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第五章 嵐の予兆
とりあえずの決着
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舞踏会は、大混乱の中で終わった。
王は、自身が主催した舞踏会で起きた事件を、そのままにするつもりはなかった。徹底的に調査させた。
ヴァルモント公爵の従者を襲ったのは、フォンティーヌ家の従者であることも判明した。
客室に残されていた水差しを、王立薬学院の学者たちが分析した結果、媚薬が含まれていることも明らかになった。
王は調査結果を公表しなかったが。
噂というものは、どうしようもなく広がる。
「ダルクール侯爵夫人が、ヴァルモント公爵を誘惑しようとした」
「媚薬まで使って」
「なんという恥知らず」
人々の非難は、リリアーナに集中した。
そして、その醜聞は、フォンティーヌ家にも飛び火した。
◇ ◇ ◇
数日後、エリアナの元に、フォンティーヌ家からの手紙が届いた。
父からだった。
「エリアナへ
リリアーナの不祥事について、深くお詫び申し上げる。
私たちの教育が至らなかった。
どうか、ヴァルモント公爵には、我が家への怒りをお鎮めいただきたい。
『リリアーヌは悪くない』と公爵の口から証言していただくよう、そなたからもよく頼んでもらいたい。
このままでは、我が家の評判が……」
エリアナは、手紙を置いた。
今さら、何を言っているのか。
自分が苦しんでいた時には、何もしてくれなかった父が。
リリアーナを甘やかし続けた父が。
今になって、家の評判を心配している。
「返事は書かなくていい」
アレクシスが、エリアナの肩に手を置いた。
「あの家族とは、もう関わる必要はない」
「でも……」
「君は、もうフォンティーヌ家の人間ではない。ヴァルモント家の人間だ」
その言葉が、エリアナを解放した。
「そうね。もう、関わる必要はないわ」
彼女は、手紙を暖炉に投げ入れた。
炎が、紙を飲み込んでいく。
過去との決別。エリアナは、すっきりとした気持ちになった。
「これから、どうなるのかしら。リリアーナは」
「王の裁きを受けることになるだろう。おそらく、社交界からの追放だ」
「そう……」
エリアナは、複雑な気持ちだった。
リリアーナがアレクシスを彼女から奪おうとした。それは確かに許せない。処罰を受けるのも当然だろう。でも――。
「エリアナ」
アレクシスが、彼女を抱きしめた。
「君は、優しすぎる。あれだけのことをされたのに、まだ妹のことを心配している」
「憎めないの。可哀想だと思ってしまう」
「彼女のことは、父親であるフォンティーヌ伯爵がなんとかするだろう。心配してやる必要はないさ」
二人は、しばらく抱き合っていた。
「これで、本当に終わったのかしら」
「ああ。もう、誰も君を傷つけることはできない」
しかし——
アレクシスの予想は、外れていた。
リリアーナと母親は、まだあきらめていなかった。
追い詰められた獣は、最も危険だ。
そして、彼女たちの最後の企みが、エリアナとアレクシスを襲うことになる。
それは、およそ半年後のことだった。
王は、自身が主催した舞踏会で起きた事件を、そのままにするつもりはなかった。徹底的に調査させた。
ヴァルモント公爵の従者を襲ったのは、フォンティーヌ家の従者であることも判明した。
客室に残されていた水差しを、王立薬学院の学者たちが分析した結果、媚薬が含まれていることも明らかになった。
王は調査結果を公表しなかったが。
噂というものは、どうしようもなく広がる。
「ダルクール侯爵夫人が、ヴァルモント公爵を誘惑しようとした」
「媚薬まで使って」
「なんという恥知らず」
人々の非難は、リリアーナに集中した。
そして、その醜聞は、フォンティーヌ家にも飛び火した。
◇ ◇ ◇
数日後、エリアナの元に、フォンティーヌ家からの手紙が届いた。
父からだった。
「エリアナへ
リリアーナの不祥事について、深くお詫び申し上げる。
私たちの教育が至らなかった。
どうか、ヴァルモント公爵には、我が家への怒りをお鎮めいただきたい。
『リリアーヌは悪くない』と公爵の口から証言していただくよう、そなたからもよく頼んでもらいたい。
このままでは、我が家の評判が……」
エリアナは、手紙を置いた。
今さら、何を言っているのか。
自分が苦しんでいた時には、何もしてくれなかった父が。
リリアーナを甘やかし続けた父が。
今になって、家の評判を心配している。
「返事は書かなくていい」
アレクシスが、エリアナの肩に手を置いた。
「あの家族とは、もう関わる必要はない」
「でも……」
「君は、もうフォンティーヌ家の人間ではない。ヴァルモント家の人間だ」
その言葉が、エリアナを解放した。
「そうね。もう、関わる必要はないわ」
彼女は、手紙を暖炉に投げ入れた。
炎が、紙を飲み込んでいく。
過去との決別。エリアナは、すっきりとした気持ちになった。
「これから、どうなるのかしら。リリアーナは」
「王の裁きを受けることになるだろう。おそらく、社交界からの追放だ」
「そう……」
エリアナは、複雑な気持ちだった。
リリアーナがアレクシスを彼女から奪おうとした。それは確かに許せない。処罰を受けるのも当然だろう。でも――。
「エリアナ」
アレクシスが、彼女を抱きしめた。
「君は、優しすぎる。あれだけのことをされたのに、まだ妹のことを心配している」
「憎めないの。可哀想だと思ってしまう」
「彼女のことは、父親であるフォンティーヌ伯爵がなんとかするだろう。心配してやる必要はないさ」
二人は、しばらく抱き合っていた。
「これで、本当に終わったのかしら」
「ああ。もう、誰も君を傷つけることはできない」
しかし——
アレクシスの予想は、外れていた。
リリアーナと母親は、まだあきらめていなかった。
追い詰められた獣は、最も危険だ。
そして、彼女たちの最後の企みが、エリアナとアレクシスを襲うことになる。
それは、およそ半年後のことだった。
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