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前世の物語②
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小説の中(前世)の私は、リノーシア・ラアムという名前で、死んだ時は18歳だった。
そしてその死の直後、10年前へと逆行転生し、8歳の頃から人生をやり直すことになった…らしい。
まあ要するに『身体は8歳!!知能は18歳!!』の、名探偵ならぬ大聖女…として、10年後に待ち受ける自身の死を回避するため、前回の生18年分の知識と記憶を駆使し、様々に対策・画策して回るのがこの物語の大筋なのだった。
まあ、実際の話、どこをどう間違えたものか、生まれ直す世界そのものからして違うようだけれど。
おかげで前世の知識と記憶も、さほど役に立たない事態に陥ってる。
なにせ世界の仕組みからして違うんだから、これはもうどうしようもない話だ。
それにしても、大聖女たる私の突然の処刑劇に、あの国の王女が関わっていたとは知らなかったよ。
もちろん、小説の中の話がすべて正しいとするなら、だけど──前世の私の死には、『聖女の力を持つ王女』タキータ・ファル・スロータニアが関わっていたことになる、らしい。
「そんな人には見えなかったけどなぁ…」
王宮で数回お目にかかったことがあるだけだが、タキータ王女は気品のある優し気で、儚げな面影を持つ絶世の美少女だった──ように思う。あいにく、その為人を知るほどには親しくなかったので、あくまで見た目だけの印象でしかなかったけども。
「私が一番偉くて、強くて、美しく、敬われる存在でなくてはならないの!!」
少なくともそんな台詞を吐く人には見えなかった。
「綺麗で優しい人だなぁ…」
庶民出身の私から見たら、彼女は、眩しいくらいの存在で。
ちょっぴり憧れてもいたし、心から尊敬してもいた。
なのに彼女はその自尊心のあまり、『大聖女』という存在が許せなくなって、私が18歳の誕生日を迎えたあの日、あらゆる罪を被せて処刑されるよう仕組んだのだ。
物語の中の私は、王女の真の顔に酷く驚いていたが、正直、私は、今でも信じられない気持ちでいる。
でも、本を読んで少し解ったことがあった。
実は、王女の私へ向ける凄まじいほどの嫉妬心や憎悪には、私の『大聖女』としての立場や強大な力に対してだけのものではない『別の要素』があったのだ。
それが何かといったら、物凄くありきたりだけども、女の嫉妬の影に男有り??ってやつ。
王女は私の護衛騎士に惚れていたのだ。
けれど護衛騎士の彼は、私のことしか見えてない。
それが憎くて悔しくて、恨めしくて。
私さえいなければ、と思ったらしかった。
「そんなに好きだったのか~」
前世では全然、王女のそんなそぶりに気付かなかったよ。
小説によると、彼女がすんごい目で私を睨んでたことも一度や二度ではなかったらしいけど、私はそれにもまったく気付いていなかった。
ああ、でも、そういわれてみれば、護衛騎士の彼が、王女のことを苦手そうにしていた気もする。
その一方、前世の私ときたら、恋だの愛だのにまるっきり疎くて。
護衛騎士の彼が私に対して、そんな想いを抱いていただなんて、気付くどころか考えもしていなかった。
「うーん……これってホントに私の世界の話なのか??」
あまりにも知らないことだらけで、私は、ひょっとしてこれは『偶然の一致で似てるだけの単なる空想小説なのでは??』と思ったりもしたが──それにしては記憶と一致する出来事が多すぎた。
「うん!!考えても解んないことは解んないよね!!」
なんか色々と混乱してきたし、もしもこれが本当に前世の話だとしても、今となってはまったく関わりない話なので、私は買って来た小説を本棚にしまって放置することにした。
そしてその死の直後、10年前へと逆行転生し、8歳の頃から人生をやり直すことになった…らしい。
まあ要するに『身体は8歳!!知能は18歳!!』の、名探偵ならぬ大聖女…として、10年後に待ち受ける自身の死を回避するため、前回の生18年分の知識と記憶を駆使し、様々に対策・画策して回るのがこの物語の大筋なのだった。
まあ、実際の話、どこをどう間違えたものか、生まれ直す世界そのものからして違うようだけれど。
おかげで前世の知識と記憶も、さほど役に立たない事態に陥ってる。
なにせ世界の仕組みからして違うんだから、これはもうどうしようもない話だ。
それにしても、大聖女たる私の突然の処刑劇に、あの国の王女が関わっていたとは知らなかったよ。
もちろん、小説の中の話がすべて正しいとするなら、だけど──前世の私の死には、『聖女の力を持つ王女』タキータ・ファル・スロータニアが関わっていたことになる、らしい。
「そんな人には見えなかったけどなぁ…」
王宮で数回お目にかかったことがあるだけだが、タキータ王女は気品のある優し気で、儚げな面影を持つ絶世の美少女だった──ように思う。あいにく、その為人を知るほどには親しくなかったので、あくまで見た目だけの印象でしかなかったけども。
「私が一番偉くて、強くて、美しく、敬われる存在でなくてはならないの!!」
少なくともそんな台詞を吐く人には見えなかった。
「綺麗で優しい人だなぁ…」
庶民出身の私から見たら、彼女は、眩しいくらいの存在で。
ちょっぴり憧れてもいたし、心から尊敬してもいた。
なのに彼女はその自尊心のあまり、『大聖女』という存在が許せなくなって、私が18歳の誕生日を迎えたあの日、あらゆる罪を被せて処刑されるよう仕組んだのだ。
物語の中の私は、王女の真の顔に酷く驚いていたが、正直、私は、今でも信じられない気持ちでいる。
でも、本を読んで少し解ったことがあった。
実は、王女の私へ向ける凄まじいほどの嫉妬心や憎悪には、私の『大聖女』としての立場や強大な力に対してだけのものではない『別の要素』があったのだ。
それが何かといったら、物凄くありきたりだけども、女の嫉妬の影に男有り??ってやつ。
王女は私の護衛騎士に惚れていたのだ。
けれど護衛騎士の彼は、私のことしか見えてない。
それが憎くて悔しくて、恨めしくて。
私さえいなければ、と思ったらしかった。
「そんなに好きだったのか~」
前世では全然、王女のそんなそぶりに気付かなかったよ。
小説によると、彼女がすんごい目で私を睨んでたことも一度や二度ではなかったらしいけど、私はそれにもまったく気付いていなかった。
ああ、でも、そういわれてみれば、護衛騎士の彼が、王女のことを苦手そうにしていた気もする。
その一方、前世の私ときたら、恋だの愛だのにまるっきり疎くて。
護衛騎士の彼が私に対して、そんな想いを抱いていただなんて、気付くどころか考えもしていなかった。
「うーん……これってホントに私の世界の話なのか??」
あまりにも知らないことだらけで、私は、ひょっとしてこれは『偶然の一致で似てるだけの単なる空想小説なのでは??』と思ったりもしたが──それにしては記憶と一致する出来事が多すぎた。
「うん!!考えても解んないことは解んないよね!!」
なんか色々と混乱してきたし、もしもこれが本当に前世の話だとしても、今となってはまったく関わりない話なので、私は買って来た小説を本棚にしまって放置することにした。
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