16 / 43
陰謀と策略!?
どうするか迷った。
落書きを消して普通に座るか。それとも、どこか別の席に座るか。
教室内の席には常に余裕がある。
何故なら出席率はいつも100%ではないからだ。
これは、実際なってみて解ったことだけど、貴族って暇なようでいて何かと日々忙しい人種なのだ。
当主ともなれば領地経営はもちろんのこと、何もない日に突然、外せない予定が入ったりもする。と言ってもそれは主に社交関連ではあるのだけれど──しかし、貴族間の繋がりや交流というものは、彼らにとって時に命綱となるほど重要で、ゆえにどれだけ忙しくともそれらを無視するなど絶対にできないのだ。
そんな『大人の付き合い』に加え、私の父のように政治へかかわる身分となれば、その分の仕事も鬼の如く追加される。
もちろん、学園に通う子弟はまだ成人前の子供に過ぎないけど、だからと言って家の経営や社交に無関係ではいられなかった。跡目を継ぐ者ならなおさらだ。つまり、社交デビュー前の非公式な顔見せ、みたいな感じで、ちょくちょく家の社交に付き合わされたりする訳である。
そういった事情も鑑みてか、学園も特に出席率に煩くなかった。
なので生徒も毎日来る人ばかりではない。中には一週間に一度くらいしか見ない顔もあった。
おまけに授業は一部選択制である。三つの必須科目以外は、皆、好きな授業を選んで参加するので、人気の授業と不人気の授業とでは、出席する生徒の数が大幅に異なったりした。
しかし本日最初の授業は必須科目の一つである、魔法理論だ。ということは、いつもより出席率が高い。下手をすると席が埋まる。開始時刻を考えても、あまり迷ってる時間は無かった。
ということで結局、私は落書きを消すのを諦めて、他の席に座ることにした。
一応、試しにハンカチで拭いてみたのだが、その落書きは特殊なペンで書かれてるらしく、簡単には消えそうになかったからだ。
うん。これたぶん、魔法油性ペンだわ。消すのに特殊溶液が必要なやつ。
私が席を変わるのを見た生徒たちは、慌てたように次々と席へ着いた。まあ、そりゃそうよね。誰だって気分が良くないわ。あんな稚拙な落書きのある机で授業受けるの。なにせ私だって嫌だもん。しかも、明らかに私宛だし。まあ、亡き母がデベソだったかどうかは知らんけども。
結果、授業開始三分前には、落書き席以外は全部埋まってしまっていた。
今日に限って出席率が良い。
最後の一人が休みだと良いわね…なんて考えていたら、軽やかにスキップを踏んでたっぽい足音がドアの前でピタリと止まった。そして、さっきまでのスキップは耳の迷い?とでも言うかのように、しずしずとおしとやかにドアが開かれた。うん。足音誤魔化すの、あと十秒遅かったよね。
「皆様、おはようございま……す!?」
ドアから机の上の落書きは見えない。
見えないのにも関わらず、その人物は一瞬硬直した。
いつもと違う席に座る私の姿を見て。
ああ……なるほど??
犯人はお前か!!
心の中で名探偵がビシィッと指差しをした。
つか、解りやすすぎでしょ…その反応??素人探偵でも秒で犯人わかっちゃうわ。
「……………ッッ!!」
ため息ついたら、なんか睨まれました。いや、これ自業自得でしょ。諦めて席に着きなさい。
「…………」
開始時刻の鐘の音に押されるようにして、しぶしぶと落書き席に着いたのは…紫がかった黒髪と瞳の絶世の美少女。はい。もう誰だかお分かりですね??
本作のヒロイン…であるはずの、キャスリーナ・グスタフ男爵令嬢だった。
──っていうか、ことさらどうでも良いけど、ヒロインなのに字が汚いな??ひょっとして平民出身っていう設定生きてんのかしら。だとしたら、このクソゲー、変な所でリアリティ有り過ぎるな…ッ??
などと、どうでも良いことを考えていたら、斜め前に座ったキャスリーナ嬢がニヤリと笑うのが見えた。おいおい…可憐なヒロインの見せる笑顔じゃないぞ??と私は脳内で突っ込みを入れ──そしてふと、あれ??これってひょとしてヤバイ状況なのでは??と思った。
「……………ッッ!」
すると、案の定、ヒロインは大袈裟な身振りで顔を覆い、わざとらしく声を上げて泣き始めたのである。しかもちゃっかり、教室へ先生が入って来るタイミングに合わせて!!
「酷いわっ、アウローラ様…!!」
あっ、やっぱりそう来たか。
うん。まあ、そうなるよね。
この状況、ことの最初から見てない人なら、絶対、私の仕業と思うはずだもの。
「こんな酷い落書き…あんまりです…!!」
いや、それ、私の字じゃないからね。
ついでにそんな特殊なペン、私持ってないわよ??
ごく自然な流れで私を冤罪に落とそうとするキャスリーナ嬢を見詰めながら、やれやれ…また面倒な展開になりそうだ…と内心で深い深いため息をついた私だった。
落書きを消して普通に座るか。それとも、どこか別の席に座るか。
教室内の席には常に余裕がある。
何故なら出席率はいつも100%ではないからだ。
これは、実際なってみて解ったことだけど、貴族って暇なようでいて何かと日々忙しい人種なのだ。
当主ともなれば領地経営はもちろんのこと、何もない日に突然、外せない予定が入ったりもする。と言ってもそれは主に社交関連ではあるのだけれど──しかし、貴族間の繋がりや交流というものは、彼らにとって時に命綱となるほど重要で、ゆえにどれだけ忙しくともそれらを無視するなど絶対にできないのだ。
そんな『大人の付き合い』に加え、私の父のように政治へかかわる身分となれば、その分の仕事も鬼の如く追加される。
もちろん、学園に通う子弟はまだ成人前の子供に過ぎないけど、だからと言って家の経営や社交に無関係ではいられなかった。跡目を継ぐ者ならなおさらだ。つまり、社交デビュー前の非公式な顔見せ、みたいな感じで、ちょくちょく家の社交に付き合わされたりする訳である。
そういった事情も鑑みてか、学園も特に出席率に煩くなかった。
なので生徒も毎日来る人ばかりではない。中には一週間に一度くらいしか見ない顔もあった。
おまけに授業は一部選択制である。三つの必須科目以外は、皆、好きな授業を選んで参加するので、人気の授業と不人気の授業とでは、出席する生徒の数が大幅に異なったりした。
しかし本日最初の授業は必須科目の一つである、魔法理論だ。ということは、いつもより出席率が高い。下手をすると席が埋まる。開始時刻を考えても、あまり迷ってる時間は無かった。
ということで結局、私は落書きを消すのを諦めて、他の席に座ることにした。
一応、試しにハンカチで拭いてみたのだが、その落書きは特殊なペンで書かれてるらしく、簡単には消えそうになかったからだ。
うん。これたぶん、魔法油性ペンだわ。消すのに特殊溶液が必要なやつ。
私が席を変わるのを見た生徒たちは、慌てたように次々と席へ着いた。まあ、そりゃそうよね。誰だって気分が良くないわ。あんな稚拙な落書きのある机で授業受けるの。なにせ私だって嫌だもん。しかも、明らかに私宛だし。まあ、亡き母がデベソだったかどうかは知らんけども。
結果、授業開始三分前には、落書き席以外は全部埋まってしまっていた。
今日に限って出席率が良い。
最後の一人が休みだと良いわね…なんて考えていたら、軽やかにスキップを踏んでたっぽい足音がドアの前でピタリと止まった。そして、さっきまでのスキップは耳の迷い?とでも言うかのように、しずしずとおしとやかにドアが開かれた。うん。足音誤魔化すの、あと十秒遅かったよね。
「皆様、おはようございま……す!?」
ドアから机の上の落書きは見えない。
見えないのにも関わらず、その人物は一瞬硬直した。
いつもと違う席に座る私の姿を見て。
ああ……なるほど??
犯人はお前か!!
心の中で名探偵がビシィッと指差しをした。
つか、解りやすすぎでしょ…その反応??素人探偵でも秒で犯人わかっちゃうわ。
「……………ッッ!!」
ため息ついたら、なんか睨まれました。いや、これ自業自得でしょ。諦めて席に着きなさい。
「…………」
開始時刻の鐘の音に押されるようにして、しぶしぶと落書き席に着いたのは…紫がかった黒髪と瞳の絶世の美少女。はい。もう誰だかお分かりですね??
本作のヒロイン…であるはずの、キャスリーナ・グスタフ男爵令嬢だった。
──っていうか、ことさらどうでも良いけど、ヒロインなのに字が汚いな??ひょっとして平民出身っていう設定生きてんのかしら。だとしたら、このクソゲー、変な所でリアリティ有り過ぎるな…ッ??
などと、どうでも良いことを考えていたら、斜め前に座ったキャスリーナ嬢がニヤリと笑うのが見えた。おいおい…可憐なヒロインの見せる笑顔じゃないぞ??と私は脳内で突っ込みを入れ──そしてふと、あれ??これってひょとしてヤバイ状況なのでは??と思った。
「……………ッッ!」
すると、案の定、ヒロインは大袈裟な身振りで顔を覆い、わざとらしく声を上げて泣き始めたのである。しかもちゃっかり、教室へ先生が入って来るタイミングに合わせて!!
「酷いわっ、アウローラ様…!!」
あっ、やっぱりそう来たか。
うん。まあ、そうなるよね。
この状況、ことの最初から見てない人なら、絶対、私の仕業と思うはずだもの。
「こんな酷い落書き…あんまりです…!!」
いや、それ、私の字じゃないからね。
ついでにそんな特殊なペン、私持ってないわよ??
ごく自然な流れで私を冤罪に落とそうとするキャスリーナ嬢を見詰めながら、やれやれ…また面倒な展開になりそうだ…と内心で深い深いため息をついた私だった。
あなたにおすすめの小説
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
【完結】成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。