義妹からの嫌がらせで悪役令嬢に仕立て上げられそうになった挙句、旦那からモラハラ受けたのでブチギレます。~姫鬼神の夫婦改善&王国再建記~

しろいるか

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王妃襲来警報!

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 そんな全方位非公式で良かった会談を終えてから一ヶ月。
 私と旦那主導のもと、改革は一気に進んだ。

 ベスの私物は全部売り払った。かなりの高値で売れた。

 どれくらいかと言うと、オークションへは二週間にもかけて出品したのだけれど、伝説とまで言われるくらいに盛り上がった二週間になった。
 いやー、鑑定してもらった時から割とすごい金額になると思ってたけど。さすがオークション。値段が上振れしまくってとんでもないことになった。

 これだけのお金があれば、たっぷりと公共事業に投資できる。

 今までの重税は、国民に恐ろしいダメージを与え続けていた。税制を撤廃しただけでは戻らないのだ。その損失を還元するために、私と旦那は次々と政策を打ち出していく。
 道の整備や開拓といった公共事業、騎士団や役人の再編、給与の見直し、土壌改良などなど。

 動物園もその一つに数えられ、目玉になっている。

 早くも隣国には噂が伝わっていて、観光客も押し寄せてくる気配だった。
 さらに、レジスタンス組織の解体も必須だった。
 重税を撤廃した時から、彼らには存在意義が薄れてしまっている。しかし、一度あげた旗は中々降ろせないもので、こじれると極派閥になってしまう。最悪の場合、テロ組織にもなりえた。

 さすがに治安上よろしくない。

 かといって武力で抑えるには理由がない。
 ということで、穏便な話し合いに持ち込むことにした。ここで活躍したのが旦那である。見た目からして大人しくて誠実そうで、しかも話し方も穏やか。且つ、第一王子という次期国王という立場は非常に効果的だった。
 ほとんどの場合、旦那が穏やかに話を聞き、改善案を伝え、喧伝及び約束することで彼らは解散していった。

 もっとも、中には譲らない方々もいて、私の出番も来たけど。

 でもまぁそれはごくごく一部の一部。旦那はよくやってくれている。
 国王も、改革で忙しくなった公務に精力的だ。
 ベスだけは引きこもっているが。
 とりあえず悪さしないのであれば放置である。ぶっちゃけ大人しくしてくれているだけで御の字だ。

 何もかもがうまく回り始めた。

 私と旦那の関係も極めて良好だ。以前にもまして、私に愛の言葉を堂々と言ってくれるようになったし、褒めてくれるようになった。
 おかげで私の体調もうなぎのぼりに復活である。

 いや、元から旦那はちゃんと愛を示してくれる人だったんだけど。

 この調子なら、近々、本格的に子どものことも考えられるかもしれない。
 そんな矢先のことだ。
 ある一通の手紙が、王室に激震を呼ぶ。

「た、たたたたたたたた、たいへんだ」

 またもや非公式に、という理由で国王の私室に、私と旦那は呼び出された。ベスはいない。呼んだかもしれないけど、出てくることはないだろう。
 何より私と顔を合わせたくないはずだし。
 いや、っていうか、国王の動揺っぷりがすごい。

「どうされたんですか、冗談抜きで顔色悪いですよ? お疲れがたまってたりしますか? 公務を休んで、医者を呼びますか?」

 本気で心配しながら進言するが、国王は震えながら頭を振るばかりだ。

「リースだ。リースが帰ってくる……!」

 リース?
 ああ、王妃様か!

 久しぶりに聞いたから思い出すのに時間が少し必要だった。

 王妃様。
 結婚式の時に一度だけ会話したことがある上品な淑女だ。
 かなりのやり手で、隣国との折衝の全てを担っている超有能外交官である。そのためずっと色んな国を渡り歩いていて、留守にしている。

 ここまで傾いた王国に手が出されなかったのは、ひとえに彼女のおかげである。

 定期的な手紙のやり取りはしているはずで、こちら側の現状も知っているはずだった。

「王妃様がお戻りになられるのですか? それなら準備をしないといけませんね、確かに」
「それもそうだが、そうではない、そうではないのだ……」

 今までにない深刻な表情で、国王は脂汗をだらだら流す。
 おおう、追い詰められた時の旦那そのものやん。

「わしは、わしは殺されるかもしれん……っ!」
「いきなり物騒ですね。私がいうのもなんですけど。どうしたんですか」
「リースが激怒しておるのだ」

 国王はがたがた震えながら言った。

「激怒って、何があったんですか?」

 素直に聞く。
 もしかしたら浮気がバレた、とかわかりやすい理由かもしれないが、国王は愛妻家で知られていて、そのような気配は一切ない。女である私でさえ断言できるくらいだ。

 なので、そんな不貞を働いているとは思えない。

 何より、ここ最近は本当に公務へ励んでいるので、そんな余裕もないだろう。

「分からん。だが、手紙では激怒しているのだ」

 いいながら国王は手紙を差し出してくる。
 私信も含まれている可能性があって、読んでいいか分からなかったが、とりあえず受け取る。
 丁寧に折りたたまれた手紙を開けると、一言。達筆で。

 《覚悟しろ》

 とだけ。

「ええええ……怖っ」

 私は思わず本音をこぼしてしまった。
 いやだって、達筆なのに、いや、達筆だからこそ激怒が伝わってくる。文字がありありと活き活きとブチギレているのである。
 これは確かに怖い。

「身に覚えなどさっぱりない。なのに、なぜっ……」
「ベスじゃないのか?」

 うろたえる国王に、旦那が進言した。

「お母様に言いつけてやるって叫んでたし、あれから顔も見せないし」
「それだっ!」
「なるほどー。一ヶ月くらいかけて、あれこれ考えまくった逆恨みたっぷりの手紙を出したってわけね。それで王妃様が怒った、と」

 何を書いたか分からないが、あることないことどころか、ないことだらけをでっち上げて自分がさも被害者かのように訴えたのだろう。
 もし真に受けていたら、怒るのかもしれない。

 まったく。

 大人しくしてると思ったら、こういうことしかけてくるか。
 ともあれ、ベスにとっては最後の切り札でもあるのだろう。ここをきっちり制圧すれば、いよいよ大人しくできるはずだ。

「仕方ありませんね。お戻りになられたら、お話をしましょう」
「おお、そうしてくれるか……」

 どんだけ王妃様に弱いんだ、この国王は。いや旦那もそうか。旦那も私には弱い。

「問題はいつ戻ってくるか、だが……」
「もう戻ってきましたよ、あなた」
「おう、そうか、戻ってきたか……えっ」

 国王が完全に石化した。

「ほぎゃああああああ――――っ!!」

 そして悲鳴を上げた。
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