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6章

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「失礼しました。
 お取り込み中申し訳ありませんがこちらの書類の決済を至急お願いします。」


 落ちて散らばった書類を集めて順番通りに並べツヴァイのデスクの上に置くククスのお父さん。
 見られたくない人に見られてしまった…


「チッ…」

「ギルフォード君、久しぶりだね。」

「ぁ、はい。
 ご無沙汰してます…」


 ツヴァイは舌打ちをしスッと俺から離れデスクに置かれた書類に立ったまま目を通す。
 ようやく圧から解放されホッと胸をなで下ろす俺ににこやかに話しかけてくるククスのお父さん。
 正直気不味い。
 そしてご無沙汰と言っていいのだろうか?
 確かに最近期間は空いていたがフォードとして浮遊教室の指導をしに何度か訪れている。
 その時に少し顔を合わせたりしていたはずだ。


「最近はフォード君にも会ってなくてね…
 また来てもらえると助かるんだけどね。」


 それは浮遊教室を近々開け、と言うことだろうか?
 一部の騎士に嫌われている俺が教えていていいのだろうか?
 彼らのためにもコツを掴んだ騎士同士で教え合うのがいいとも思うんだけど…


「えっと…ククスもお力になれると思いますが?」

「あぁ、そうらしいね。
 でもね、フォード君に言われてからククスを騎士の仕事に関わらせるのを止めているんだ。
 しばらくはこのまま、学園生活を堪能させようと思っている。
 だから、ね?
 フォード君に頼むのが1番なんだよ。」


 …自分の撒いた種だ、自分の尻は自分で拭けと言うことか……
 ククスのためなら…いや、でもそれとこれは別だろう!


「なら騎士同士でコツを教え合うのもいいんではないでしょうか?
 お互いに成長しますし、基礎をしっかり固めることにより応用もしやすくなると思いますよ?」

「しばらくは来てくれそうにない、と言うことか…
 まぁフォード君も忙しそうだしね。
 また都合のいい日に顔を見せてもらえるだけでも構わない、と伝えてくれ。」

「わかりました…」

「話は終わったか?
 決済済みの書類だ。
 こっちはやり直させろ。
 とてもじゃないがこのままでは通せない。」

「はい。
 それと宰相様、あまり子供をイジメすぎると余計な噂がたちますよ?」

「…そんな噂、誰が信じる?
 俺は人望の厚い宰相様、なんだろ?」


 チラッと俺を見るツヴァイ。
 俺は思わず目をそらす。
 そうですとも、巷では人望の厚い宰相様で通ってますとも。
 俺も昔はそう思ってたな…



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