五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

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第一章 【第一星巡り部隊】

第七節 幼稚な言い合い

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室内の壁掛け時計に目を向ける。

他世界の“セイザ”を基にしたデザインされたその円形時計は、真上が昼をさし真下が夜を指し示す。
大まかな時間間隔しか分からないが、俺たちの世界に細かな時間規則は存在しないため、別に時計はあってもなくてもどちらでもいいものだ。

デザインが良いため主に室内の装飾用、見栄え重視の建物なんかには必ず一つは置かれているが、本来の用途としては使われていない。

「レナトさん、今日はもう非番のお時間でしたよね」

時計を眺めていた俺を見かねてシュテルンはそう零す。

「後のことは僕たちに任せて、今日はもう休んでださい。厳戒態勢中なので、帰るときは剣の一人を必ず傍に置いて帰ってくださいね」
「シュテルンはどうするんだ?」
「僕は…ステラさんが起きてくるまでここにいます。まだ部隊の書類整理もありますし、…件の書面のこともありますし、なんとか今日中に終わらせておきます…ので」

言いながら執務机に束ねられていた紙の束に触れざっと目を通していく。普段の冷静さが戻ってきたようで、瞬きの速さで紙をめくり淡々と仕分け作業を行っていた。

「んじゃ、俺はレナトと帰…「貴様は先程迎えにいっただろう」ー俺の言葉にかぶせんな、短気熊め」

扉の傍で待機していたノヴァが背伸びしながら歩みだす…が寸前でエトワルに足を払われ、倒れる寸前に片足をずらし重心を整えていた。

抗議するように睨みをきかせるノヴァだったが、対するエトワルは素知らぬ顔で腕を組む。

「言ったはずだぞ、レナトの迎えはアタシが行くと。その言葉を無視してお前がレナトの元に向かったせいで、アタシはここに残ることになった。シュテルンとステラの許可を得ていたのは、アタシだったのにも関わらずだ!」

「お前、何を勘違いしてるか知らねえが、シュテルンとステラが言ったのは“剣である二人のどっちかが、レナトを迎えに行く”許可だぞ?剣はお前だけじゃねえ、なら俺だって迎えに行く権利はあるだろ」

「日々鍛錬ばかりで他人に対する情の薄いお前が、誰かの迎えなど殊勝な心掛けを持つようになったのだな。それも卑劣な作戦のうちか?アタシが迎えに行くのを邪魔した時のような手か」

「あれは邪魔したわけじゃねえ。お前が誰かに呼び止められて長く話し込んでるから、間に合わなくなる前に俺が迎えに行ったんだろ。感謝される覚えはあれど、非難される筋合いは全くねえな」

「なんだと?この卑劣堅物男め」
「なんだよ。脳筋短気熊が」

一室には俺やシュテルンがいる手前、武器に手を伸ばす気配こそないものの、二人の雰囲気は今まさに点火される寸前の爆破物だ。

これは長くなりそうだな…っとため息を零しそうになる。

ノヴァもエトワルも、個人で接すれば付き合いやすい良い奴等だ。
部隊で二人が初対面した時は、今みたいに喧嘩っ早い雰囲気ではなかったはず。しかし何故だか知らないが、お互いの実力が拮抗してくるにつれ些細な事でも言い争うようになった。

好敵手として見ていると言われれば聞こえはいいが、一度火がつくとお互い傷だらけの泥だらけ、相手が気絶するか誰かに仲裁されるまで模擬戦という名の決闘が行われてる。

以外にも部隊内の誰かに仲裁される時はすっぱりと決闘が終わるので、それ以来は模擬戦を行う際は部隊の誰かが立ち合いのもと行わせている。いつか本当にどちらかが大怪我をしてしまいそうで身震いしてしまうが、何度止めようとしても、二人にとっては体が鈍らないようにするための模擬戦だと跳ね返されてしまうため強く出れないでいた。

「…エトワル、ノヴァ。レナトさんの大事な時間を、貴方たちの幼稚な言い合いで潰さないでください」

そろそろ止めようかというところで、俺の背後から冷ややかな声音が聞こえてくる。

紙面に目を向けながら、感情の乗ってない平坦な声音は二人にまっすぐと向かっていた。
その一言に言い合いを続けていた二人はピタリと言葉を止め、俺とシュテルンを交互に見据えてきた。二人とも同じような動作をしてくるため、肩をすくめ首を振る。

俺のその行動に、ノヴァは冷や汗を流しエトワルは自身の耳を掌で覆っていた。
見て分かるほど怯えの感情をにじませた二人の様子に俺も内心で同意せざるを得ない。ーシュテルンのあの冷ややかな声は、当事者じゃない俺が聞いても心臓に悪いのだ。

黙り込んでしまった二人に助け船を出すために、冷えてしまった空気を温めるためにも俺は言葉を連ねる。

「ノヴァ、悪いけどシュテルンとステラを頼んだぜ。エトワル、帰りの護衛はお前に任せる」
「しゃーねえ、レナトの頼みだしな」
「アタシは元よりそのつもりだ」

普段通りに振舞う二人の声音は若干震えていたが、俺は気付かないふりをしておいた。

ー部隊の導であるシュテルンとステラの二人は、絶対に怒らせてはいけない。

それが俺たちの間での暗黙の了解だ。
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