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"全く興味がない"それだけだった
①
しおりを挟むソフィーア・レンドルターはこのベルタ王国で伯爵令嬢として生を受けた。
貿易商で財を得ていたレンドルター家で生まれたからかソフィーアは語学が堪能で、器量も良いと評判が良かった。
しかし、ソフィーアの婚約者であるミケーレの評判は余り良いとはいえなかった。
ミケーレ・ランドリゲス。
ランドリゲス公爵家の三男でランドリゲス公爵と公爵夫人が歳を重ねてから出来た子供ということもあり、彼は甘やかされて育った。
気楽な立場も後押ししたのだろう。
ミケーレ少年は兎にも角にも悪戯好きで人を困らせては逃げ回る元気のいい少年であった。
生意気な態度を受けても、彼の後ろにはランドリゲス公爵の影がチラつく為、周囲も何も言うことはなかった。
ランドリゲス公爵の強い希望で結ばれた婚約。
レンドルター伯爵家に拒否権はなかった。
ソフィーアは初め、ランドリゲス公爵家の嫡男であるソリッドと婚約していた。
けれど、ある理由でソリッドとソフィーアの婚約は破棄された。
その後に充てがわれたのはソフィーアと歳が近いミケーレであった。
伯爵家は勿論、反発したがランドリゲス公爵に押さえつけられるような形でミケーレの婚約者に収まった。
ソフィーアは家を守る為に決定に従い、ミケーレもソフィーアに興味がなかったのか特に文句を言うこともなかった。
暫くは互いに干渉することはなかった。
けれどミケーレが成長すると事態は一変する。
小猿のように庭を駆け回り、元気だけが取り柄だったミケーレは成長期になると一気に背が伸びて男らしくなった。
ランドリゲス公爵と公爵夫人の良いとこどりをしたような端正で甘い顔立ちは、令嬢達からの評判も良かった。
それに加えて彼の家柄とランドリゲス公爵の存在は大きいことだろう。
常に走り回っていたからか勿論スポーツも万能。
そしてミケーレの兄達はソフィーアから見ても立派で、お世辞抜きに素晴らしいといえる。
そのイメージもあってか、ミケーレに媚を売ろうと人集りができるほどだった。
ミケーレは一気に注目を集めるようになった。
そして運が悪いことに、周囲の女性達が彼を放っておかなかったのだ。
まるで自分の力を誇示するように、ミケーレはソフィーアに、いかに自分がモテるのかを自慢をする。
「こんな婚約者を持てて幸せだろう?」
「俺がモテるからといって嫉妬をするなよ?」
「お前は俺の側に居ることが出来て幸せだよな」
よくもここまで言えたものだと感心するレベルであるが、実際にミケーレに言い寄る御令嬢は多い。
今まで令嬢達に見向きもされなかったミケーレは「自分の真の価値にやっと気づいたか」といわんばかりの態度でソフィーアに訴えかけるのである。
そしてそんな熱意のこもった言葉を右から左に聞き流していたソフィーアの態度が気に入らないのか、ソフィーアに隠れてコソコソと御令嬢との火遊びを楽しむようになった。
まだ隠そうと思う考えがあるだけいいと思うべきだろうか。
ソフィーアはミケーレを放置していた。
理由はただ一つ。
"全く興味がない"
それだけだった。
それと強いて言うならば、まだ頃合いではないからだ。
ソフィーアが黙っている範囲で上手くやればいいものを、ミケーレは自分の非をソフィーアに報告する。
最近はソフィーアに向かってご丁寧に令嬢の名前まで教えるようになっていった。
ソフィーアはそんなミケーレのどうでもいい話を黙って聞いていた。
むしろそんなミケーレの暴走が有難いとすら思っていたからだ。
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