異世界戦記

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第四話 魔力の目覚め

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ブラッドウルフとの戦いから数日。和也は騎士団の詰所での新たな日々に、少しずつ馴染んでいた。だが、自分がどこか「守られている」立場にあることへの歯がゆさを感じていた。

「このままじゃ、俺はただの足手まといだ……。」

ふと、窓から見える訓練場では、ロイドたち騎士が剣を振るい、盾を構え、汗を流していた。そんな彼らと自分の姿を比べると、胸の内に小さな焦りが生まれる。

その日の午後、ロイドが和也を訓練場へと呼び出した。
「和也、お前に試してもらいたいことがある。」

「試すって……なんだ?」

和也の問いに、ロイドは訓練場の一角にある丸い水晶を指差した。水晶は透き通るように輝いており、不思議な魅力を放っていた。

「これは『魔力測定の水晶』だ。この世界に生きる者なら、誰しも魔力を持っている。お前もその例外ではないはずだ。」

「魔力……。俺にもそんな力が?」

「実際にやってみれば分かる。手をかざしてみろ。」

和也は少し緊張しながらも、水晶に手をかざした。すると、無色透明だった水晶の中が淡い光で満たされ、やがて鮮やかな赤い輝きが広がった。

「これは……炎属性の魔力だな。」
ロイドの目が驚きに見開かれる。

「俺に魔法の才能が……?」

「驚くのはまだ早いぞ。お前の魔力はかなり強い。だが制御できるかどうかが鍵だ。」

ロイドは和也に、炎属性の基本魔法「ファイアボルト」を試すよう指導した。
「心の中で炎をイメージしろ。それが放たれる瞬間まで描くんだ。」

和也は深く息を吸い込み、手のひらを前に突き出した。頭の中で小さな火球が形作られるのを感じながら、呪文を唱える。

「ファイアボルト!」

次の瞬間、和也の手のひらから小さな火の玉が飛び出し、訓練場の的に命中した。目標は黒焦げになり、煙を立てていた。

「やった……!」
初めて成功した魔法に、和也は喜びの声を上げた。

だがロイドは、どこか厳しい目で和也を見つめていた。
「確かにお前は才能がある。だがその才能を扱いきれなければ、自分自身を傷つけることになる。」

和也が魔法の訓練を続けている頃、村の遠くで異変が起きていた。

「見張りの兵士が戻らない……?」
詰所に緊張が走る。

その夜、和也が宿舎で休もうとしていると、警鐘の音が響き渡った。騎士団員たちが一斉に動き出し、村の方向に向かっていく。慌てて後を追った和也の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。

「……なんだ、あれは。」

森の向こうから現れたのは、山のような巨体を持つ魔物だった。その姿は無数の蔦に覆われ、光る眼は村を見下ろしていた。

「A級魔物の『トレントロード』……!」
ロイドが険しい顔で呟く。

「A級……って、やばいやつだよな?」
和也の声が震える。

「その通りだ。この村が滅ぶ危険もあるレベルだ。だが、やるしかない。和也、お前は後方から魔法で援護しろ。」

「わ、分かった!」

和也はその場で必死にファイアボルトを唱える準備を始めた。巨大なトレントロードがゆっくりと村に迫り来る中、彼は初めての大規模な戦いに立ち向かう決意を固めるのだった。
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