転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM

文字の大きさ
43 / 43

年金手帳を胸に

「リュオディス様……あの、今回の退位の件…」
「ああ。もう話は聞いてる?実はそうなんだ」
 突然の再会に驚いたものの、やはり気になることは気になる。
 という訳でズバリと質問を口にすると、リュオディス様は照れ臭そうに頭を掻いて笑った。
「王位は弟と……その妻であるキャスリーナ妃に譲渡したんだ」
「妻……キャスリーナ妃……えっ、でも、彼女はリュオディス様の…」

 あの日、彼は私と婚約破棄し、神女であるキャスリーナ嬢を選んだ。
 私は自分が考えていたよりも、そのことがショックで。
 傷付いて。泣いて。落ち込んで。
 ようやく気持ちを切り替えて、お1人様生活を楽しもうと思い直した。

 正直に言ったら10年経った今も、彼のことが忘れられずにいたのだけど。

 おかしなものだよね。
 婚約破棄は元々私自身が望んできたことのはずなのに。

 だから今もお1人様で。恋人を作ろうとも考えてなかった。
 『愛猫』のタマと、『友人』のミィナと、町で知り合った人々と、のんびりまったり暮らしていこうと。

 田舎の生活で時を経てようやく心の整理もつき、リュオディス様とキャスリーナ嬢のことを、心から祝福しようと思っていたのに。
「ごめん。あの時……下手な演技でアウラを泣かせてしまって」
「あ……いえ……ていうか演技だったの…」
 これまでの記憶を辿った私の表情を見てのことか、リュオディス様は本当に申し訳なさそうに謝ってくれた。
 聞けば彼としても私をあそこまで哀しませることになるとは、思っていなかった事態であったらしい。
「俺はてっきり、隠居生活が早まって喜んでくれるとばかり…」
「あ~……あはは……」

 まあ確かにそれはある。
 実際、隠居生活は嬉しかった。
 王子に振られたことに、あれほどのショックを受けたのは、私にしても想定外だったのだ。

 というか、ん??ちょっと待って。一瞬スルーしかけたけど『あの時の…』って、婚約破棄を告げられた時のことだよね?アレが演技って、は??、どういうこと??

 さっぱり意味が解らない。つまり私は騙されてたってこと??

 えっ、なんか腹立ってきたんだけど??

「本当にごめん。騙すようなことになってしまったけど、君には自由に暮らして欲しかったから」
「自由にって……」
「俺には国王となってやり遂げたいことがあった。だからその目的を達成するまで、キャスリーナ嬢に協力を仰ぎ、婚約者として側に居て貰っていた。そうして目的を達したあとは、弟が成人し、立派に王位を継げるようになるのを待っていたんだ」
「ふうん…キャスリーナ嬢と…ね」
 成し遂げたいこと??そのために私と婚約破棄して、キャスリーナ嬢と協力って…なんなのそれ。
「あ。ち、違うよ!?言っておくけど俺は、彼女とはなにもないから。ほんとだから!?」
「へ~……」
 じろっと睨み付けると、リュオディス様は慌てて関係を否定した。
 まあ、嘘ではないと思う。勘だけど。
 ていうか私に関係疑われたからって、そんな慌てること無いのに。なんで??必死過ぎない??
「だって君は華やかな貴族生活より、素朴で穏やかな生活をしたいと…ずっとそう願っていたから」
「え………」
「えっ。違うの??アウラは将来、隠居して、引きこもりお一人様生活したいって、聞いてたけど…?」
「……………あ…あはは」
 うーん。やっぱり全部知られてた。うぬう。

 ミィナから実は私にはずっと王家の隠れ護衛が付いていた、と、前に聞いたことがあるんだけど…まさかこんな些細なことまで筒抜けだったとは思わなかった。

「俺が達成したかったことも、実は、君の願いに関することなんだよ」
「…………は?」
 どういうこと??私のまったり生活のために、リュオディス様がやり遂げたかったこと??
 なんのことだかホントにさっぱりわからない。
 困惑しきった私の前で、リュオディス様は突然、跪いてポケットから何かを取り出すそぶりを見せた。
「……………ッッ!!」
 あっ。これ、知ってる!!
 ドラマとかでよく見たあれだ。
 スッと指輪出して、プロポーズするやつ。
 えっ。まさかまさか。
 そんな、嘘でしょ!?
「リュオディス様……ッ!?」
 目の前の現実が信じられなくて、気恥ずかしさMAXで、顔に血が集まる感じがして慌てていると、
「………………ん?」
「遅くなったけど…これは君のものだよ」
 渡されたのは指輪じゃなくて、掌より少し大きいくらいの小さな冊子。
 
 指輪じゃないし!!??
 プロポーズじゃなかった!?

「えっ…あの………これ……」
 勘違いが恥ずかしくて焦るが、手渡された冊子を見て時が止まる。
「……年金……手帳…??……は?」
「待たせたよね。やっと出来たんだ」
「……………はあ?」
 目が点になった。
 出来たって。
 は??
 なにが??
「年金制度だよ。キャスリーナ嬢と協力して、一から制度を構築したんだ」
「…………はい!?」
 作った!?年金制度を!?この世界で??
 マジか。
「詳しいことは省くけど……将来的に破綻することのないよう、キャスリーナ嬢と一緒に考えて、この春からやっと施行にこぎつけたんだ」
「ええ…………」
 嘘みたいな話だけど。と、目をぱちくりさせる。
 そんな私を見詰めながらリュオディス様は、ポケットからもう一つ何かを取り出した。
「この10年…ずっと決めていたんだ。この年金手帳と共に、君に結婚を申し込むって」
 その手に握られていたのは、今度こそ間違いなく指輪。
 なんなの、それ。
 おかしいんだけど。
 年金手帳と指輪でプロポーズって。
「アウローラ。俺と結婚してください」
 クソ真面目な顔でリュオディス様は、私に指輪のケースを差し出してきた。

 なんなの。この状況?

 シリアスで感動的な場面のはずなのに、私の手の中の年金手帳が邪魔してる。

 ──でも
「……………はい!」
 これってなんだか、とっても私らしいわ。
 大声で笑いそうになりながらも私は、彼からの思いを込めた、10年越しの求婚を受け入れたのだった。
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

ともこ
2025.10.24 ともこ

㊗️小説版📖完結🎉🎊おめでとうございます
出来れば、番外編をお願いします🙏✨
殿下視点でのお話は如何でしょうか?
漫画版の双子が気になって仕方ないんです
是非とも検討お願いしますm(_ _)m

2025.10.28 RINFAM

ともこさん、連コメありがとうです!!
殿下視点というのも面白いですね!?

解除
秋桜
2023.11.28 秋桜

攻略対象を売るヒロインて…初めて見たわ。

2023.11.28 RINFAM

自分が一番可愛いですからね!!!!
メイン攻略対象以外はどうでも良いのかも知れません(笑)

解除
くろいゆき
2022.11.18 くろいゆき

電源入れて10分でぶん投げたクソゲーだった乙女ゲー。
どんな内容だったんでしょうね、テキストが滅茶苦茶頭おかしいのとか、ADVだとたまにあるんですよね。
選択肢で選んだのでサイコな発言をする主人公みたいな……。
9割引きなら、ネタとしてクソゲー動画を投稿しますでバズった……りはしないですよね🤔

未来の宰相候補の頭も盛大にバグっているようですし、アウローラの楽隠居計画はすごく大変そうで展開が楽しみです。

2022.11.18 RINFAM

感想ありがとうございます!!
そうなんです。稀にクソゲーだけど1周回って逆に面白いとかもありますけど(笑)テキストがメチャクチャだと脳内に入ってこないんですよね!😊
色々とバグったキャラクター相手だと、アウローラさんの隠居生活は、なかなかに難しそうです!!
亀のように遅い更新ですが、頂いた感想を励みに頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

解除

あなたにおすすめの小説

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。