【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら

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願ってもない提案

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「名は?」
「アディと申します」
「アディ、か」ルーファスは彼女の手を見つめた。「その手、薬草の染みと火傷の痕がある。薬師か?」

 アディは思わず手を引っ込めようとしたが、ルーファスの大きな手は、優しく、しかししっかりと彼女の手を保持していた。

「……薬師見習いでした。でも、もう……」

 言葉が続かなかった。王都のギルドを追放されたことを、どう説明すればいいのか。

「ただの見習いにしては、染みに年季が入っている。長年、薬草を扱ってきた者の手だ」
「それは……」

 幼い頃から母の仕事を手伝ってきたせいだ。母と一緒に薬草を集め、植物を見る目を養ってきた。

 しかしルーファスはそれ以上追及しようとはしなかった。

「正直に言うと、わが領地では医師や薬師が不足している。領民の多くが、重い病気や怪我でさえ、適切な治療を受けられずにいる」

 ルーファスは立ち上がり、窓の外を見つめた。

「しばらく、この領地に滞在して、領民の治療を手伝ってもらえないか。報酬は支払う。住む場所と食事も保証する」

 アディは目を見開いた。まるで、迷える自分に差し伸べられた救いの手のようだった。

「でも、私なんかでいいんですか? 私は見習いで、まだ一人前じゃなくて……」
「お前の技量は、これから判断する」ルーファスは振り返った。その氷のような瞳が、まっすぐにアディを見つめる。「だが、誰もいないよりは、見習いでもいる方がマシだ。それに――」

 彼はわずかに目を細めた。それは笑みとは言えない、だが確かに表情が和らいだ瞬間だった。

「お前を、あの森で死なせたくはない」

 その言葉に、アディの胸が熱くなった。理由は分からない。でも、この冷たい目をした領主が、自分の命を気にかけてくれているという事実が、不思議と嬉しかった。

「……お世話になります。恩返しのつもりで、精一杯努めさせていただきます」

 アディは深々と頭を下げた。
 こうして、アディの新しい生活が始まった。そしてそれは、彼女の人生を大きく変える、運命の始まりでもあった。
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