18 / 43
白馬の王子!?
しおりを挟む
「僕の大切な婚約者を犯人扱いとは、どういうおつもりですか、シーリズ先生?」
「…………え」
バタンと音を立ててドアが開き、険悪ムードの教室内に颯爽と現れたのは──
「……え、誰?」
「お……王太子殿下!?」
私はてっきりいつもの長い金髪をなびかせた、きらびやかな姿で登場してくると思い込んでいた。おかげでその変わり果てた姿を見て『アンタ誰だよ、新キャラかい!?』って心の中で思わず突っ込んでしまう。シーリズ先生(そんな名前だったの??)が敬称を口にしなかったら、危うく口に出して突っ込むとこだったわ。
「アウラ…誰とは酷いな…」
…って、あ。口に出しちゃってたか。ごめんごめん。
でも、それほどにリュオディス王子の姿は変わっていたのだ。いや本当に。
「え……な、なんで…??」
唐突かつ突然なデザイン変更…ならぬ、イメチェンに私も相当びっくりしていたが、何故だかヒロインも彼のその姿に驚愕していた。つい一瞬前までの泣き真似までやめて、青ざめた顔で王子の姿を見ている。その理由は良く解らないのだけども──
それにしても、うーん…どうしちゃったの王子、こんな急に??
失恋でもしたの?って、乙女か王子は。私もしっかりしろ。
「どうだい?アウラ…君の好みに合わせてみたよ」
「あ…ええ、え??」
恥ずかしげもなくそう言い切った王子の、肩下まで伸ばされていたきらびやかな金髪は、なんと、うなじの所で綺麗に切り揃えられていたのだ。しかも長かった髪を一息に切ったせいなのか、全体がちょっと跳ねたりしててヒーローみたいでカッコイイ。うん。本当にかっこいいし、似合ってると思う。
ていうか、ちょっと待って!?
誰から聞いたのよ、私の好み!?
何気にスルーしそうになったけど、私、殿下にそんなこと言った覚えないわよ!?
「とてもカッコイイです。リュオディス殿下」
黒い疑惑は脳内で突っ込みつつ、思ったことを素直に口にしたら、リュオディス王子は嬉しそうにニコーっと笑った。うわーっ、白馬の王子様の笑顔!!周りの令嬢達から、声のない悲鳴が上がるのが解る。学園内とはいえさすがに不敬だから、声に出すのは耐えたみたいだ。偉いな~、お嬢様方!!
「リュオディス殿下、お話の所申し訳ございませんが…」
すっかり忘れ去られていたシーリズ先生が、話を元に戻そうと会話に割って入ってきた。王子は途端に笑顔潜めて真面目な顔になる。私はそんな彼の顔を目にして、『キリッとしててカッコイイぞ、王子!!』とこれまた脳内で賞賛の拍手を送った。
「オイレンブルク令嬢の罪は明らかです。たとえ王太子殿下の婚約者とはいえ、赦されることではありません」
おっと。ちょっと放置してた間に、先生の脳内では私の罪と確定していたらしい。
よほど自信と確信があるのか、王太子殿下に対しても強気だ。
「このような罪を犯したからには、オイレンブルク令嬢は殿下との婚約を辞退し、修道院へ入られるのがよろしいかと」
えっ、えっ!?ちょっと待って。これって、机に落書きしたって言う…つまり、単なる『いたずら』だよね??なのに、いつの間にか先生の脳内では落書き事件が、王族毒殺未遂でもやらかしたような事態になっていた。おいおい…いくらなんでも罪が重すぎでしょ。
「落書きの罪で??」
あ。殿下も目が点になってる。
ついで、呆れたような深いため息をついた。
うん。ですよね!!そうですよね!!??
良かった、王子がまともな反応見せてくれて!!
「何を言うのですか!!これはただの悪戯などではございません!!学園の施設に対する器物損壊罪!!教室を騒がせた騒乱罪!!一人の可憐な少女を傷付けた傷害罪でございますよ!!リュオディス殿下!!」
おお~物は言いようって、まさにこのことだわ。ポンコツでも、さすが先生を名乗るだけあるわね。聞いてる私もなんだか突然、『単なる落書き』がたいした罪のように思えてきたし。
「アウラが落書きをしたという、確たる証拠はあるのですか」
「もちろんです!!リーナ…グスタフ男爵令嬢の証言!!これこそ何よりの証拠でございます!」
そ・れ・し・か・ないんかい!!!!
思わず激しく突っ込んでしまった。脳内で。しかし、あまりの馬鹿馬鹿しさに危うく口に出すとこだったわよ…!!ほんと、馬鹿しかいないのか、この世界って??ああ、あと、突然ヒロインの愛称をやめて言い直すの、あからさま過ぎて気持ち悪いんですけど!?
「証言だけが証拠とは……呆れて物が言えませんね。グスタフ男爵令嬢、本当にそれはアウラがやったというのですか?」
「ハイッ!?いえっ、あ……ええと…それはその…ですね…」
王子から突っ込まれて聞かれると、さすがのヒロインも視線をキョロキョロさせて狼狽え始めた。
これはアレだな…ポンコツ1号レイドール様の時のように、王子が味方に付いてくれないと察したから、この場をどう切り抜けようかと考えてるんだな。あと、もしかすると原作では、ここに王子は登場してないのかも。なにせ王子が現われるや否や、泣き真似忘れるくらいに動揺してたしね。
それにしても、さ~て…これからどうする気かな??
「ち、違うんです!!その、私、脅されてて…ええと、そう!!シーリズ先生がそう言えって言ったんです…!!」
「………はあっ!!??」
わあ!!攻略対象切り捨てたよ!!いっそ潔いな、ヒロイン!!??
「…………え」
バタンと音を立ててドアが開き、険悪ムードの教室内に颯爽と現れたのは──
「……え、誰?」
「お……王太子殿下!?」
私はてっきりいつもの長い金髪をなびかせた、きらびやかな姿で登場してくると思い込んでいた。おかげでその変わり果てた姿を見て『アンタ誰だよ、新キャラかい!?』って心の中で思わず突っ込んでしまう。シーリズ先生(そんな名前だったの??)が敬称を口にしなかったら、危うく口に出して突っ込むとこだったわ。
「アウラ…誰とは酷いな…」
…って、あ。口に出しちゃってたか。ごめんごめん。
でも、それほどにリュオディス王子の姿は変わっていたのだ。いや本当に。
「え……な、なんで…??」
唐突かつ突然なデザイン変更…ならぬ、イメチェンに私も相当びっくりしていたが、何故だかヒロインも彼のその姿に驚愕していた。つい一瞬前までの泣き真似までやめて、青ざめた顔で王子の姿を見ている。その理由は良く解らないのだけども──
それにしても、うーん…どうしちゃったの王子、こんな急に??
失恋でもしたの?って、乙女か王子は。私もしっかりしろ。
「どうだい?アウラ…君の好みに合わせてみたよ」
「あ…ええ、え??」
恥ずかしげもなくそう言い切った王子の、肩下まで伸ばされていたきらびやかな金髪は、なんと、うなじの所で綺麗に切り揃えられていたのだ。しかも長かった髪を一息に切ったせいなのか、全体がちょっと跳ねたりしててヒーローみたいでカッコイイ。うん。本当にかっこいいし、似合ってると思う。
ていうか、ちょっと待って!?
誰から聞いたのよ、私の好み!?
何気にスルーしそうになったけど、私、殿下にそんなこと言った覚えないわよ!?
「とてもカッコイイです。リュオディス殿下」
黒い疑惑は脳内で突っ込みつつ、思ったことを素直に口にしたら、リュオディス王子は嬉しそうにニコーっと笑った。うわーっ、白馬の王子様の笑顔!!周りの令嬢達から、声のない悲鳴が上がるのが解る。学園内とはいえさすがに不敬だから、声に出すのは耐えたみたいだ。偉いな~、お嬢様方!!
「リュオディス殿下、お話の所申し訳ございませんが…」
すっかり忘れ去られていたシーリズ先生が、話を元に戻そうと会話に割って入ってきた。王子は途端に笑顔潜めて真面目な顔になる。私はそんな彼の顔を目にして、『キリッとしててカッコイイぞ、王子!!』とこれまた脳内で賞賛の拍手を送った。
「オイレンブルク令嬢の罪は明らかです。たとえ王太子殿下の婚約者とはいえ、赦されることではありません」
おっと。ちょっと放置してた間に、先生の脳内では私の罪と確定していたらしい。
よほど自信と確信があるのか、王太子殿下に対しても強気だ。
「このような罪を犯したからには、オイレンブルク令嬢は殿下との婚約を辞退し、修道院へ入られるのがよろしいかと」
えっ、えっ!?ちょっと待って。これって、机に落書きしたって言う…つまり、単なる『いたずら』だよね??なのに、いつの間にか先生の脳内では落書き事件が、王族毒殺未遂でもやらかしたような事態になっていた。おいおい…いくらなんでも罪が重すぎでしょ。
「落書きの罪で??」
あ。殿下も目が点になってる。
ついで、呆れたような深いため息をついた。
うん。ですよね!!そうですよね!!??
良かった、王子がまともな反応見せてくれて!!
「何を言うのですか!!これはただの悪戯などではございません!!学園の施設に対する器物損壊罪!!教室を騒がせた騒乱罪!!一人の可憐な少女を傷付けた傷害罪でございますよ!!リュオディス殿下!!」
おお~物は言いようって、まさにこのことだわ。ポンコツでも、さすが先生を名乗るだけあるわね。聞いてる私もなんだか突然、『単なる落書き』がたいした罪のように思えてきたし。
「アウラが落書きをしたという、確たる証拠はあるのですか」
「もちろんです!!リーナ…グスタフ男爵令嬢の証言!!これこそ何よりの証拠でございます!」
そ・れ・し・か・ないんかい!!!!
思わず激しく突っ込んでしまった。脳内で。しかし、あまりの馬鹿馬鹿しさに危うく口に出すとこだったわよ…!!ほんと、馬鹿しかいないのか、この世界って??ああ、あと、突然ヒロインの愛称をやめて言い直すの、あからさま過ぎて気持ち悪いんですけど!?
「証言だけが証拠とは……呆れて物が言えませんね。グスタフ男爵令嬢、本当にそれはアウラがやったというのですか?」
「ハイッ!?いえっ、あ……ええと…それはその…ですね…」
王子から突っ込まれて聞かれると、さすがのヒロインも視線をキョロキョロさせて狼狽え始めた。
これはアレだな…ポンコツ1号レイドール様の時のように、王子が味方に付いてくれないと察したから、この場をどう切り抜けようかと考えてるんだな。あと、もしかすると原作では、ここに王子は登場してないのかも。なにせ王子が現われるや否や、泣き真似忘れるくらいに動揺してたしね。
それにしても、さ~て…これからどうする気かな??
「ち、違うんです!!その、私、脅されてて…ええと、そう!!シーリズ先生がそう言えって言ったんです…!!」
「………はあっ!!??」
わあ!!攻略対象切り捨てたよ!!いっそ潔いな、ヒロイン!!??
44
あなたにおすすめの小説
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
笑顔が苦手な元公爵令嬢ですが、路地裏のパン屋さんで人生やり直し中です。~「悪役」なんて、もう言わせない!~
虹湖🌈
ファンタジー
不器用だっていいじゃない。焼きたてのパンがあればきっと明日は笑えるから
「悪役令嬢」と蔑まれ、婚約者にも捨てられた公爵令嬢フィオナ。彼女の唯一の慰めは、前世でパン職人だった頃の淡い記憶。居場所を失くした彼女が選んだのは、華やかな貴族社会とは無縁の、小さなパン屋を開くことだった。
人付き合いは苦手、笑顔もぎこちない。おまけにパン作りは素人も同然。
「私に、できるのだろうか……」
それでも、彼女が心を込めて焼き上げるパンは、なぜか人の心を惹きつける。幼馴染のツッコミ、忠実な執事のサポート、そしてパンの師匠との出会い。少しずつ開いていくフィオナの心と、広がっていく温かい人の輪。
これは、どん底から立ち上がり、自分の「好き」を信じて一歩ずつ前に進む少女の物語。彼女の焼くパンのように、優しくて、ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなるお話です。読後、きっとあなたも誰かのために何かを作りたくなるはず。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる