【完結】魔力過多の捨てられ聖女は、氷の魔公爵の契約花嫁(抱き枕)になりました

深山きらら

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これって、ただの品質管理ですか?

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 彼は自分の食事には手を付けず、次々とパンをちぎり、スープをすくい、私に与え続ける。まるで、拾った捨て猫を餌付けするかのように。

「もっとだ。ほら、野菜も食え」
「あ、あの、自分で食べられますから……!」
「俺が食わせたいんだ。……手を使うのが億劫おっくうなら、口移しでもいいが?」
「食べます! フォークで食べます!!」

 公爵様の冗談(?)は心臓に悪い。
 結局、私はお腹がパンパンになるまで、彼の手から食事を与えられ続けた。

 ***

 食後の紅茶を飲んでいる時だった。
 クラウス様が立ち上がり、私の椅子の後ろに回ったかと思うと、不意に私の髪を指で梳いた。
 ひやりとした指先が首筋に触れ、びくりと肩が跳ねる。

「……髪も、パサついているな」
「す、すみません。手入れが行き届かなくて……」
「謝るな。事実を言っただけだ」

 彼はそう言うと、私の髪を一房すくい上げ、そこに口づけを落とした。
 チュッ、という小さな音が、静かな食堂に響く。
 控えていた執事とメイドたちが、バタバタと音を立てて倒れる気配がした。刺激が強すぎたのだろう。

「し、し、クラウス様!?」
「……魔力が足りなくなった」

 彼は平然と言い放った。
 今朝あんなに補給したはずなのに。でも、彼の瞳は少し熱っぽく潤んでいて、私のことを逃さないと言わんばかりの圧がある。

「少しの間、じっとしていろ」

 彼は私の背後から覆いかぶさるようにして抱きつくと、首筋に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
 冷たい香りと、私の体温が混ざり合う。
 人前だというのに、彼の腕の力は強くて、甘えん坊の大型犬のようだ。

「……ジゼル。今夜からは、もっと栄養のあるものを食わせる」
「これ以上ですか!?」
「ああ。……太らせて、俺好みの柔らかさにしてやるから覚悟しろ」

 耳元で囁かれたその言葉は、どう考えても「食用」の意味に聞こえて、私は真っ赤になって固まるしかなかった。

(これって、品質管理よね? 高級羽毛布団のお手入れみたいなものよね!?)

 必死に自分に言い聞かせるけれど、腰に回された腕の熱さと、首筋へのキスの感触に、私の理性は早くも限界を迎えそうだった。




 公爵家での生活が始まって数日が過ぎた。
 私の仕事は、夜はクラウス様の「抱き枕」として眠ること、昼は「品質管理」と称して美味しいものを食べ、フカフカのソファでくつろぐことだ。
 ――本当にこれでいいのだろうか。罪悪感で押しつぶされそうだが、少しでも動こうとすると使用人たちが「奥様! 奥様を働かせたら私たちが叱られます!」と血相を変えて止めにくるのだ。

 そんなある日。
 私は気分転換にと、中庭の散策を許された。
 北の地とはいえ、公爵邸の中庭には魔導具による温室があり、美しい花々が咲き乱れている。

「わぁ……綺麗」

 久しぶりに外の空気を吸い、私は花壇の前でしゃがみ込んだ。
 ふと、視界の端で何かが動いた。
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