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二章
②⑤
しおりを挟む「正直、ピーターを引き取ったのは彼をベルトルテ公爵家の後継にしようと打算的な部分もあった。そうすれば結婚する必要はないと……」
「…………」
「しかし私は親になるにはまだ早かったようだ。未だにピーターを理解できず、彼の悲しみも癒せないままだ」
「リュドヴィック様……」
「打算的な私を、君は軽蔑するだろうか?」
困ったように笑うリュドヴィックを見て、ディアンヌは小さく首を横に振った。
まだ少ししか時間を共にしておらず、わからないことも多い。
けれど、リュドヴィックは正直な気持ちを話してくれた。
下手な嘘をつかれるよりも、ずっと誠実に思える。
(冷たい印象だったけど、イメージとは違うのね……たしかに打算的な部分はあるけど、ピーターのことをちゃんと考えてくれてるんだわ)
絶対に嫌だと思っていた結婚もピーターのために決めたのだ。
ディアンヌにはピーターを大切に思い、寄り添おうとしているように見えた。
契約結婚を提示してきたのも、そのような経緯があったようだと思うと納得してしまう。
それにディアンヌは前世でも今世でも五人姉弟の長女だ。
小さい子の扱いには多少なりとも自信がある。
ピーターのことも力になれるかもしれない。
「もちろん契約ではあるが生活は保証するし、君たちを守る」
「……!」
「ただ、私からの愛だけは期待しないでほしい」
リュドヴィックは困惑したように視線を逸らしている。
(……リュドヴィック様は優しい人なんだわ)
普通ならば悲しむ場面なのだろうか。
だがディアンヌはこの件をかなりポジティブに捉えていた。
むしろ好条件すぎて夢でも見ているようだ。
お金目当ての結婚をしようとしていたが、こんな風に気遣ってもらえたかはわからない。
でもリュドヴィックと共にいたら、少なくともそのようなことはないだろう。
ディアンヌはリュドヴィックの手を握り、彼を見上げた。
リュドヴィックはディアンヌの勢いに驚いている。
「リュドヴィック様、安心してください! わたしは愛情を求めているわけではありませんから」
「……!」
「わたしはこれ以上ないほど嬉しい条件をいただけて、感無量です。リュドヴィック様の期待に応えられるようにがんばって働きます……!」
「働く……?」
ディアンヌはリュドヴィックの問いかけに大きく頷いた。
メリーティー男爵家を助けてくれるリュドヴィックに恩を返すために気合い十分だった。
(こんなことまでしてくださるなんて……リュドヴィック様は神様だわ!)
それにリュドヴィックからの愛など、ディアンヌは最初から求めていない。
(つまり利害関係の一致……! でもこんな大金を毎月もらうんだからリュドヴィック様の役に立てるように働かないとね)
若干、契約結婚に関して二人の認識が食い違っていた。
リュドヴィックはそのことに若干気づきつつあったが、ディアンヌの熱意に押されて黙っていたのだった。
「それで提案なんだが……今日からここで暮らしてはくれないだろうか?」
「え……!? 今日からですか?」
「その足では満足に動けないだろう。メリーティー男爵領へ送っていってもいいんだが、ピーターがあの様子だからな」
「た、たしかに……!」
今のピーターなら、間違いなくディアンヌについていくと言いそうだ。
「生活に困らないように用意するつもりだが、足りないものはマリアに頼んでくれ」
「は、はい!」
「それから昨晩、メリーティー男爵家や王家へ提出する書類はまとめてある。これで問題ないはずだ」
どんどんと進んでいく話に、ディアンヌは頷きつつも驚いていた。
リュドヴィックの先を見越した動きと、手際のよさに目が点である。
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