異世界戦記

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第十話 不正解

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あの選択が間違っていたのかどうか、今でもわからない。
それでも、あの日俺たちは精髄を前にし、自分たちなりの答えを選んだ。それがこの世界に何をもたらしたのか、今もなお考えることがある。

時が経ち、この世界に平穏が戻った。
以前、村人たちを脅かしていた異形の魔物はもう姿を見せなくなっている。それらは精髄の力によって生み出された存在だったのだと、あの戦いの後にわかった。森や山の中で暮らす者たちは、安心した表情で暮らしを続けている。

リリスが言っていた。
「精髄は、この世界の根幹を支える力でありながら、同時に破壊の種でもあった。私たちが向き合った魔物たちは、精髄の暴走が生んだものだったのよ。」

その話を聞いたとき、胸の奥に小さな痛みが走った。俺たちが倒してきた魔物たちは、ある意味この世界の犠牲者でもあったのだ。そう思うと、自分の剣が無力であったように感じる。だが、それでもリリスは言った。
「和也、あなたが戦ってくれたから、多くの人が救われたのよ。それだけは忘れないで。」

村の広場では、子供たちが楽しそうに遊んでいた。
「あのね、今日の授業で、また和也お兄ちゃんの話が出たんだよ!」
ある少年が嬉しそうに報告してくる。彼らにとって俺は、異世界から来た英雄のような存在だ。精髄を巡る戦いの話は、いつの間にか物語として語り継がれるようになっていた。俺は苦笑しながらも、彼らの話に耳を傾ける。

夜になると、リリスと二人で火を囲みながら話すのが日課になっていた。
「和也、後悔してる?」
突然の問いに、俺は少し驚いた。だが、彼女の瞳は真剣だった。

「正直なところ、わからないよ。」
俺は火の揺らめきを見つめながら答えた。
「でも、少なくとも俺たちが選んだ道の先に、こうして穏やかな生活がある。そう思うと、間違いではなかったのかもしれない。」

リリスは静かにうなずいた。

「ただ、君と弟を会わせてあげたかったよ」

リリスは少し困ったように表情をしながら
「今でも弟と会いたいと思うけど、守れたものもある。それがこの世界での新しい意味なんじゃないかと思うの。」

その言葉を聞き、俺は少しだけ心が軽くなった気がした。

いつかまた、新しい歪みが生まれることがあるのかもしれない。その時は、俺たちが選んだ道が本当に正しかったのか、わかるのかもしれない。
だが、それはまだ遠い未来の話だ。今はただ、この世界での暮らしを大切にしていこうと思う。和也として、そしてこの世界の一員として。
あの日の選択が不正解だったとしても。
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