21 / 43
母になります!!
「殿下…この仔はいったい?」
私は淑女としてなるべく落ち着いて、冷静にそう問い掛けたつもりだったけど。
「でで…殿下…ッッ、ここ…きょの、この仔はいったい……ッッ」
実際は噛むはどもるは息も荒いわで、かなり無様なことになっていたと思う。
いや、だって、仕方がないでしょ!?
この世界に猫はいない
そう聞かされてどん底まで落ち込んで、生きてる意味すらないってくらいって思い込んでたのよ??
なのにこの仔はなんなの??
可愛い
可愛すぎる!!
茶と白のふわふわ体毛に、ちょこんとついた丸い耳。まだ開いたばかりの目は、なんだか目つきが悪いけども、それもまた仔猫の可愛さの一つ!!そしてみーみーと、甲高く小さな鳴き声。
うあああああああっっっ!!!!
天使!!!!
いや天使でしょマジで!!??
「魔物ッ…魔物の幼体…ですわよね…??」
「えっ、ご、ごめん!!怖かった!?」
確認のためこの仔の正体について質問したら、私が怖がってるかのように勘違いしたのだろう、殿下が手を伸ばして私の手から仔猫を奪い取ろうとした。
「なにするんですのーッッ!!」
ので、私は奇声を上げながら素早く彼の手を避け続け、手の中で震える小さな仔猫を頑として死守した。
「えっ、え??こ、恐いんじゃないの?」
「こんな可愛い子のどこが怖いですかああああ!!!!」
いかん。興奮しすぎて声のボリュームを調整できてない。
「ご、ごめんね~怖かったね~よしよし、大丈夫よ~」
手の中で仔猫がビクッとしたのを感じて、私は声を極力抑え甘えた声で話しかけた。もちろん殿下にではなく、手の中の小さな仔猫に対して、だ。
「殿下のせいで怖がらせちゃったでしありませんか」
「えっ、これ、僕のせいなの??」
私から当たり前みたいに責任転嫁されて、殿下は、その懐かしい容姿ばかりか、口調までも幼い頃のようになっていた。なんだか、きょとんっとした様子が、子供みたいで可愛い。
──あ、っていうか、ごめんごめん。
そうだよね。確かにこれ私のせいだった。と、一瞬遅れて我に返る。
「ごめんなさい…つい、興奮して…それで…あの、この仔は…」
「え、あ…あ、そうだったね…」
叫んだおかげで、ちょっと落ち着いた。
という訳でようやく最初の疑問へ返ると、殿下もハッとして事情を話してくれたのだった。
王都の北に位置する森。
そこには比較的弱い魔物が多く生息していた。
どのくらい弱いかというと、武器を持ってさえいれば、人間の大人なら簡単に倒せるくらいに。
しかし弱いからといって放置すると、増えすぎた魔物が国民生活に被害を及ぼすかもしれない。
そういう理由で数年に一度、大規模な魔物狩りが行われている。要するに間引きだ。
そして今年はその『間引き年』で、つい先日、王家は騎士団を派遣して魔物を狩ったらしい。
殿下の話を聞きながら私は『あ~それ、たぶん、ストーリー序盤の戦闘ステージだろうな~』などと秘かに考えていた。あれあれ、RPGにありがちな、初心者用ダンジョンみたいなとこ。感覚からしてレベル1から10くらい??の弱~い魔物しかいない、みたいな??
「あーるぴーじー??って??」
「あっ、いえ、なんでも…続きをどうぞ」
しまった。うっかり口に出てたわ。
「あ、うん、続けるね」
私の口から零れた前世の言葉に、殿下が『なんのこと??』と頭を傾げるので、私は適当に言葉を濁して誤魔化すと話を続けさせた。
「本来、ケット・シーは駆除対象外なんだ」
何故かと言うと弱い魔物の中でも格段に弱いから。聞けばスライムに次ぐ弱さらしい。しかも繁殖力が弱く、生まれた子魔物の生存率も低いのだそうだ。
「けど…そうしたら、この仔はいったい…?」
「うん。どうやら子育て中に、他の魔物に襲われたようでね…騎士が見つけた時は、親と子がほとんど殺されていた状態だったらしい」
「…………ッッ」
前世でもそういうことはよくあった。
だからこそ親猫は仔猫を守るために、ちょくちょく子育ての巣を変えるのだ。
それはすべての野生で生きる動物たちには、逃れられない運命のようなものだけれど。
でも、SNSなどでそういう情報を見るたびに、私は貰い泣きをしていたものだった。
私は淑女としてなるべく落ち着いて、冷静にそう問い掛けたつもりだったけど。
「でで…殿下…ッッ、ここ…きょの、この仔はいったい……ッッ」
実際は噛むはどもるは息も荒いわで、かなり無様なことになっていたと思う。
いや、だって、仕方がないでしょ!?
この世界に猫はいない
そう聞かされてどん底まで落ち込んで、生きてる意味すらないってくらいって思い込んでたのよ??
なのにこの仔はなんなの??
可愛い
可愛すぎる!!
茶と白のふわふわ体毛に、ちょこんとついた丸い耳。まだ開いたばかりの目は、なんだか目つきが悪いけども、それもまた仔猫の可愛さの一つ!!そしてみーみーと、甲高く小さな鳴き声。
うあああああああっっっ!!!!
天使!!!!
いや天使でしょマジで!!??
「魔物ッ…魔物の幼体…ですわよね…??」
「えっ、ご、ごめん!!怖かった!?」
確認のためこの仔の正体について質問したら、私が怖がってるかのように勘違いしたのだろう、殿下が手を伸ばして私の手から仔猫を奪い取ろうとした。
「なにするんですのーッッ!!」
ので、私は奇声を上げながら素早く彼の手を避け続け、手の中で震える小さな仔猫を頑として死守した。
「えっ、え??こ、恐いんじゃないの?」
「こんな可愛い子のどこが怖いですかああああ!!!!」
いかん。興奮しすぎて声のボリュームを調整できてない。
「ご、ごめんね~怖かったね~よしよし、大丈夫よ~」
手の中で仔猫がビクッとしたのを感じて、私は声を極力抑え甘えた声で話しかけた。もちろん殿下にではなく、手の中の小さな仔猫に対して、だ。
「殿下のせいで怖がらせちゃったでしありませんか」
「えっ、これ、僕のせいなの??」
私から当たり前みたいに責任転嫁されて、殿下は、その懐かしい容姿ばかりか、口調までも幼い頃のようになっていた。なんだか、きょとんっとした様子が、子供みたいで可愛い。
──あ、っていうか、ごめんごめん。
そうだよね。確かにこれ私のせいだった。と、一瞬遅れて我に返る。
「ごめんなさい…つい、興奮して…それで…あの、この仔は…」
「え、あ…あ、そうだったね…」
叫んだおかげで、ちょっと落ち着いた。
という訳でようやく最初の疑問へ返ると、殿下もハッとして事情を話してくれたのだった。
王都の北に位置する森。
そこには比較的弱い魔物が多く生息していた。
どのくらい弱いかというと、武器を持ってさえいれば、人間の大人なら簡単に倒せるくらいに。
しかし弱いからといって放置すると、増えすぎた魔物が国民生活に被害を及ぼすかもしれない。
そういう理由で数年に一度、大規模な魔物狩りが行われている。要するに間引きだ。
そして今年はその『間引き年』で、つい先日、王家は騎士団を派遣して魔物を狩ったらしい。
殿下の話を聞きながら私は『あ~それ、たぶん、ストーリー序盤の戦闘ステージだろうな~』などと秘かに考えていた。あれあれ、RPGにありがちな、初心者用ダンジョンみたいなとこ。感覚からしてレベル1から10くらい??の弱~い魔物しかいない、みたいな??
「あーるぴーじー??って??」
「あっ、いえ、なんでも…続きをどうぞ」
しまった。うっかり口に出てたわ。
「あ、うん、続けるね」
私の口から零れた前世の言葉に、殿下が『なんのこと??』と頭を傾げるので、私は適当に言葉を濁して誤魔化すと話を続けさせた。
「本来、ケット・シーは駆除対象外なんだ」
何故かと言うと弱い魔物の中でも格段に弱いから。聞けばスライムに次ぐ弱さらしい。しかも繁殖力が弱く、生まれた子魔物の生存率も低いのだそうだ。
「けど…そうしたら、この仔はいったい…?」
「うん。どうやら子育て中に、他の魔物に襲われたようでね…騎士が見つけた時は、親と子がほとんど殺されていた状態だったらしい」
「…………ッッ」
前世でもそういうことはよくあった。
だからこそ親猫は仔猫を守るために、ちょくちょく子育ての巣を変えるのだ。
それはすべての野生で生きる動物たちには、逃れられない運命のようなものだけれど。
でも、SNSなどでそういう情報を見るたびに、私は貰い泣きをしていたものだった。
あなたにおすすめの小説
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
【完結】成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。