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手のつけようがない溺愛
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その夜を境に、ルーファスの態度が変わった。
いや、変わったというより、さらにエスカレートしたと言うべきだろうか。
朝食は必ずアディと一緒に取るようになった。
「領主様、そんな、私のような者と一緒に食事だなんて……」
「お前は専属薬師だ。領主と食事をするのは不自然ではない」
それは表向きの理由で、本当は単に、朝一番でアディの顔が見たかっただけなのだが。
執務の合間にも、必ずアディの様子を確認しに来るようになった。
「アディ、体調は悪くないか」
「はい、元気です」
「無理はしていないか」
「はい、大丈夫です」
「そうか……なら、いい」
そう言って、ルーファスは満足そうにうなずいて去っていく。
一日に三回は様子を見に来るので、侍女たちは「領主様、もはや隠そうともしていない」と笑っていた。
薬草採集も、以前にも増してルーファスが同行するようになった。
「今日は西の森に行きます」
「分かった。俺も行く」
「でも、領主様には重要な会議が――」
「延期する」
もはや即答である。
そして採集中も、ルーファスはずっとアディの近くにいた。少しでも危なっかしい場所に行こうとすると、すぐに手を差し伸べる。
「足元が悪い。俺の手を取れ」
「あ、ありがとうございます……」
アディが岩場を登ろうとすると、ルーファスが後ろから支える。
「無理をするな。必要なら、俺が抱えて運ぶ」
「だ、大丈夫です! 自分で登れます!」
アディは真っ赤になりながら、必死に岩を登った。
そんな二人の様子を、王都から派遣された騎士たちは眺めるともなく眺め、苦笑していた。
「辺境伯って、あんな人だったっけ」
「感情を表に出さない方だと思っていたんだが」
「アディ様も、まんざらでもなさそうだ。さっさとくっつけばいいのに」
「お二人とも不器用なんだろうな、きっと」
カイルは、少し寂しそうに微笑んだ。彼もアディに好意を抱いていたが、ルーファスとアディの関係を見ていると、自分の入る余地などないことは明白だった。
「まあ、僕は応援する側に回りますか」
ある日の午後、アディが研究室で調合作業をしていると、ルーファスが訪れた。
「少し時間はあるか」
「はい、大丈夫です」
ルーファスは、一つの小箱を差し出した。
「これを、お前に」
「え……?」
アディが箱を開けると、中には見事なペンダントが入っていた。銀細工の台座に、淡い青色の宝石が埋め込まれている。月光を思わせる、神秘的な輝きだった。
「なんて美しい……!」
「お前に似合うと思った」ルーファスは少し照れたように視線をそらした。「それに、この宝石には魔除けの効果があるそうだ。お前の身を守ってくれるだろう」
アディは胸が熱くなった。
「ありがとうございます……でも、こんな立派なものを……」
「お前は、この領地にとって、何よりも大切な存在だ。それに――」
ルーファスは一歩近づき、アディの目を見つめた。
「私にとっても、だ」
その言葉に、アディの心臓が激しく鼓動した。
「領主様……」
「つけてやろう」
ルーファスはペンダントを手に取り、アディの首にかけた。彼の指が、アディの首筋に触れる。その感触に、アディは思わず息を止めた。
「……似合うな」
ルーファスは満足そうにうなずいた。
「ずっと、身につけていてくれ」
「はい……大切にします」
アディは、ペンダントを胸元で握りしめた。
(これは、領主様の想い……?)
確信には至らないが、でも確かに、何か特別な意味があるような気がした。
そして、アディもまた、自分の想いを伝えたいと思い始めていた。
いや、変わったというより、さらにエスカレートしたと言うべきだろうか。
朝食は必ずアディと一緒に取るようになった。
「領主様、そんな、私のような者と一緒に食事だなんて……」
「お前は専属薬師だ。領主と食事をするのは不自然ではない」
それは表向きの理由で、本当は単に、朝一番でアディの顔が見たかっただけなのだが。
執務の合間にも、必ずアディの様子を確認しに来るようになった。
「アディ、体調は悪くないか」
「はい、元気です」
「無理はしていないか」
「はい、大丈夫です」
「そうか……なら、いい」
そう言って、ルーファスは満足そうにうなずいて去っていく。
一日に三回は様子を見に来るので、侍女たちは「領主様、もはや隠そうともしていない」と笑っていた。
薬草採集も、以前にも増してルーファスが同行するようになった。
「今日は西の森に行きます」
「分かった。俺も行く」
「でも、領主様には重要な会議が――」
「延期する」
もはや即答である。
そして採集中も、ルーファスはずっとアディの近くにいた。少しでも危なっかしい場所に行こうとすると、すぐに手を差し伸べる。
「足元が悪い。俺の手を取れ」
「あ、ありがとうございます……」
アディが岩場を登ろうとすると、ルーファスが後ろから支える。
「無理をするな。必要なら、俺が抱えて運ぶ」
「だ、大丈夫です! 自分で登れます!」
アディは真っ赤になりながら、必死に岩を登った。
そんな二人の様子を、王都から派遣された騎士たちは眺めるともなく眺め、苦笑していた。
「辺境伯って、あんな人だったっけ」
「感情を表に出さない方だと思っていたんだが」
「アディ様も、まんざらでもなさそうだ。さっさとくっつけばいいのに」
「お二人とも不器用なんだろうな、きっと」
カイルは、少し寂しそうに微笑んだ。彼もアディに好意を抱いていたが、ルーファスとアディの関係を見ていると、自分の入る余地などないことは明白だった。
「まあ、僕は応援する側に回りますか」
ある日の午後、アディが研究室で調合作業をしていると、ルーファスが訪れた。
「少し時間はあるか」
「はい、大丈夫です」
ルーファスは、一つの小箱を差し出した。
「これを、お前に」
「え……?」
アディが箱を開けると、中には見事なペンダントが入っていた。銀細工の台座に、淡い青色の宝石が埋め込まれている。月光を思わせる、神秘的な輝きだった。
「なんて美しい……!」
「お前に似合うと思った」ルーファスは少し照れたように視線をそらした。「それに、この宝石には魔除けの効果があるそうだ。お前の身を守ってくれるだろう」
アディは胸が熱くなった。
「ありがとうございます……でも、こんな立派なものを……」
「お前は、この領地にとって、何よりも大切な存在だ。それに――」
ルーファスは一歩近づき、アディの目を見つめた。
「私にとっても、だ」
その言葉に、アディの心臓が激しく鼓動した。
「領主様……」
「つけてやろう」
ルーファスはペンダントを手に取り、アディの首にかけた。彼の指が、アディの首筋に触れる。その感触に、アディは思わず息を止めた。
「……似合うな」
ルーファスは満足そうにうなずいた。
「ずっと、身につけていてくれ」
「はい……大切にします」
アディは、ペンダントを胸元で握りしめた。
(これは、領主様の想い……?)
確信には至らないが、でも確かに、何か特別な意味があるような気がした。
そして、アディもまた、自分の想いを伝えたいと思い始めていた。
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