八百屋勤めの聖女様

RINFAM

文字の大きさ
1 / 8

転生した大聖女

しおりを挟む
 こんにちは!!
私はとあるスーパーの青果店に勤める前向あかり!!20歳です!!

 私は地元の高校を卒業後、お婆ちゃんの知人がやってる青果店へ就職!!もともと、お野菜や果物が大好きで、家でも家庭菜園で野菜育ててたりするので、この仕事は実に天職だと思っております!!
 就職して2年。今や計量器無しでインゲン200グラムが計れたり、イモ1個の重量がなんとなく解ったりします!!…いっそ農家に勤めれば良かったかなぁ??とも思う今日この頃ですが……まあ、今の職場気に入ってるので良いかな??
 なによりここで働いていると、野菜や果物を手に取って喜ぶお客様の姿を直に見れるので、それがなにより嬉しかったりします!!

 そんな平々凡々の日々を過ごしている私ですが、実は前世は大聖女だったのです!!

 ……………あ、引かれた。

 まあ、そうだよねぇ。

 こんな夢みたいなこと言って、引かれない方がどうかしてるわ。

 自分で言っててちょっと吹いたし。

 しかしこれは真実なのです。前世の記憶が甦った時、自分でもちょっと信じられなかったけど。

 実は、前世で『大聖女』と呼ばれていたことを、私はほんのつい最近、思い出したばかりだったりする。前世の記憶を思い出しただけなら、頭でも打って現実とファンタジーがごっちゃにってるかも??と疑うところだけど、ついでに大聖女の持つ力を発現してしまったので、信じられなくても信じるほかなかった。

 その力とは、大いなる癒しの力。

 怪我はもちろん、病気すら癒してしまう、いわゆる超能力みたいなもの??いや、どちらかというと魔法かな??しかも、大聖女と呼ばれただけあって、その力はチート過ぎる威力で。

 まず、怪我なら擦り傷はもちろん、欠損すら治してしまうレベル。
 そして病気は、老衰以外で治せないものはないレベルだったりした。
 つまり、寿命でもない限り、治療できない怪我や病気はない、という冗談みたいな威力なのだ。

 しかもどうやら、魔力が無限に近い。

 ちょっと笑ってしまうチートさだ。

 この力と記憶とが甦ったのは、今世で唯一の肉親であるお婆ちゃんが、痴呆で私の名前を忘れてしまった時。
「どなたですか??」
 大好きなお婆ちゃんにそう言われた時、哀しくて怖くて私は泣きながらお婆ちゃんに縋りついた。
「やだ…忘れちゃやだぁ……!!」
 縋りついてそう願った時、癒しの力が発現した。前世の記憶と共に。
 そしてお婆ちゃんは、どうなったかというと──

「あかり~!!ちょっとお買い物に行ってくるわね~!!」
「あ~うん、気を付けてね」
 ぼんやり回想していた私の背後を、軽快に走って出て行ったのが、現在の私のお婆ちゃんの光代(82歳)の雄姿だ。
「………う~ん…元気になって良かった…けど」
 力の加減が出来なかったせいか、ちょっと若返った気がしないでもない。
 なにせ、以前は軽くボケも始まっていたし、腰は曲がって杖無しでは歩けなかったし、目も白内障でよく見えていなかった。神経痛他に持病もあれこれ持ってたし、365日、病院へ通わずに済む日は無かったくらいだ。
 なのに、大聖女の力で癒した途端、90度近く曲がっていた腰は真っ直ぐになって、白内障も痴呆も神経痛も完治し、ばかりか、入れ歯になってた歯すらも元通りになっていた。
 とはいえもちろん、大聖女と言えどさすがに若返りの力なんて持っていないから、治せたのは病気と名の付くものに限るけども。
 でも、老齢による病をすべて治癒したら、人間ってこんなに若々しくなるんだ??と、今のお婆ちゃんを見てしみじみ思ったよね。まあ、やり過ぎの感は否めないけども。何度も言うけど、仕方ないよね??発現したばかりで制御効かなかったんだからさ。

 おかげで今、お婆ちゃんはめちゃくちゃ元気だ。
 健康になって第二の人生を歩み始めたと言っても過言じゃなかった。

 もちろん、すべての病を失くしても、寿命が延びた訳ではない。
 だからいつか、お婆ちゃんとの別れの日は来るだろう。
 それは痛いほど分っていた。
 でも、どうせならこうして、人生の最後の時まで、元気でいてくれれば良いと思う。

 そのためなら私は、何度でもお婆ちゃんを癒す。
 病の苦しみから遠ざけてやりたい。
 私の身勝手な願いかも知れないけれど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

処理中です...