五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

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第一章 【第一星巡り部隊】

第六節 導の存在

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世界間の安寧を脅かす場合にのみこの措置が取られ、星巡り幹部や星読の力を持つ者の判断によって禁忌の呪封じが施される。ーつまり、第六星巡り部隊の案件に関して、世界間の安寧を脅かすものだと判断されたということだ。

俺はそっとその報告書を折り畳み、懐へと忍ばせた。
紙を燃やしたりしない限りは呪封じの効力は維持されており、たとえ切り刻んだとしても、濡らしたとしても、特定の方法での呪封解除以外では内容を読み取ることは出来ない。

俺が疑問に思っていることは、全てこの報告書に書かれているだろう。

「話は分かった。ありがとな、二人とも」

俺が言葉を切れば、肩の荷が下りたようにほっとした表情で笑みをこぼすシュテルン。ステラはといえば、一週間の間、アース世界にいる俺の補助をずっとしてきていたために睡眠が足りないらしく、今度こそ寝に戻るのだという。

俺の肩で寝るか?っと言うが、俺の肩では仮眠程度はできるものの、熟睡することは叶わないらしい。

ふらふらとした様子で一室を後にするステラを見送り、俺はシュテルンに向き直る。まだ聞かなければいけないことが残っているからだ。

「それで。厳戒態勢が敷かれてると言ってたが、俺の部隊の奴らはどうしてる?まさか、部隊の纏である俺の許可を得ずに警護に駆り出されてるわけじゃないだろ」
「えっと、その…。はい、警護には駆り出されていません。一度そのような書面を受け取りましたが、僕たちが従うのは貴方の言葉だけですので、満場一致で断りを入れました」

確固たる意志をひめた紅葉色の瞳に見つめられ、安堵の息をつきながらふと、シュテルンの言葉を頭の中で反芻させる。

書面を受け取った…。
ということは、第一星巡り部隊に向けて警護依頼が来ていたということになる。厳戒態勢はあくまでも部隊内に伝えられるものだ。

一般市民には公表されることはないはずなんだが。

「差出人はどこからだ?」
「えと、ええっと。匿名で僕たちの部隊に届けられまして…。普通であれば匿名で送られるものは僕たちに届く前に検閲がかかるのはレナトさんも知ってると思うんですが、届いた時に確認したところ検閲された形跡がなく…書面の内容も、“要人の警護”としか書かれていませんでした」
「悪戯、にしては変にタイミングが良すぎるな…その書面は?」
「レナトさんに一度見てもらおうとここに……ーあれっ、あれれ?な、なんで無くなって」

部屋に備え付けられた執務机に近寄ったシュテルンは、青ざめた表情で引き出しを一段目から三段目まで交互に開いていく。

慌てたようなその行動に、なぜだか懐かしく感じて、場違いにも頬を緩めてしまいそうになる。

シュテルン・ハーバード。
ステラと同じ、部隊の導であるシュテルンは思慮深く、観察眼に優れているが、一度テンパってしまうと周りが見えなくなるほど動揺して、呆気にとられる行動を引き起こす。

第一部隊に配属される前は第四部隊に配属されていたが、極度な人見知りと先に言ったような行動のせいでうまく対人関係を築き上げれず、一度は星巡り部隊員をやめようとすら思っていたようだ。

俺が引き込むようにして第一部隊に配属させた当初も同じような事態に見舞われたが、シュテルンの行動は他の部隊員にとって毛ほども変に捉えられなかった。むしろ、大歓迎とでもいえるような雰囲気でシュテルンと接してきたのだ。

それからというもの、部隊内の人物ならば人見知りも収まり呆気にとられる行動も鳴りを潜め、シュテルン本来の能力が発揮されるようになったが、根底のとこは全く変わっていないようだ。

「シュテルン・ハーバード!」

思考を回している間にも、執務机の引き出しの中身は全部地面に出され、その中から探し出そうとしているシュテルンを呼びつける。

途端にシュテルンはピンと背筋を伸ばし、片目の隠れた紅葉色は芯の通った瞳で真っすぐに俺を見据え、腕は背後に回してぴたりと動かない。整然としたその態度は、部隊に配属された当初からは考えられないようなほどで、迷いなく俺にその行動を示してくれることに何とも言えない気持ちになってしまう。

苦笑いを零し、俺はシュテルンはの小さなその肩を二度優しく叩いた。

「書面の件は後で構わない。…俺が留守の間、ありがとうな。あんまり気負いすぎるなよ」

俺の言葉にシュテルンは目を丸くして強張った肩の力を抜いていく。
ぱち、ぱちと瞠目した後姿勢を戻し、てれたようにもごもごとしながら、柔らかい笑みを俺に向けてくれる。

「………あ、の僕、ちゃんと見つけますね。それで、その…レナト、さん…ーおかえりなさい」
「おう、ただいま」

シュテルンの言葉に頷き、床に散らばってしまった中身を整理しながら引き出しをしまっていく。

あまり物を入れない性格が幸いしてか、対して時間もかからずに終えることができた。
片付ける間にもざっと件の書面を探してみたが、一度も見たことのない物を見つけることは容易ではなく結局その書面の内容は分からず仕舞いだった。
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