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第六章 陰謀
さようなら
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緊迫した雰囲気にはふさわしくない声が、窓の外から聞こえてきた。
かん高い、子供たちの声だ。
「王様! 王様!」
「お願い、王様!」
バルコニーの近くに立っていた者が、外へ出て行って見下ろすと。
庭園に、十数人の子供たちの姿があった。
「孤児院の子供たちのようです。どうやってここまで入り込んだのやら」
王宮はふつう、子供が入れる場所ではない。高い塀に囲まれ、門は厳しく警護されている。
しかし、体の小さい子供たちには、何らかの抜け道があるのだろう。
子供たちの声が続いた。
「王様、お願い! エリアナ様を罰しないで!」
「エリアナ様は悪いことなんてしません! いい人です!」
「エリアナ様を許してあげて、王様!」
子供たちをつまみ出そうとして駆け寄った兵士たちも、その言葉に胸を打たれたのか、足を止めた。子供たちが叫ぶに任せていた。
エリアナの目に涙が浮かんだ。
あの子供たちは、この審問の噂を街で聞いて、駆けつけてくれたのか。彼女のために。
エリアナが夫に目をやると。
アレクシスの顔から、「悪魔公爵」の表情が消えていた。あっけにとられたような、笑っていいのかどうか迷っているような――要するに、とても人間らしい表情が浮かんでいた。澄んだ青い瞳がエリアナをみつめ返す。
王の声が響いた。
「エリアナ・ヴァルモント。汝の品行と慈善活動は、我が目にも留まっている。ヴァルモント公爵夫人として、これからも国のために尽くしてくれることを期待する」
「あ……ありがとうございます、陛下」
エリアナは深々と礼をした。
「裁定を申し渡す」
王の口調が変わる。
「フォンティーヌ伯爵ロベールよ。汝の罪は重大だ。本来なら死罪に値するところであるが……実の娘であるヴァルモント公爵夫人に免じて、爵位剥奪、全財産没収、国外追放にとどめることとしよう」
ロベールは礼をするのも忘れて、蒼白な顔でよろめいている。
「マルグリット・フォンティーヌも、同じく、全財産没収、国外追放を命じる」
マルグリットはその場に崩れ落ちた。
「そして、リリアーナ・ダルクールは、社交界からの永久追放とする。夫であるアンリ・ダルクールもすべての官職を解く」
大広間のどよめきは、いつまで経っても収まらなかった。
フォンティーヌ家の完全な没落。
エリアナは、複雑な思いでその光景を見ていた。
父も、継母も、妹も——すべてを失った。
でも、それは彼ら自身が招いた結果だった。
審問は、こうして終わった。
大広間を出る時、エリアナは父の姿を見た。
ロベールは、深くうなだれた姿で立っている。
ひどく打ちひしがれたその姿に、彼の老いが見て取れた。
一瞬、エリアナの心に哀れみが芽生えた。
でも、それだけだった。
もう、この人たちのために涙を流すことはない。
アレクシスが、エリアナの手を取った。
「行こう」
「はい」
二人は、王宮を後にした。
外では、青空が広がっていた。城門の外につまみ出された孤児院の子供たちが、二人の姿を見ると、歓声をあげて駆け寄ってきた。
かん高い、子供たちの声だ。
「王様! 王様!」
「お願い、王様!」
バルコニーの近くに立っていた者が、外へ出て行って見下ろすと。
庭園に、十数人の子供たちの姿があった。
「孤児院の子供たちのようです。どうやってここまで入り込んだのやら」
王宮はふつう、子供が入れる場所ではない。高い塀に囲まれ、門は厳しく警護されている。
しかし、体の小さい子供たちには、何らかの抜け道があるのだろう。
子供たちの声が続いた。
「王様、お願い! エリアナ様を罰しないで!」
「エリアナ様は悪いことなんてしません! いい人です!」
「エリアナ様を許してあげて、王様!」
子供たちをつまみ出そうとして駆け寄った兵士たちも、その言葉に胸を打たれたのか、足を止めた。子供たちが叫ぶに任せていた。
エリアナの目に涙が浮かんだ。
あの子供たちは、この審問の噂を街で聞いて、駆けつけてくれたのか。彼女のために。
エリアナが夫に目をやると。
アレクシスの顔から、「悪魔公爵」の表情が消えていた。あっけにとられたような、笑っていいのかどうか迷っているような――要するに、とても人間らしい表情が浮かんでいた。澄んだ青い瞳がエリアナをみつめ返す。
王の声が響いた。
「エリアナ・ヴァルモント。汝の品行と慈善活動は、我が目にも留まっている。ヴァルモント公爵夫人として、これからも国のために尽くしてくれることを期待する」
「あ……ありがとうございます、陛下」
エリアナは深々と礼をした。
「裁定を申し渡す」
王の口調が変わる。
「フォンティーヌ伯爵ロベールよ。汝の罪は重大だ。本来なら死罪に値するところであるが……実の娘であるヴァルモント公爵夫人に免じて、爵位剥奪、全財産没収、国外追放にとどめることとしよう」
ロベールは礼をするのも忘れて、蒼白な顔でよろめいている。
「マルグリット・フォンティーヌも、同じく、全財産没収、国外追放を命じる」
マルグリットはその場に崩れ落ちた。
「そして、リリアーナ・ダルクールは、社交界からの永久追放とする。夫であるアンリ・ダルクールもすべての官職を解く」
大広間のどよめきは、いつまで経っても収まらなかった。
フォンティーヌ家の完全な没落。
エリアナは、複雑な思いでその光景を見ていた。
父も、継母も、妹も——すべてを失った。
でも、それは彼ら自身が招いた結果だった。
審問は、こうして終わった。
大広間を出る時、エリアナは父の姿を見た。
ロベールは、深くうなだれた姿で立っている。
ひどく打ちひしがれたその姿に、彼の老いが見て取れた。
一瞬、エリアナの心に哀れみが芽生えた。
でも、それだけだった。
もう、この人たちのために涙を流すことはない。
アレクシスが、エリアナの手を取った。
「行こう」
「はい」
二人は、王宮を後にした。
外では、青空が広がっていた。城門の外につまみ出された孤児院の子供たちが、二人の姿を見ると、歓声をあげて駆け寄ってきた。
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