辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら

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溺愛は永遠に

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 それから三年が経った。

 アディは、今や辺境伯夫人として、領地の人々から深く愛されていた。
 彼女は医療棟を拡張し、薬師の育成にも力を入れた。かつての自分のように、道に迷った若い薬師たちを受け入れ、導いた。
 そして、領地の医療水準は飛躍的に向上し、他の領地からも視察が訪れるほどになった。

 だが、ルーファスの溺愛は、結婚後もまったく衰えることがなかった。
 むしろ、さらにエスカレートしていた。

「アディ、今日の診察は終わりだ」

 ルーファスが医療棟に現れ、有無を言わせず宣言する。

「え、でも、まだ患者さんが――」
「もう十分働いた。後は他の薬師に任せろ」

 ルーファスはアディの手を取って、半ば強引に連れ出す。

「ルーファス様、最近こういうこと多すぎます……」
「お前の体が心配なんだ。無理をされたら困る」
「でも、私は元気ですよ?」
「私が判断する」

 もはや議論の余地はなかった。



 朝食は必ず一緒。

「領主様、たまには一人で食べても――」
「嫌だ」

 即答である。

「お前の顔を見ないと、一日が始まらない」

 そう言って、ルーファスは満足そうにアディを見つめる。

 執務の合間には、必ずアディの様子を確認しに来る。

「体調は?」
「元気です」
「疲れていないか?」
「大丈夫です」
「無理はしていないか?」
「していません」

 このやり取りが、一日に三回は繰り返される。
 侍女たちは、もはや慣れたもので「また始まった」と微笑ましく見守っている。



 ある日、アディが庭で薬草の手入れをしていると、若い兵士が話しかけてきた。

「アディ様、この薬草は何という――」

 その瞬間、どこからともなくルーファスが現れた。

「その兵士、配置転換だ」
「え!?」
「北の国境警備に回れ」
「領主様!?」

 アディはあわてて止めたが、ルーファスの決定は覆らなかった。

「私以外の男が、お前に話しかけるのは許可しない」
「でも、それは――」
「特に若い男は論外だ」

 もはや完全な独占欲である。
 アディは呆れながらも、その嫉妬深さが可愛くて、つい笑ってしまった。

「ルーファス様、私はルーファス様以外、誰も見ていませんよ」
「……分かっている」ルーファスは少し照れたように視線をそらした。「だが、他の男がお前を見ているのが許せない」
「もう、仕方ありませんね」

 アディはルーファスの手を取った。

「では、今日はずっと一緒にいてください。そうすれば、ルーファス様も安心でしょう?」

 その提案に、ルーファスの顔が明るくなった。

「……いいのか?」
「はい」アディは微笑んだ。「私も、あなたと一緒にいる方が幸せですから」
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