【完結】生贄にされた私が竜王陛下に溺愛されて、陥れた妹たちにざまぁしたら、幸せすぎて困ってます

深山きらら

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第五章 傷ついても立ち上がる、愛する者のために

強い言葉

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 十三頭の竜が、一斉に飛び立った。
 先頭を飛ぶのは竜王だ。
 空を駆ける竜の群れ。――その光景は、圧倒的だった。

 地上の人々が、空を見上げて叫んでいる。

「竜だ!」
「竜王が来るぞ!」
「なんと…あんなに多くの竜が」

 恐怖をあらわにする者もいる。

「やはり……噂は本当だった」
「戦争になるんだ……竜が攻めてくるんだ…‥!」

 竜たちは、ゼノギア王国の王都へと向かった。

 王城の上空で、竜王が咆哮した。
 その声は、王都中に響き渡った。

「人間の王よ! 竜王ザイフリートが、謁見を求める!」

 しばらくしてから城門が開き、王と取り巻きの貴族たちがぞろぞろと出てきた。
 騎士や兵士たちが、王たちの前に立ち、壁を作る。初めての竜との対峙に、誰の顔にも緊張がみなぎっている。

 竜たちは、城の前庭に降り立った。

 竜王は、人型に変化した。黒と金の衣装。竜王の証である首飾り。完全な正装だ。
 彼はアリアーナの手を取った。

「行くぞ」
「はい」

 二人は、王の前へと進み出た。
 ゼノギア王は、驚きと恐怖に満ちた顔で竜王を見返した。

「竜王殿……何用ですかな」
「私の妃を、正式に紹介する」

 竜王は、アリアーナを前に出した。

「アリアーナ・フォン・エルヴィシア。元は生贄として捧げられた人間。今は、私の妃だ」

 どよめきが起こった。
 貴族たちが、驚きの声を上げる。前庭を囲むように集まり始めた野次馬たちも同様だ。

「生贄が……妃に?」
「信じられない」

 その時、群衆の中から声が上がった。

「待ってください!」

 セリーナだった。
 継母イヴェットと共に、前に出てくる。

「その女は裏切者です! 私たち人間を裏切ったんです!」

 セリーナは、まっすぐアリアーナを指さした。その瞳には憎悪が光っている。

「私の姉、アリアーナは、生贄として選ばれました。それなのに、竜王様を誘惑して妃になるなど……恥知らずです! 生贄は、竜に食べられなくちゃならないのに」

「黙れ」

 竜王の声が、冷たく響いた。

「愚か者め。話にならん。……この中に、学者か高位の神官はいないのか?」

 人々の間でちょっとした騒ぎが起こり、やがて、聡明そうな顔をした数人の初老の男女が前へ進み出てきた。
 竜王はその学者たちに向かって話しかけた。

いにしえの契約では、十年に一度、人は竜に生贄を捧げることと定めているが……その生贄を、竜が食べなければならないという決まりはない。愛し合い、永遠の絆を誓っても、何の問題もないのだ」

 学者たちは少し相談し合い、すぐにうなずいた。

「はい。おっしゃる通りです。生贄の処遇についての決まりは、契約には書かれていなかったはずです」

「竜と人との契約は、再び戦争を起こさないようにするためのものなんです。生贄の儀式により、竜と人とはお互いの存在を思い出します。かつて戦い、血を流した末に和平にたどり着いたということを。……平和を当たり前のものだと思ってしまわないために、生贄の儀式はあるのです」

 アリアーナは叫んだ。

 竜王は彼女を横目で見て、ちらりと、満足そうな笑みを浮かべた。
 しかし、王侯貴族に戻した視線は、氷のように冷ややかだった。

「それなのに……戦争をしたがっているのは、いったい誰だ? 私とアリアーナの婚姻を口実にして、竜族に対する不信と憎悪をあおり立てているのは誰だ? 『竜が人間を攻めようとしている』などと、根も葉もない噂を広めているのは?」
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