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第一章 【第一星巡り部隊】
第八節 引っかかるもの
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部隊のことはシュテルンとノヴァ、そして寝ているステラのことも二人に任せ俺とエトワルは宿所を後にした。
昔から休日というものの消費の仕方が思いつかないでいる。
そのため暇さえあれば教会に向かい、ハインドリヒ司教やユーベルク司祭の下で雑務や簡単な仕事などを手伝ってきていたが、今日はハインドリヒ司教からもゆっくり休むよう言い渡されてる。
…実際、教会にも一度向かったが中にいたユーベルク司祭は俺の顔を見た途端にこりと笑みを浮かべ、「今の貴方にできる仕事はありません」っとばっさり切り捨てられてしまった。
仕方なく教会のある市街地にまで足を向けたため、残りの時間は市街地を見て回ることにした。
「それで、レナトは一体どこに向かうつもりなのだ」
「あぁ、少しだけ気になることがあって…」
言いながら、俺は懐にしまっていた魔石のペンダントを取り出す。魔力の蓄積量は変わっておらず、購入当時のままだ。
「…それはなんだ?」
「エトワルも見たことはあるだろ?有事の際に備えて、魔力を温存しておくための石…魔石だよ」
「そうだな、見たことも触ったこともある。使ったことこそないが」
ちらりと俺の持つ魔石のペンダントに視線を向けたエトワルだったが、興味なさげに視線を外し不満げに腕を組む。
「どうにも、アタシはそのようなモノが好かん。有事に備えて…その意図は分かるが、なぜ捨て置けるような石なんぞに命を託さねばならんのだ。せめて、わが身から離さずにいられるようなモノにアタシは命を託したい」
エトワルは部隊に入った当初から、魔石の一つも持ち得ていない。
星巡り部隊でなくとも、一般市民でさえも、魔石の一つは有している。
弟妹達に言われても、俺たちの部隊からそれとなく言っても、決して首を縦に振らず、エトワルは頑なに魔石を持とうとしない。意地の張り合いからくるものだと思っていたが、エトワルにはエトワルなりの考えがあったようだ。
しかし、エトワルは有事の際に別の魔力を温存しておく重要性には気づいているようで、弟妹達のために魔石を購入しそれを使うように渡していたのを見ていた。
「それでも、エトワルは弟さん達に魔石…買ってあげたんだな」
「アタシはそもそも、魔力を使うことができない。属性魔力を知覚できたとしても、アタシには扱える能力は持ち合わせていないんだ。けどあの二人は違う、アタシと違って魔力を使うことも属性魔力を扱えるだけの能力を持っている。有事の際…アタシがあの二人を護ってやれない時、あれは必ず役に立つ」
「……そうか」
エトワルが魔石を頑なに持ち合わせない理由が、魔力を使えないことにあるとは。
確かに薄々考えてはいた。だが、それを面と向かって問うほど問題があったわけじゃない。現に、剣としては申し分ないほどの実力だ。他部隊との演練中でも、身長差ある相手に対しても、エトワルは後れを取ったことがない。
だから、今まで聞いてこなかったのだ。
「…アタシの話はいい。それで、その魔石がどうかしたのか」
「この魔石もそうだが…これを買った店に用があるんだ。付き合ってくれるか、エトワル」
「無論、構わない」
家屋の立ち並ぶ区画を離れ、少し歩いた先少し前に立ち寄った出店街へと足を向ける。
行先は一つだ。何度も通っていくうちに歩きなれてしまった足は、何を考えずともすんなりと動く。商品を売り出すいろいろな声に混ざって、耳になじんだ低い声が聞こえてくる。
あれから数時間とたっていないが、客入りは上々のようでちらほらと店の前に人の姿が見えた。
「お、レナト。さっきぶりだな、サボりか?べっぴんさんな人連れて…羽目外すのはいいが、ほどほどにしろよ?」
「残念。俺は今さっき半休もらったとこで、エトワルは俺たちの仲間だ。…今、少し話せるか?」
「おう、少し待ってな。これ切り上げたら休憩入れようと思っていたとこだ。こっちにスペース作ってやるから、そこのべっぴんさんと座って待ってろ」
店主は俺たちを店の裏へ手招きし、大柄な体を窮屈そうに縮こまらせながら商品を片付けながら、二人分の座れるスペースを空けてくれると言ってくれた。
俺たち自身立ち続けることには慣れているため店の前で待機しててもよかったが、半ば強引に店裏へ連れ込まれてしまう。
曰く、客との信頼関係が大事なこの仕事でほかの客の目の前で知り合いを座らせもせず、直射日光の中待ちぼうけさせることは、店を持つ者にとって後ろ指さされる行為なのだという。
俺にそう説明する間、疲れたような表情の店主を見てしまうと断ろうにも断れなかった。
日差しの通らないテントの奥まで案内され、俺とエトワルは並んでテント内を見回す。
かなり広いスペースだが、在庫の詰まったこのテント内ではどうしても窮屈に感じてしまう。視界の入る場所全てに木箱が積まれており、それらはすべて店主の商品なのだろう。
ざっと木箱を流し見してみるが、やはりここの店の品ぞろえは良質なものだ。
「随分と窮屈な場所だな…」
俺よりも背が高いエトワルにとっては動きづらい場所なのだろう。顔をしかめながらそう溢していた。
「俺は立ったままでいいし、エトワルは座ってろよ」
「なぜだ?アタシとレナトで座れるスペースはあるみたいだぞ」
「…や。俺はいい」
木箱に視線を向けながら俺はエトワルに言葉を返す。
座りたい気持ちは多少あるが、それよりもここに置かれている商品の内容が気になっていた。人の店の商品をじろじろと見るのはかなり気が引けるが、店主の姿が見えない今表面上だけでも中を覗かせてもらう。
昔から休日というものの消費の仕方が思いつかないでいる。
そのため暇さえあれば教会に向かい、ハインドリヒ司教やユーベルク司祭の下で雑務や簡単な仕事などを手伝ってきていたが、今日はハインドリヒ司教からもゆっくり休むよう言い渡されてる。
…実際、教会にも一度向かったが中にいたユーベルク司祭は俺の顔を見た途端にこりと笑みを浮かべ、「今の貴方にできる仕事はありません」っとばっさり切り捨てられてしまった。
仕方なく教会のある市街地にまで足を向けたため、残りの時間は市街地を見て回ることにした。
「それで、レナトは一体どこに向かうつもりなのだ」
「あぁ、少しだけ気になることがあって…」
言いながら、俺は懐にしまっていた魔石のペンダントを取り出す。魔力の蓄積量は変わっておらず、購入当時のままだ。
「…それはなんだ?」
「エトワルも見たことはあるだろ?有事の際に備えて、魔力を温存しておくための石…魔石だよ」
「そうだな、見たことも触ったこともある。使ったことこそないが」
ちらりと俺の持つ魔石のペンダントに視線を向けたエトワルだったが、興味なさげに視線を外し不満げに腕を組む。
「どうにも、アタシはそのようなモノが好かん。有事に備えて…その意図は分かるが、なぜ捨て置けるような石なんぞに命を託さねばならんのだ。せめて、わが身から離さずにいられるようなモノにアタシは命を託したい」
エトワルは部隊に入った当初から、魔石の一つも持ち得ていない。
星巡り部隊でなくとも、一般市民でさえも、魔石の一つは有している。
弟妹達に言われても、俺たちの部隊からそれとなく言っても、決して首を縦に振らず、エトワルは頑なに魔石を持とうとしない。意地の張り合いからくるものだと思っていたが、エトワルにはエトワルなりの考えがあったようだ。
しかし、エトワルは有事の際に別の魔力を温存しておく重要性には気づいているようで、弟妹達のために魔石を購入しそれを使うように渡していたのを見ていた。
「それでも、エトワルは弟さん達に魔石…買ってあげたんだな」
「アタシはそもそも、魔力を使うことができない。属性魔力を知覚できたとしても、アタシには扱える能力は持ち合わせていないんだ。けどあの二人は違う、アタシと違って魔力を使うことも属性魔力を扱えるだけの能力を持っている。有事の際…アタシがあの二人を護ってやれない時、あれは必ず役に立つ」
「……そうか」
エトワルが魔石を頑なに持ち合わせない理由が、魔力を使えないことにあるとは。
確かに薄々考えてはいた。だが、それを面と向かって問うほど問題があったわけじゃない。現に、剣としては申し分ないほどの実力だ。他部隊との演練中でも、身長差ある相手に対しても、エトワルは後れを取ったことがない。
だから、今まで聞いてこなかったのだ。
「…アタシの話はいい。それで、その魔石がどうかしたのか」
「この魔石もそうだが…これを買った店に用があるんだ。付き合ってくれるか、エトワル」
「無論、構わない」
家屋の立ち並ぶ区画を離れ、少し歩いた先少し前に立ち寄った出店街へと足を向ける。
行先は一つだ。何度も通っていくうちに歩きなれてしまった足は、何を考えずともすんなりと動く。商品を売り出すいろいろな声に混ざって、耳になじんだ低い声が聞こえてくる。
あれから数時間とたっていないが、客入りは上々のようでちらほらと店の前に人の姿が見えた。
「お、レナト。さっきぶりだな、サボりか?べっぴんさんな人連れて…羽目外すのはいいが、ほどほどにしろよ?」
「残念。俺は今さっき半休もらったとこで、エトワルは俺たちの仲間だ。…今、少し話せるか?」
「おう、少し待ってな。これ切り上げたら休憩入れようと思っていたとこだ。こっちにスペース作ってやるから、そこのべっぴんさんと座って待ってろ」
店主は俺たちを店の裏へ手招きし、大柄な体を窮屈そうに縮こまらせながら商品を片付けながら、二人分の座れるスペースを空けてくれると言ってくれた。
俺たち自身立ち続けることには慣れているため店の前で待機しててもよかったが、半ば強引に店裏へ連れ込まれてしまう。
曰く、客との信頼関係が大事なこの仕事でほかの客の目の前で知り合いを座らせもせず、直射日光の中待ちぼうけさせることは、店を持つ者にとって後ろ指さされる行為なのだという。
俺にそう説明する間、疲れたような表情の店主を見てしまうと断ろうにも断れなかった。
日差しの通らないテントの奥まで案内され、俺とエトワルは並んでテント内を見回す。
かなり広いスペースだが、在庫の詰まったこのテント内ではどうしても窮屈に感じてしまう。視界の入る場所全てに木箱が積まれており、それらはすべて店主の商品なのだろう。
ざっと木箱を流し見してみるが、やはりここの店の品ぞろえは良質なものだ。
「随分と窮屈な場所だな…」
俺よりも背が高いエトワルにとっては動きづらい場所なのだろう。顔をしかめながらそう溢していた。
「俺は立ったままでいいし、エトワルは座ってろよ」
「なぜだ?アタシとレナトで座れるスペースはあるみたいだぞ」
「…や。俺はいい」
木箱に視線を向けながら俺はエトワルに言葉を返す。
座りたい気持ちは多少あるが、それよりもここに置かれている商品の内容が気になっていた。人の店の商品をじろじろと見るのはかなり気が引けるが、店主の姿が見えない今表面上だけでも中を覗かせてもらう。
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