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あまり楽とは言えない冒険者メリルの章
69.危険で楽な経験値-2
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今貰った脱出アイテムの効果をすぐに実感する。
いつだって逃げられる。そんな安心感があるとないとでは、気持ちの余裕はまったく違うだろう。
身を屈め、オークナイトの動きを伺いながら、その時を待つ。
ほんの十数秒が何分にも感じられる中、それは唐突に始まった。
気だるげにうろうろと歩くオークナイトの側面を男がついた。
驚くほど洗練された技、というわけではないが、決して緩慢というわけでもない。そんな無難ともいうべき動きで、男がオークナイトの脇をえぐる。
しかし、豊富な体力を持つ体躯にとっては、大したダメージではないだろう。
敵を察知したオークナイトはすぐに反応して振り向くが、反撃を打つまでには至らない。とりあえず先制攻撃は上手くいった形だ。
間合いを仕切り直し、ようやく対面で男とオークナイトが交錯。オークナイトが完全に男の方を向いたのを見て、メリルがその背後へと躍り出る。
足は震えていた。というより緊張で全身が震えていた。その割には冷静に体が動いている。
ふわふわとした意識が先行し、遅れて身体がついてくる。
「スリープ!」
メリルが背後から魔法を発動させる。
多少なりとも適正があるからか、感覚はファイアーボールよりスムーズだ。
杖の先から魔力の霧が発散され、それが攻撃に転じようとしていたオークナイトの身体を包み込む。
手にしている棍棒のような武器を振りかぶる、その腕があるタイミングでガクりと落ちた。
そしてそのまま、膝をつくと前方に豪快に倒れ伏しながら、オークナイトはぐうぐうと寝息を立て始める。
魔法による強制的な昏睡は、多少の刺激では目を覚ますことはないが、効き目がなくなればすぐに起床するものだ。
「よしっ!」
眠ったのを確認した男が、すかさず襲い掛かった。
動かないオークの鎧の隙間、脇腹めがけて爪をザクザク突き立てる。後は体力を削りきるまで、これを繰り返すだけなのだが。
「次! 次準備して! いや、いっそもう撃って」
と魔法が上手く効いてくれたのを見てほっとしていたメリルに、男が指示を飛ばした。
「えっ……」
「起きて反撃されたら元も子もないから! 魔力は無くなっていいから、スリープお願い」
魔力のでの昏睡は、強烈だがいざ起きてしまえば、相手の防御も回復してしまう。
本領発揮したオークナイトが特技の発狂状態になれば、ここからでも十分全滅のリスクはあるのだ。
「は、はい!」
スリープの効果がどの程度の持続するかは、耐性や運などもあるが一番は使い手の魔力。
レベル一桁の魔術師では、効果の持続は微妙なところ。
そういうことはわかっていたはずなのに、たった一度成功しただけで、気が抜けてしまった。
迷宮での戦いに慣れている人とそうでない人。
持っている危機感が違う。
「ス、スリープ!」
ヤケクソ気味にスリープを連打。オークナイトが熟睡していようが、起きそうだろうがお構いなしに放つ。
そして男はひたすら脇腹に爪を突き立てる。オークナイトが完全に死亡するまでそれは繰り返される。
いつだって逃げられる。そんな安心感があるとないとでは、気持ちの余裕はまったく違うだろう。
身を屈め、オークナイトの動きを伺いながら、その時を待つ。
ほんの十数秒が何分にも感じられる中、それは唐突に始まった。
気だるげにうろうろと歩くオークナイトの側面を男がついた。
驚くほど洗練された技、というわけではないが、決して緩慢というわけでもない。そんな無難ともいうべき動きで、男がオークナイトの脇をえぐる。
しかし、豊富な体力を持つ体躯にとっては、大したダメージではないだろう。
敵を察知したオークナイトはすぐに反応して振り向くが、反撃を打つまでには至らない。とりあえず先制攻撃は上手くいった形だ。
間合いを仕切り直し、ようやく対面で男とオークナイトが交錯。オークナイトが完全に男の方を向いたのを見て、メリルがその背後へと躍り出る。
足は震えていた。というより緊張で全身が震えていた。その割には冷静に体が動いている。
ふわふわとした意識が先行し、遅れて身体がついてくる。
「スリープ!」
メリルが背後から魔法を発動させる。
多少なりとも適正があるからか、感覚はファイアーボールよりスムーズだ。
杖の先から魔力の霧が発散され、それが攻撃に転じようとしていたオークナイトの身体を包み込む。
手にしている棍棒のような武器を振りかぶる、その腕があるタイミングでガクりと落ちた。
そしてそのまま、膝をつくと前方に豪快に倒れ伏しながら、オークナイトはぐうぐうと寝息を立て始める。
魔法による強制的な昏睡は、多少の刺激では目を覚ますことはないが、効き目がなくなればすぐに起床するものだ。
「よしっ!」
眠ったのを確認した男が、すかさず襲い掛かった。
動かないオークの鎧の隙間、脇腹めがけて爪をザクザク突き立てる。後は体力を削りきるまで、これを繰り返すだけなのだが。
「次! 次準備して! いや、いっそもう撃って」
と魔法が上手く効いてくれたのを見てほっとしていたメリルに、男が指示を飛ばした。
「えっ……」
「起きて反撃されたら元も子もないから! 魔力は無くなっていいから、スリープお願い」
魔力のでの昏睡は、強烈だがいざ起きてしまえば、相手の防御も回復してしまう。
本領発揮したオークナイトが特技の発狂状態になれば、ここからでも十分全滅のリスクはあるのだ。
「は、はい!」
スリープの効果がどの程度の持続するかは、耐性や運などもあるが一番は使い手の魔力。
レベル一桁の魔術師では、効果の持続は微妙なところ。
そういうことはわかっていたはずなのに、たった一度成功しただけで、気が抜けてしまった。
迷宮での戦いに慣れている人とそうでない人。
持っている危機感が違う。
「ス、スリープ!」
ヤケクソ気味にスリープを連打。オークナイトが熟睡していようが、起きそうだろうがお構いなしに放つ。
そして男はひたすら脇腹に爪を突き立てる。オークナイトが完全に死亡するまでそれは繰り返される。
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