五つの星々、転生管理ー星巡りの護りビトー

神谷凪紗

文字の大きさ
17 / 47
第一章 【第一星巡り部隊】

第十四節 解呪の先

しおりを挟む
斜め後ろに座るユーベルク司祭がわずかに身じろいだ気がしたが、それに構わず続けざま火の属性魔力を扱い、紙面に施された呪を焼き尽くした。

四つの属性魔力を用い、必要のある単語だけを残した文字の羅列を、俺の魔力としみ込んだ血液で読めるものに変えていく。
俺の魔力と血液を用いることで、“不明の誰か”ではなく“纏のレナトゥス・リィン・リーディルク”として紙面に施された魔力術は認識し、俺が意識せずとも文字は報告書として形を変えていくのだ。

ーそして、その文字列は決して他人には読解できないように構築されている。
機密事項でありながら、同調魔法を使わず、紙面で報告するのにはそういった利点があるからだ。

全ての工程を終えたところで、俺は長く長く息を吐いた。

閉じていた五感を味覚、嗅覚、視覚、聴覚の順に戻していく。
一気に戻すこともできるが、莫大な情報量が一気に頭に巡ってくるため俺はやらない。聴覚を戻したところで、俺はゆっくりと目を開けた。

眼前には、折れ目のない報告書。
綺麗に整えられた文字列。俺の血を含んだせいか、わずかに赤みががってしまっているが読む分には支障はない。

「………―」

ざっと目を通してみる。
第六星巡り部隊の導は、常に纏であるウンライ・シエル・レプリカントと行動を共にしていたようで、報告書の内容は随分と事細かに記されていた。

規定通り、第六星巡り部隊はアース世界への【長期遠征任務】に赴いていた。

最初の一か月こそは、何事もなく【転生管理者】の任務を遂行していたようだが、ウンライが向こうの世界の誰かと親しくするようになってから、部隊の動向が変わっていったようだ。

転生管理者には三つの規定が定められている。

一つに、救う魂の選別は星読の力を持つものに一任しており、俺たち星巡り部隊はそれに従う。それ以外の魂には一切手出ししてはいけないのだ。

二つに、他世界での相手と親密になってはいけない。滞りなく任務を遂行させるため表面上友好的に接するくらいはかまわないが、それ以上の関係に至ってはいけない。

三つに、他世界で、自分の真名を伝えてはいけない。そのため、俺たち星巡り部隊は他世界に赴く際、各自に決められた呼称で呼び合うのだ。

それらを一つでも破ってしまえば、転生管理者の名を剝奪され、二度とこの星巡り部隊に戻ってくることはできない。

第六星巡りの纏、ウンライ・シエル・レプリカントはその三つの規定のうち、二つは破っている。
視覚同調魔法では、同調対象者である者の視点からの物事しか把握できないために詳しいことは分からない。しかし、報告書を読む限りでは二つ目と、三つ目の規定に背いた行動をとっていたようだ。

そして、第六星巡り部隊が負傷して帰ってきた原因――

「ウンライは、自分の仲間を…」

任務を遂行しようとする部隊の仲間を、その手で害した。

隙を見た部隊の導がこちらの世界に戻るための魔力陣を構築させ、ウンライ以外の部隊の仲間全員をルベライドへ帰還させたのだ。

視覚同調魔法を用いた導がこの時の人物だったようで、その報告を視た星読の力を持つ王族や俺たち星巡り部隊を統括する総責任者はウンライを世界の調和を乱す者として、星巡り部隊の纏の名を剥奪。

そして、ウンライの部下である第六星巡り部隊は怪我の療養の名の下、監視つきの謹慎を余儀なくされた。

(…第六星巡り部隊の謹慎の理由は分かった。だがそれと俺たちに与えられた厳戒態勢の意味は何だ?)

星巡り部隊に通達された厳戒態勢。

世界間の諍いがあるときにだけ通達されるが、他世界がこちらの世界に干渉するような物事はなかったはずだ。
ウンライのことも、それは第六星巡り部隊内の出来事に留まる一件のはず――

(―いや、そうだ。ウンライは未だ消息不明。おそらくはアース世界に留まったままの可能性が高い。そして、ウンライは誰かと懇意にしていた。だからこその厳戒態勢か)

第六星巡り部隊の纏であったウンライならば、他世界へと向かう手段を知りえている。
その情報を懇意にしている相手に流し、その相手が善人だったならまだしも悪人に使われるようなことがあれば、こちらの世界とて無関係な話じゃなくなる。

(だとするなら、俺たちがすべきことは―――)

「レナトッ!!」

報告書を手に持ったまま考え込む俺の耳に、勢いづいた声音が響いてくる。
べしんっ、と両頬を平手で挟まれ唇を突き出す不格好な表情をさらしてしまう。気が付けば眼前には眉間にしわを寄せたユーベルク司祭の姿があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...