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二章
②⑧
「痛いけど、こうしていれば座っていたら大丈夫よ。困ったことがあったらピーターにお願いしちゃおうかしら」
「任せてよ! ボクに手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとう、ピーター。怪我が治ってからたくさん遊びましょうね」
「うん!」
ピーターはディアンヌに頼られたことが嬉しいのか「何かやることはある?」と、ぴょんぴょんと興奮気味に跳ねながらディアンヌに問いかけている。
ディアンヌがほっこりとした気持ちで、ピーターを見つめていた。
すると、何故かエヴァもマリアも驚いている。
そしてリュドヴィックは仕事があるからと、ピーターの頭を撫でた。
「ピーター、あまりディアンヌを困らせないように」
「大丈夫だよ、リュド! ボクがディアンヌを守るから」
「……そうか」
先ほどからリュドヴィックは表情の変化は少ないが、驚いているように見える。
(一体、何に驚いているのかしら?)
目の前でやる気満々のピーター。
可愛らしい言葉にディアンヌは感動していた。
ピーターはディアンヌのそばを離れたくないのか、寝室の中で遊び始める。
ディアンヌもピーターの遊びにできる限り付き合っていた。
そんな日々が三日ほど続いただろうか。
結婚を認める手続きを終えたという手紙が届く。
そしてメリーティー男爵家からも、ガクガクと震えるペンで結婚を了承するサインが届いていた。
(……お父様、緊張しすぎてすごいことになっているわ)
リュドヴィックは一緒に入っていたロウナリー国王からのメモを読んだ後に、険しい顔で破り捨てていた。
(何が書いてあったのかしら)
ベルトルテ公爵邸で暮らして数日が経つが、問題といえばひとつだけ。
ディアンヌを目の敵にしているカトリーヌのことだろうか。
恐らくディアンヌに嫌がらせをしたいのだろうが、ピーターがディアンヌのそばから片時も離れないことや、マリアたちに阻まれていることも大きいようだ。
カトリーヌは隙あれば、ピーターを引き離そうとしている。
「ピーター様、わたくしと一緒に遊びませんか? とってもおもしろいものがあちらにあるんですよぉ」
「いい……ディアンヌといる」
「そんなことを言わずに、一緒にお菓子を食べましょう?」
「いらない。ディアンヌがいい」
「……ッ!」
どうやらピーターはカトリーヌのことを好いてはいないようだ。
ツンとした冷たい態度に驚いてしまう。
今まで見たことがないような険しい表情とじっとりとした視線をカトリーヌに送っているではないか。
カトリーヌはそんなピーターの態度にかなり苛立っているように見える。
(クソガキ呼ばわりしていたものね……)
しかしカトリーヌはマリアが見ていない隙を狙って、虫を紅茶に浮かべてみたり、ディアンヌに無理やり頬を叩かれたと言って周囲に訴えかけたりしている。
だが、ディアンヌにはまったく効果がなかった。
何故ならカトリーヌにとっては、とてつもなく嫌なことなのだろうが、ディアンヌにとってはまったく大したことがなかったからだ。
メリーティー男爵家には巨大な芋虫だっているし、虫は常にブンブン飛んでいたため普通に払うだけで済む。
それにこの足ではカトリーヌの頬を叩くために踏ん張れないし、彼女は簡単に逃げられてしまう。
嘘がバレたことに顔を真っ赤にしていたカトリーヌ。
それ以降は地味な嫌がらせが続いていた。
なんとかして二人の仲を引き裂きたい……そんな気持ちを感じさせる。
カトリーヌの目は日に日に血走っていくが、ディアンヌは特に気にすることはない。
というよりは、足が治るまで何も抵抗できないからだ。
今はそれとなく気づいていないフリをしながら刺激をしないことを優先していた。
カトリーヌが最初から敵意をむき出しにしてくれたおかげで、彼女を警戒できることが幸いだったかもしれない。
そして六日ほど、ディアンヌは一人で部屋で食事をしていた。
移動するにも人の手を借りなければならずに申し訳ないからだ。
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