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6章

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 昔を懐かしみ遠くを見る俺をツヴァイが鼻で笑いほら見ろと言いたげな顔でククスのお父さんを見る。


「はぁー…これがこの国の宰相とは……先が思いやられますね…」

「さっきから失礼な奴だな。
 きちんとこなしているだろ?」

ね…
 私が言っているのは人間性の問題ですよ。」

「フッ知ったことか。
 誰かさんたちのように陰で悪事を働いてるわけでもあるまいし、文句を言われる筋合いはない。」

「知らない人が聞けば私が悪事を働いてるみたいな言い方止めてもらえませんかね?」

「やましいことがないなら別にいいだろ。」

「いえ、困ります。
 副団長の私にそんな疑いがかけられれば迷惑を被るのはうちの団員です。
 ですのでそこは絶対に曲げられません。」

「あのー…僕はそろそろお暇してもよろしいでしょうか…?」

「いいわけがないだろ。」


 熱くなる2人に俺がいる必要性が感じられず、帰りたいと提案するがツヴァイはまだ俺を帰す気はないようだ。
 説明は終わったのに…


「終わっただろ?
 お前は出てけ。」

「いーえ、あなたがギルフォード君に変なことしないか見張らせてもらいます。」

「チッ…」


 酷い言われようだが今ツヴァイ、舌打ちした⁉︎
 まだ何かするつもりだったのか⁉︎


「はぁー…とりあえず座れ。」

「…失礼します。」


 テーブルを挟んで2名用のソファーが2つ、1人用のソファーが1つ置いてある応接用のスペースのソファーに腰掛けるククスのお父さんとツヴァイに促され、ククスのお父さんの前のソファーに腰掛ける。
 これから長い話になるのだろうか?
 そして俺はいったいいつになったら帰れるのだろう?


「ギルフォード、昨日聖獣の件宣言していたな。」

「…はい。
 その件ですが…」

「なんだ?
 もう勝手に連れてきた、なんて言わないだろうな?」

「それはありません。
 ただちょっと…僕も熱くなりすぎて本質が見抜けていなかったようです……」


 正直、少し落ち込んでしまう。
 動物のこととなると周りが見えなくなる…
 俺の悪い癖だ。
 もっとよく見て考えればすぐにわかるはずのことだった。
 反省しなくちゃな…


「どういうことだ?」

「保護の必要はなさそうです。
 生後1日で走り回り2日で空を飛び3日で魔法を使いました。
 森には精霊たちもいますし、早々に危害を加えられることはないと考えます。」

「ほぅ…」

「それにしばらくはフォードが森へ様子を見に行く予定です。
 そこで魔法や防御、回避など教え鍛え上げるつもりをしています。」

「フッ…いいだろう。
 そういうことなら任せてやる。」

「ありがとうございます。」


 連れて帰る気がなくなったことを喜んでいるのか、それとも鍛え上げることを喜んでいるのかツヴァイが片方の口角を上げて笑う。
 悪そうな笑顔だな…
 まぁこれでツヴァイの許可が出た。
 思う存分やらせてもらおう。





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