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やさぐれ聖女は国から出て幸せを謳歌する〜あんな国、潰れちまえばいいと思っていたら、超イケメン騎士と毒舌巨乳聖女に溺愛されていました〜
⑨
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町で買ったお菓子を渡すと「レーナ様、ありがとう」と言いながら子供達が去っていく。
クリスフォードやエイブリーが子供達に囲まれているのを見ながら、レーナもヘイデンの向かいの石に腰掛けると葉巻を咥えて火をつける。
思いきり息を吸って吐き出すと白い煙が口から出てくる。
「ふぅー…………」
「ちとしけてんな」
「贅沢言わないで。はぁ……ここは相変わらず空気が美味しいわ」
「おーおー、悪い聖女様だな」
「もう聖女様じゃないわ」
額に皺を寄せながら葉巻を咥える姿は確かに『聖女』とはかけ離れているだろう。
ヘイデンは奥から欠けた小さなグラスを持ってきて、レーナが渡した酒瓶を傾ける。
グラスを受け取り、乾杯と呟いてから一気に飲み込むと食道から胃が一気に熱くなる。
「……にしても、おまけにしちゃあ、国のお宝を連れてきちまって平気なのか?」
「勝手に着いてきたのよ」
「へぇ……それはそれは」
ヘイデンの視線にはクリスフォードとエイブリーの姿がある。
レーナと目が合うと二人は嬉しそうに手を振っている。
こういう姿を見ても動じないのはクリスフォードとエイブリーだけだろう。
城では聖女としての振る舞いを求められていたので、こうしたことも出来なかったし、隠していたもののレーナのストレスは溜まる一歩だった。
各町の教会を巡るフリをして、こうしてここの教会で息抜きしていた。
ヘイデンは他の聖職者と違い騎士出身の異端ではあるが、レーナが来る前に辺境にある教会兼孤児院を一人で守ってきた実力者である。
レーナはヘイデンが気に入ったのと息抜きを兼ねてここに来ていた。
「私が我慢の限界が来て城から追い出されたら匿ってね」と、ふざけて言ったところ、まさか本当にこうなるとは思わなかった。
「聖女様と最強の騎士がいなくなって、これからこの国はどうなっちまうんだろうね」
「さぁ、知らないわ」
石で葉巻の火を消してゴミを処理してからレーナは腕を伸ばす。
「困ったら力になるわ。あなたなら必要ないでしょうけど」
「助けてくれよ、聖女様。それよりこれからどこへ?」
「ずっと城に閉じこもっていたんだもの。いろんな場所を見て回りたいわ」
そう言うと、子供達から解放されたクリスフォードとエイブリーがこちらにやって来る。
クリスフォードの圧力にヘイデンはポロリと咥えていた葉巻を落として両手を上げた。
「……話は終わりましたでしょうか?」
「クリスフォード殿「クリスです」
「クリス……」
「なんでしょうか。レーナ」
「ああん、ずるいです!レーナお姉様、わたくしもっ」
「エイブリー、そんなに引っ張「エリーって、呼んでください」
「…………エリー」
「レーナお姉様はわたくし達が守りますから」
「そうですよ。次はどこに行くか、あちらで決めませんか?」
「あー……レーナ、頑張れよ」
「ちょっと一晩お世話になるんだから、仲良くね」
「はぁい」
「はい、もちろんですわ」
二人はレーナを両脇に挟むようにしてピッタリとくっついている。
向けられる愛が重いことをヒシヒシと感じながらも、レーナは星がいっぱいの空の下、自由を噛み締めていた。
end
クリスフォードやエイブリーが子供達に囲まれているのを見ながら、レーナもヘイデンの向かいの石に腰掛けると葉巻を咥えて火をつける。
思いきり息を吸って吐き出すと白い煙が口から出てくる。
「ふぅー…………」
「ちとしけてんな」
「贅沢言わないで。はぁ……ここは相変わらず空気が美味しいわ」
「おーおー、悪い聖女様だな」
「もう聖女様じゃないわ」
額に皺を寄せながら葉巻を咥える姿は確かに『聖女』とはかけ離れているだろう。
ヘイデンは奥から欠けた小さなグラスを持ってきて、レーナが渡した酒瓶を傾ける。
グラスを受け取り、乾杯と呟いてから一気に飲み込むと食道から胃が一気に熱くなる。
「……にしても、おまけにしちゃあ、国のお宝を連れてきちまって平気なのか?」
「勝手に着いてきたのよ」
「へぇ……それはそれは」
ヘイデンの視線にはクリスフォードとエイブリーの姿がある。
レーナと目が合うと二人は嬉しそうに手を振っている。
こういう姿を見ても動じないのはクリスフォードとエイブリーだけだろう。
城では聖女としての振る舞いを求められていたので、こうしたことも出来なかったし、隠していたもののレーナのストレスは溜まる一歩だった。
各町の教会を巡るフリをして、こうしてここの教会で息抜きしていた。
ヘイデンは他の聖職者と違い騎士出身の異端ではあるが、レーナが来る前に辺境にある教会兼孤児院を一人で守ってきた実力者である。
レーナはヘイデンが気に入ったのと息抜きを兼ねてここに来ていた。
「私が我慢の限界が来て城から追い出されたら匿ってね」と、ふざけて言ったところ、まさか本当にこうなるとは思わなかった。
「聖女様と最強の騎士がいなくなって、これからこの国はどうなっちまうんだろうね」
「さぁ、知らないわ」
石で葉巻の火を消してゴミを処理してからレーナは腕を伸ばす。
「困ったら力になるわ。あなたなら必要ないでしょうけど」
「助けてくれよ、聖女様。それよりこれからどこへ?」
「ずっと城に閉じこもっていたんだもの。いろんな場所を見て回りたいわ」
そう言うと、子供達から解放されたクリスフォードとエイブリーがこちらにやって来る。
クリスフォードの圧力にヘイデンはポロリと咥えていた葉巻を落として両手を上げた。
「……話は終わりましたでしょうか?」
「クリスフォード殿「クリスです」
「クリス……」
「なんでしょうか。レーナ」
「ああん、ずるいです!レーナお姉様、わたくしもっ」
「エイブリー、そんなに引っ張「エリーって、呼んでください」
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「そうですよ。次はどこに行くか、あちらで決めませんか?」
「あー……レーナ、頑張れよ」
「ちょっと一晩お世話になるんだから、仲良くね」
「はぁい」
「はい、もちろんですわ」
二人はレーナを両脇に挟むようにしてピッタリとくっついている。
向けられる愛が重いことをヒシヒシと感じながらも、レーナは星がいっぱいの空の下、自由を噛み締めていた。
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