は驚いて目を白黒させているが、苦痛の様子はそこまでない。
「あのね?」
私はずい、と一歩前に出る。
雰囲気に気おされたか、国王がたじろいだ。
「誰が、下僕だって? あ?」
「な、ななな、なにをっ! 貴様に決まっているであろう! 貴様は、貴様だけは我輩の血を引いていないのだぞ!」
「だから?」
私は平然と言い返す。
「え? 何。ちょっと聞くんだけど、あんたの血は神様の血か何か引いてるの? 世界で一番高潔だと思ってるの? え? 小さい王国でしかないのに?」
「な、貴様っ!」
「それに何より、その論法でいくなら、王妃様はどうなるのよ。王妃様も他人であり、あんたの血は引いてないわよね。だったら王妃様も下僕なワケ? そしてその下僕と作ったのが旦那とあのベスなワケ? それってとっても卑しいことになるんだけど大丈夫?」
矢継ぎ早に言い倒すと、国王は顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせた。
そもそも私に舌戦を挑んでくる方が間違いだ。
まぁ、物理的に戦い挑んでくる方が間違いだけど。
とにかく。
もう遠慮はしない。
「大体にして今回の一連の事件も誰のせいでこうなって誰のせいでここまで追い詰められてその上でどっちが正しいことをしてると思ってのよ、あん?」
「そ、それはっ」
「こっちは正しい手続きを経て方々にお願いしてやっと国家を建て直そうとしてるんだよ。ふきたくもないケツをふいてさ」
「貴様らの仕事であろう、それはっ!」
「おう、せやな」
私は国王の襟首を掴んで持ち上げる。ぐいっと。
「だから改革してるっつってんじゃん。無駄な支出をなくすって言ってるんじゃん。不要なものを処分するって言ってるんじゃん。国家を運営していく上で一時的に金も必要だから工面してるって言ってんじゃん」
「ぐうう」
「っていうかさ、本来それはおのれが指示することでしょ? 国王だからって偉そうにふんぞり返ってればいいってもんじゃないよね? 偉そうにするのが仕事なんだったらサルでもできるわっ!」
びたーんっ!
と私は国王を地面に投げつける。「あひょいっ!」と悲鳴が聞こえた。ここらへんは親子を感じる。なんでだろう。まぁいいか。
「そもそも国家がここまで傾いたのはおのれがアホ娘のワガママを咎めることなくワガママさせ放題何させ放題したのが原因だろうがっ!」
「な、なんてことをっ! 娘を可愛がって何が悪い!」
「可愛がることは悪くないわ。ただワガママさせ放題にしておくのは悪いっ!」
私はずばっと言い切り、人差し指をつきつけた。
「だいたい愛娘だったらひん曲がらないように大事にまっすぐ育てなさいよ! 民のためを思い、王国のために働く! それが全うな王族ってもんでしょうよ! なのに何? 大国でもないし大した力があるわけでもないのに大陸でも有数な王国と同じくらいの贅沢をして! 身を弁えろ身をっ! あんたらは王国と言う国家の規模の中じゃ小さくて貧乏なんだよっ!!」
「き、きさまぁああっ! 人が気にしていることを!」
「うるさいわ人に言われたくないことをずけずけと上から目線でぶちまけるオッサンに言われたくないわっ!」
怒鳴る国王を上回る声量で私は圧倒する。
そして国王の身体にのっかってマウントを取った。そのまま何発かビンタを見舞う。
「っていうか! おのれの躾が失敗した結果で国民にめっちゃ迷惑かけててしかも国家存亡の危機だっつってんのにまだその元凶である娘を庇うワケ!? それって本当に娘のことを可愛がってるっていえる!? 言っとくけどあんたがしてることは可愛いからってその場でよしよししてるだけだからね!? 本格的な面倒も世話もしてないんだからね!? 子育てには教育が必要で、時には叱らないといけないの!」
「ぬうっ!?」
「甘いだけじゃ人間、ちゃんと育たないのよ」
現実論を叩きつけると、国王が唸った。妙に脂汗かいてるのは何でだろう。まぁいいや。今はお説教タイムである。
「己の間違いもただせないんじゃ、国王としては失格の極みね!」
「き、貴様っ、いくらなんでも不敬だぞ!」
国王が泣きそうになりながらがなってくる。
いや威勢も威厳もあったもんじゃねぇ。
「はぁぁあん? 不敬? たったついさっき女子どころか人間としての尊厳を踏みにじる発言したオッサンがいえたこと?」
「お、おっ……!?」
「大体不敬だって言うんなら不敬だって思わせるくらいのことをしなさいよ。ハッキリ言うけど、今のあんたは単なる愚王よ愚王。それも歴史に悪いほうで名を残すくらいに」
「き、貴様ぁあああっ! 我輩をとことん侮辱しおって!」
逆上しまくった国王は吼えると、椅子にたてかけてあった剣を抜いた。単なる儀礼用の装飾過多の剣だが、切れ味はありそうだった。
「成敗してくれるっ!」
「成敗するのはこっちだっつうのっ!」
私はドレスのドレープに隠していた剣を抜き放ち、一瞬で国王の剣をはたき落とした。ぱつん、と音を立てて剣が地面を転がる。
一瞬のできごとに、国王の目が点になった。
そしてその顔面に、私は拳を叩き込んだ。
今度はちょっと本気。鼻っ柱に一撃食らった国王は、鼻血を噴出させながらのけぞった。
「お、お父様――――っ!?」
またもやあがる悲鳴。
「い、いい加減にしなさいよ、あんたっ!」
ベスがたえかねたか、私に吼えてくる。
「お母様に言いつけてやるんだから! あんたもこれでおしまいよ!」
いや他人任せかーい。
私は内心でツッコミを入れたのだった。
17
あなたにおすすめの小説
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
【完結】1王妃は、幸せになれる?
華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。
側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。
ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。
そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。
王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?
【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが
ユユ
恋愛
10歳の時に婚約した彼は
今 更私に婚約破棄を告げる。
ふ〜ん。
いいわ。破棄ね。
喜んで破棄を受け入れる令嬢は
本来の姿を取り戻す。
* 作り話です。
* 完結済みの作品を一話ずつ掲載します。
* 暇つぶしにどうぞ。
私の事を婚約破棄した後、すぐに破滅してしまわれた元旦那様のお話
睡蓮
恋愛
サーシャとの婚約関係を、彼女の事を思っての事だと言って破棄することを宣言したクライン。うれしそうな雰囲気で婚約破棄を実現した彼であったものの、その先で結ばれた新たな婚約者との関係は全くうまく行かず、ある理由からすぐに破滅を迎えてしまう事に…。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
さよなら、悪女に夢中な王子様〜婚約破棄された令嬢は、真の聖女として平和な学園生活を謳歌する〜
平山和人
恋愛
公爵令嬢アイリス・ヴェスペリアは、婚約者である第二王子レオンハルトから、王女のエステルのために理不尽な糾弾を受け、婚約破棄と社交界からの追放を言い渡される。
心身を蝕まれ憔悴しきったその時、アイリスは前世の記憶と、自らの家系が代々受け継いできた『浄化の聖女』の真の力を覚醒させる。自分が陥れられた原因が、エステルの持つ邪悪な魔力に触発されたレオンハルトの歪んだ欲望だったことを知ったアイリスは、力を隠し、追放先の辺境の学園へ進学。
そこで出会ったのは、学園の異端児でありながら、彼女の真の力を見抜く魔術師クライヴと、彼女の過去を知り静かに見守る優秀な生徒会長アシェル。
一方、アイリスを失った王都では、エステルの影響力が増し、国政が混乱を極め始める。アイリスは、愛と権力を失った代わりに手に入れた静かな幸せと、聖女としての使命の間で揺れ動く。
これは、真実の愛と自己肯定を見つけた令嬢が、元婚約者の愚かさに裁きを下し、やがて来る国の危機を救うまでの物語。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる