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第六章 陰謀
あきらめの悪い者たち
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リリアーナの醜聞は、社交界を揺るがした。
彼女が媚薬を使ってアレクシスを誘惑しようとした事実は、皆に広まった。
「ダルクール侯爵夫人に、三年間の王宮への出入り禁止を命じる」
王の裁定が下された。
それは、貴族にとって屈辱的な処分だった。
そのような処分を受けた者を、夜会や茶会に招いてくれる貴族などいない。
リリアーナは社交界から完全に締め出されることになってしまった。
それは当然、夫であるアンリの社交にも影響を及ぼす。
「なぜ、こんなことをした!」
激怒したアンリは、リリアーナを罵倒した。
「私の名誉に、泥を塗った!」
リリアーナは涙を流した。
でも、それは後悔の涙ではなかった。悔しさの涙だった。
(あなたさえ、わたくしをちゃんと愛してくれていれば……わたくしもこんなことはしなかったのに)
リリアーナは屋敷に幽閉された。
一人で過ごす長い夜。じっと鏡を見る。
そこに映っているのは、美しい顔。
でも、その美しさが、今は呪いのように感じられた。
誰もが、この顔しか見ない。
心の中を、誰も見てくれない。
アンリだって、妻には顔しか求めていないのだ。リリアーヌとの会話を楽しんだり、彼女をもっと知ろうとしたりしてくれたことはない。
「女には高価な物さえ与えておけば喜ぶだろう」
と、値段だけで選んだ贈り物をくれる。
リリアーヌに似合うかどうか、リリアーヌの好みかどうかなど、アンリにとってはどうでもいいのだ。
心のこもらない贈り物を、「高価なものだから」と、喜んでいるふりをする毎日――。
アンリが贈り物をくれるのは、十中八九、外で浮気をしてきたときだ。罪の意識をまぎらわそうとしているのだろう。
エリアナは違った。
彼女は、アレクシスに心から愛されていた。
それが、羨ましかった。どうしようもないほどに。
侍女が入ってきた。「お母様がおいでになっています」というので、通させた。
着飾った母、マルグリットが入ってきた。
「リリアーナ」
「お母様……!」
マルグリットは、涙ぐむ娘を抱きしめた。
「可哀想に。全て、エリアナのせいよ」
「お姉様の……」
「そうよ。あの女が、すべての原因なの」
マルグリットの目が、危険な光を放った。
「あの女を、このまま放っておくわけにはいかないわ」
「でも、もうどうしようも……」
「いいえ」
マルグリットは、低い声で言った。
「まだ、方法はあるわ」
「方法?」
「エリアナを、完全に破滅させるのよ」
その言葉に、リリアーナは目を見開いた。
「ど、どうやって……」
「フォンティーヌ家の秘密を、暴くの」
マルグリットは、邪悪な笑みを浮かべた。
「あなたのお父様が、長年隠してきた不正を。そして、それをヴァルモント家に押しつけるのよ」
「押しつける?」
「そう。不正の証拠を、ヴァルモント家が関与していたように偽装するの。そうすれば、アレクシス・ヴァルモントも、エリアナも、まとめて破滅させられるわ」
リリアーナは震え上がった。
「でも、それは……危険すぎるわ」
「今さら何を言っているの。私たちは、もう後戻りできないところまで来ているのよ」
マルグリットは、リリアーナの肩を掴んだ。
「このままでは、私たちが破滅する。エリアナより先に、彼女を破滅させなければならないの」
リリアーナは、迷った。
でも——
エリアナの幸せそうな顔が、脳裏に浮かんだ。
アレクシスに愛され、社交界で尊敬され、すべてを手に入れた姉。
片や、汚名にまみれ、社交界では二度と輝けない自分。
その落差に、耐えられなかった。
「……わかったわ」
リリアーナは、ついに決心した。
「お姉様を破滅させましょう。わたくしには、もう失うものは何もない。なんだってやるわ」
二人は邪悪な相談を始めた。
彼女が媚薬を使ってアレクシスを誘惑しようとした事実は、皆に広まった。
「ダルクール侯爵夫人に、三年間の王宮への出入り禁止を命じる」
王の裁定が下された。
それは、貴族にとって屈辱的な処分だった。
そのような処分を受けた者を、夜会や茶会に招いてくれる貴族などいない。
リリアーナは社交界から完全に締め出されることになってしまった。
それは当然、夫であるアンリの社交にも影響を及ぼす。
「なぜ、こんなことをした!」
激怒したアンリは、リリアーナを罵倒した。
「私の名誉に、泥を塗った!」
リリアーナは涙を流した。
でも、それは後悔の涙ではなかった。悔しさの涙だった。
(あなたさえ、わたくしをちゃんと愛してくれていれば……わたくしもこんなことはしなかったのに)
リリアーナは屋敷に幽閉された。
一人で過ごす長い夜。じっと鏡を見る。
そこに映っているのは、美しい顔。
でも、その美しさが、今は呪いのように感じられた。
誰もが、この顔しか見ない。
心の中を、誰も見てくれない。
アンリだって、妻には顔しか求めていないのだ。リリアーヌとの会話を楽しんだり、彼女をもっと知ろうとしたりしてくれたことはない。
「女には高価な物さえ与えておけば喜ぶだろう」
と、値段だけで選んだ贈り物をくれる。
リリアーヌに似合うかどうか、リリアーヌの好みかどうかなど、アンリにとってはどうでもいいのだ。
心のこもらない贈り物を、「高価なものだから」と、喜んでいるふりをする毎日――。
アンリが贈り物をくれるのは、十中八九、外で浮気をしてきたときだ。罪の意識をまぎらわそうとしているのだろう。
エリアナは違った。
彼女は、アレクシスに心から愛されていた。
それが、羨ましかった。どうしようもないほどに。
侍女が入ってきた。「お母様がおいでになっています」というので、通させた。
着飾った母、マルグリットが入ってきた。
「リリアーナ」
「お母様……!」
マルグリットは、涙ぐむ娘を抱きしめた。
「可哀想に。全て、エリアナのせいよ」
「お姉様の……」
「そうよ。あの女が、すべての原因なの」
マルグリットの目が、危険な光を放った。
「あの女を、このまま放っておくわけにはいかないわ」
「でも、もうどうしようも……」
「いいえ」
マルグリットは、低い声で言った。
「まだ、方法はあるわ」
「方法?」
「エリアナを、完全に破滅させるのよ」
その言葉に、リリアーナは目を見開いた。
「ど、どうやって……」
「フォンティーヌ家の秘密を、暴くの」
マルグリットは、邪悪な笑みを浮かべた。
「あなたのお父様が、長年隠してきた不正を。そして、それをヴァルモント家に押しつけるのよ」
「押しつける?」
「そう。不正の証拠を、ヴァルモント家が関与していたように偽装するの。そうすれば、アレクシス・ヴァルモントも、エリアナも、まとめて破滅させられるわ」
リリアーナは震え上がった。
「でも、それは……危険すぎるわ」
「今さら何を言っているの。私たちは、もう後戻りできないところまで来ているのよ」
マルグリットは、リリアーナの肩を掴んだ。
「このままでは、私たちが破滅する。エリアナより先に、彼女を破滅させなければならないの」
リリアーナは、迷った。
でも——
エリアナの幸せそうな顔が、脳裏に浮かんだ。
アレクシスに愛され、社交界で尊敬され、すべてを手に入れた姉。
片や、汚名にまみれ、社交界では二度と輝けない自分。
その落差に、耐えられなかった。
「……わかったわ」
リリアーナは、ついに決心した。
「お姉様を破滅させましょう。わたくしには、もう失うものは何もない。なんだってやるわ」
二人は邪悪な相談を始めた。
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