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ようやく見つけた光明
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自分の部屋にいても、気分がふさぐ。
セシリアは侍女のメアリーを伴って、庭を散歩することが増えた。
幸い、レンフォード邸の敷地は広かった。飽きずに散歩を楽しむことができた。
春の陽気は心地よく、薔薇が美しく咲いている。
セシリアは花々を見ながら歩いた。そして、あることに気づいた。
「この庭園、薬草がたくさん植えられているのね」
「ええ、先々代の奥様が薬草がお好きだったそうで」
「そうなのね……」
セシリアは目を輝かせた。
ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ペパーミント。祖母が教えてくれた薬草が、そこここに植えられていた。
「これは素晴らしいわ」
セシリアは花壇に近づき、優しく花びらに触れた。
(この薬草たち、活用されているのかしら?)
メアリーに尋ねると、彼女は首を横に振った。
「いえ、今は誰も手入れをしておりません。先々代の奥様が亡くなられてから、放置されたままで……」
「もったいない」
セシリアは即座に心を決めた。
「メアリー、明日から私がこの庭の薬草を管理してもいいかしら?」
「え? 奥様が、ご自分で?」
「ええ。私、薬草学を少し学んでいたの。せっかくの薬草を活かさないのはもったいないわ」
メアリーは驚いたようだったが、すぐに笑顔になってうなずいた。
「承知いたしました。旦那様に確認いたします」
「ありがとう」
セシリアは、ひさしぶりに、心から晴れ晴れと笑った。
ようやく、この屋敷で自分が楽しめることを見つけた気がした。
* * *
「旦那様が『かまわない』とおっしゃっています」
メアリー経由で、ルパートの返事はすぐに届いた。
ルパートが寛大だから、というのではなく、単に本当にセシリアに興味がないからだろう。「勝手にしろ」ということだ。
翌日からさっそく、セシリアは本格的に庭の薬草の手入れを始めた。
若い庭師見習いの少年が手伝ってくれることになった。
「トーマスと申します、奥様」
十五歳くらいの、人懐っこい笑顔の少年だった。
「よろしくね、トーマス。これから一緒に、この庭を素敵にしましょう」
「はい!」
セシリアは庭に出て、一つ一つの植物を確認していった。
「このラベンダーは、もう少し日当たりのいい場所に移植した方がいいわね」
「カモミールは、もっと増やせそう」
「このローズマリー、素晴らしい香りだわ」
トーマスは感心したように言った。
「奥様、本当にお詳しいんですね」
「祖母に教わったの。薬草は、正しく使えば人を癒す力があるのよ」
セシリアは優しく花びらを撫でた。
「そして、美容にも効果があるの」
* * *
それは、セシリアが庭園の管理を任されるようになって数日後のことだった。
セシリアがかがみ込んで、土の状態を確認していると――見知らぬ女性が軽やかな足取りでこちらへ歩いてくる。
驚くほど美しい女性だった。年のころは二十代半ば、セシリアより少し上。
日光を受けて輝く美しい髪に、深いグリーンの瞳。華奢な体つきで、まるで妖精のようだ。
この屋敷の使用人ではない。
来客にしては――服装がくだけている。女性が着ているのは、完全な普段着だ。まるで自分の家の庭を散歩するときのような……。
セシリアははっとした。女性の正体がわかったのだ。
セシリアが薬草を管理している庭園と、ロザリンドの住む離れとはだいぶ離れているが。
おそらくこの女性がロザリンドなのだろう。ルパートの最愛の人。
セシリアは侍女のメアリーを伴って、庭を散歩することが増えた。
幸い、レンフォード邸の敷地は広かった。飽きずに散歩を楽しむことができた。
春の陽気は心地よく、薔薇が美しく咲いている。
セシリアは花々を見ながら歩いた。そして、あることに気づいた。
「この庭園、薬草がたくさん植えられているのね」
「ええ、先々代の奥様が薬草がお好きだったそうで」
「そうなのね……」
セシリアは目を輝かせた。
ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ペパーミント。祖母が教えてくれた薬草が、そこここに植えられていた。
「これは素晴らしいわ」
セシリアは花壇に近づき、優しく花びらに触れた。
(この薬草たち、活用されているのかしら?)
メアリーに尋ねると、彼女は首を横に振った。
「いえ、今は誰も手入れをしておりません。先々代の奥様が亡くなられてから、放置されたままで……」
「もったいない」
セシリアは即座に心を決めた。
「メアリー、明日から私がこの庭の薬草を管理してもいいかしら?」
「え? 奥様が、ご自分で?」
「ええ。私、薬草学を少し学んでいたの。せっかくの薬草を活かさないのはもったいないわ」
メアリーは驚いたようだったが、すぐに笑顔になってうなずいた。
「承知いたしました。旦那様に確認いたします」
「ありがとう」
セシリアは、ひさしぶりに、心から晴れ晴れと笑った。
ようやく、この屋敷で自分が楽しめることを見つけた気がした。
* * *
「旦那様が『かまわない』とおっしゃっています」
メアリー経由で、ルパートの返事はすぐに届いた。
ルパートが寛大だから、というのではなく、単に本当にセシリアに興味がないからだろう。「勝手にしろ」ということだ。
翌日からさっそく、セシリアは本格的に庭の薬草の手入れを始めた。
若い庭師見習いの少年が手伝ってくれることになった。
「トーマスと申します、奥様」
十五歳くらいの、人懐っこい笑顔の少年だった。
「よろしくね、トーマス。これから一緒に、この庭を素敵にしましょう」
「はい!」
セシリアは庭に出て、一つ一つの植物を確認していった。
「このラベンダーは、もう少し日当たりのいい場所に移植した方がいいわね」
「カモミールは、もっと増やせそう」
「このローズマリー、素晴らしい香りだわ」
トーマスは感心したように言った。
「奥様、本当にお詳しいんですね」
「祖母に教わったの。薬草は、正しく使えば人を癒す力があるのよ」
セシリアは優しく花びらを撫でた。
「そして、美容にも効果があるの」
* * *
それは、セシリアが庭園の管理を任されるようになって数日後のことだった。
セシリアがかがみ込んで、土の状態を確認していると――見知らぬ女性が軽やかな足取りでこちらへ歩いてくる。
驚くほど美しい女性だった。年のころは二十代半ば、セシリアより少し上。
日光を受けて輝く美しい髪に、深いグリーンの瞳。華奢な体つきで、まるで妖精のようだ。
この屋敷の使用人ではない。
来客にしては――服装がくだけている。女性が着ているのは、完全な普段着だ。まるで自分の家の庭を散歩するときのような……。
セシリアははっとした。女性の正体がわかったのだ。
セシリアが薬草を管理している庭園と、ロザリンドの住む離れとはだいぶ離れているが。
おそらくこの女性がロザリンドなのだろう。ルパートの最愛の人。
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