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思い立ったときのこと
告白について
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「これから、壮絶な告白をします」
「……はあ」
いつもの突飛な宣言に、僕は生返事で応えた。
こたつを挟んで向かい。どてらを羽織り背を丸める朱音観子は一発芸でもやります、みたいなノリでそんなことを言い出したのだ。これまで彼女の蛮行を何度も見てきた僕は、遮ろうと反論しようと仕方ないことを知っているので、ただ促すだけだ。
「……なんだその気の抜けた返事は」
「こたつにアゴ乗せて凄んでるひとのいうことですか。全部終わったからってだらけすぎですよミッコさん」
朱音観子。愛称ミッコ。ミルコ、でも許してくれるが朱音さんや観子さんだと睨んでくる。ちゃん付けはファンブル扱いで、もともと予測不可能なミッコさんが輪をかけてわからないことをしでかすので絶対にしてはいけない。
全部終わった、というのはまさしく全部だ。超人、唯一、人類史上最強の個人。向かうところ敵なしの来た見た勝った。ミッコさんは改めて見ると細いその肩で風を切り、立ちはだかる苦難困難を退け世界平和を成し遂げた。今のミッコさんは、そんなブッチギリ記録更新でゴールしたマラソンランナーがインタビューを受けているような立ち位置にいるのだ。
「仕方ないでしょう疲れたのですから」
「疲れたって言えるウチはまだまだだって言ってませんでした?」
「もうこれ以上まだってことはないだろう。世界を救ったのですから」
ひどく眠そうにミッコさんは突っ伏す。無理もない。いわゆる世界平和、朱音観子の名の下一切の暴力悪虐が意味を為さなくなったのはつい三十分前、いま振り返るとなんてことはない昼下がりのことだったのだから。
「そもそも告白ってなんですミッコさん」
「あー、そう。そうですね。……新しい目標、みたいな?」
「告白ってあの?」
「…………あの」
歯切れ悪く、ミッコさんはこたつの天板に指でハートマークを書いてみせた。、
いやぁ、驚天動地。
空前絶後の偉業のあとだ。世界はきっと大きく変わっていくだろう――などと傍観者らしくミッコさんの激闘の結末を見届けながら思っていたのだが、まさか。
「まさかミッコさんが色恋にうつつを抜かすとは……」
「きみは本当に恐いもの知らずだな。これまでの道中、その呑気さに何度救われてきたことか……」
「ミッコさんが許してくれるなら、これからもそばで見てますよ。告白の行く末も気になりますしね」
「…………」
睨まれた。
いや、ミッコさんが本気で視線に敵意を籠めていたらこんな安普請のアパートの壁など打ち抜かれていたから、あくまでコミュニケーションとしての視線だろう。ジト目というやつか。
「……はあ」
いつもの突飛な宣言に、僕は生返事で応えた。
こたつを挟んで向かい。どてらを羽織り背を丸める朱音観子は一発芸でもやります、みたいなノリでそんなことを言い出したのだ。これまで彼女の蛮行を何度も見てきた僕は、遮ろうと反論しようと仕方ないことを知っているので、ただ促すだけだ。
「……なんだその気の抜けた返事は」
「こたつにアゴ乗せて凄んでるひとのいうことですか。全部終わったからってだらけすぎですよミッコさん」
朱音観子。愛称ミッコ。ミルコ、でも許してくれるが朱音さんや観子さんだと睨んでくる。ちゃん付けはファンブル扱いで、もともと予測不可能なミッコさんが輪をかけてわからないことをしでかすので絶対にしてはいけない。
全部終わった、というのはまさしく全部だ。超人、唯一、人類史上最強の個人。向かうところ敵なしの来た見た勝った。ミッコさんは改めて見ると細いその肩で風を切り、立ちはだかる苦難困難を退け世界平和を成し遂げた。今のミッコさんは、そんなブッチギリ記録更新でゴールしたマラソンランナーがインタビューを受けているような立ち位置にいるのだ。
「仕方ないでしょう疲れたのですから」
「疲れたって言えるウチはまだまだだって言ってませんでした?」
「もうこれ以上まだってことはないだろう。世界を救ったのですから」
ひどく眠そうにミッコさんは突っ伏す。無理もない。いわゆる世界平和、朱音観子の名の下一切の暴力悪虐が意味を為さなくなったのはつい三十分前、いま振り返るとなんてことはない昼下がりのことだったのだから。
「そもそも告白ってなんですミッコさん」
「あー、そう。そうですね。……新しい目標、みたいな?」
「告白ってあの?」
「…………あの」
歯切れ悪く、ミッコさんはこたつの天板に指でハートマークを書いてみせた。、
いやぁ、驚天動地。
空前絶後の偉業のあとだ。世界はきっと大きく変わっていくだろう――などと傍観者らしくミッコさんの激闘の結末を見届けながら思っていたのだが、まさか。
「まさかミッコさんが色恋にうつつを抜かすとは……」
「きみは本当に恐いもの知らずだな。これまでの道中、その呑気さに何度救われてきたことか……」
「ミッコさんが許してくれるなら、これからもそばで見てますよ。告白の行く末も気になりますしね」
「…………」
睨まれた。
いや、ミッコさんが本気で視線に敵意を籠めていたらこんな安普請のアパートの壁など打ち抜かれていたから、あくまでコミュニケーションとしての視線だろう。ジト目というやつか。
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