ひたすら楽する冒険者業

長来周治

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楽の戦士トーチの章

175.楽し気な女-10

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「そう言ってくれるのは、こっちとしてはありがたいけどさ、君たちはどうするんだ?」
「どう、というと?」
「そっち話だと、俺の方だけ一方的に得するような感じになるけど」
「何が問題ですか? 先ほどの貴方の口ぶりというか、冒険者に対する姿勢から見ても、一方的に得が出来るなら喜んで受けそうなものですけど」
「それはまあ、そうだけどさ」
 言葉の返しがいちいちシンプルじゃないな。こちらの意図を細かく伝えないといけないような、そういう切り口で話しかけてくるタイプは、今まで意外といなかったので苦労する。
 メリルは言うまでもなく素直でこっちを無用に詮索したりしないし、娼館の女たちの勿体付けた言い方とも毛色が違う。
「そっちから何も要求がないなら、そっちが話を持ち掛けてくる動機もないから」
「世の中には公共奉仕という言葉があるんですよ。私たちとしては、冒険者全体の利益を守るのが使命ですからね。そのために貴方の協力したいということです」
 一応彼女は公務員だから筋は通っているが、またやりにくい事を言ってくる。
 流石にこっちの言いたい事なんて、雰囲気でわかっていそうなものだけど。
 もしかして役人の性質としてこういう言葉選びになるのか、こっちの意図を知りながら、わざとおちょくっているのか。
「世の中そんなうまい話があるわけがない、と思うのでしたら、それは貴方が一方的に思い込んでいるだけかもしれませんね」
 わざとだな。両方って線もあるけど。
 とにかく、こっちが明確に返答を限定した質問をしない限り、この女はちゃんと答える気がないぞ、ということはわかった。
 俺は少し考える。
「目的が公共奉仕でもこっちとしては何でもいい。でも、何がそっちが利益になるかがわからないと、協力しにくいんだよ。俺にどんな期待しているのかを把握しているとしてないじゃ、話が変わってくる。内容次第じゃ、協力も出来ないってことになるしな」
 俺がそう言うと、ミルノは一瞬表情を固めた。
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